46.ちーと
土曜日、どうするか迷ったが,小太郎の能力のことを
「それは、それは……」
「アキくんは話題にことかかないわね」
葛城さん、なんですかその言い方。なんか俺がいつも問題を起こしているような言い方なんですけど?
「コタちゃん、こっちの世界で力を使ちゃ駄目だからね」
「にゃ~」
「なら、よし!」
小太郎は女性陣にナデナデされている。
なにが、いいのかはわからないが、
着替えて沙羅とゲートをくぐる。いつもの採取場に向かう間に地下迷宮探しの件を話しておく。
「面白そうだね。新しい発想は、新しい発見に繋がるからいいと思う」
なので、俺は小太朗と穴掘り。沙羅ははにわくんと
昨日の続きから作業開始。正直、掘る方向は適当。小太郎の勘に任せて縦横無尽に掘り進める。とはいえ、鉱脈を見つけるとそこを中心に掘り進めるので、気づけば人工
ダンジョンを見つけるつもりが、ダンジョンを作るなんて……黒歴史も作ってしまったな。放置決定。
上に戻れば沙羅はなんか艶々? になっている?
「はにゃ……」
なぜ、はにわくんが疲れてるんだ? まあ、沙羅が満足しているようなのでいいか。
俺が入った時には何もなかったよね……。俺たちのではなく、エリートの沙羅加入がメインなんだろうな。
明日は日曜なので久しぶりにお酒を飲む。生ビールがうまい! たまに部屋で飲むビールはリキュール。本物のビールは高いからね。ディスカウントショップで安い時に箱買いして置いてる。本物のビールはなかなか飲むことがない。
小太郎と沙羅は女性陣に囲まれ、キャッキャッウフフと楽しそう。俺の周りはオヤジ共が、俺の酒が飲めねぇのかとうるさい。パワハラだぞ! まあ、飲むけどね。
少し、ふらふらになり帰る時に、沙羅から袋が渡される。中身は……巻物?
「影目録と新陰流兵法目録事の写しなの。アキくんが刀を練習してるようだから、あげるね」
「いいの?」
「パートナーだからね!」
パートナー、沙羅から言われたその言葉が胸を熱くする。顔も熱い、体も熱い、酔ってるだけか?
「にゃ……」
日曜の朝、二日酔い……。今日は休みにしよう。小太郎は加奈ちゃんとどこかに出かけて行った。
俺は沙羅からもらった巻物を見る。かなり豪華な巻物だ。模写品とはいえ貴重品じゃないのか?
巻物の中は漫画のように動きが絵で描かれている。文字は……ほとんど読めん! これは日本語か!? 外国語じゃないのか!
大学の図書館に移動。現代語で書かれたものを司書さんに言って探してもらう。すぐに見つかった。意外とあるもんだな。学生証を出し貸出してもらい部屋に戻る。ついでに月読様用のアイスとお菓子も買い出しして来た。奉納するとすぐに消えた。やはり、見てるな。間違いない。
巻物と借りて来た本を見てにらめっこ。必要と思われるところはノートに書き出していく。なかなかに面白い。ざっと読みだが、影目録より新陰流兵法目録事のほうがより実践的のような気がする。
型以外にも、技法や心法のことが書かれているが難しい。なんというか内容が曖昧なのだ。おそらくだが、真となるところは師から弟子へ口伝されるのではないだろうか。
午後は型の練習。こん棒を削って作った自作木刀を使う。まずは型を体に覚えさせる。夕方からは心法の訓練で瞑想。気の修練を行うがよくわからん。気づけば胡坐組んだ足の上で小太郎が寝ていた……。
今週の土曜は沙羅はお休み。おばあさんたちと歌舞伎公演を見た後、銀ブラらしい。優雅だね……住んでる世界が違いすぎる。
さて、俺は本格的に刀の訓練を開始。鬼婆を相手に訓練だ。小太郎とはにわくんは、もしもの時の保険。
刀で斬りつけ鮮血が舞う。俺もその血を浴びて真っ赤だ。ただ、
刀を使っていてわかったことが一つ。肉ではなく骨を斬ると耐久度がみるみる減っていく。でも、たまに骨も粘土を斬るかのようにすっぱりと斬れる時がある。その時は耐久度が減っていない。要するに刀を下手に扱うと耐久度が減るということだ。
では、耐久度がゼロになるとどうなるか、どうにもならなかった。斬れ味がなくなるだけ。簡単に言うと刃がなくなる感じ。棒で殴るのと変わらない。そうなると、使いようがないので新たに刀を奪いに行くしかない。
たまに柳葉刀を使う。ストレス発散だ。だが、敵も然る事ながら、隙を突いて柳葉刀の側面を狙ってくる。一度、柳葉刀を掴まれ膝でへし折られた……この化け物め。刀の時にはやってこない。柳葉刀は幅広いので狙いやすいのだろう。
それから、見えない偃月が優秀すぎる。鬼婆を一人で相手にできるのは見えない偃月のおかげと言っても過言ではないくらいだ。見えないから偃月の気配を察知できなければ百発百中。たまに気配を感じるのか躱そうとする奴も中にはいる。
それでも、鬼婆の目を狙い、視界を奪えば練習用の巻き藁と変わりがない。見えない攻撃とはかくも恐ろしいものなのだ。
チートだな。
人が使えば妬ましいだけだが、自分が使えばこれ以上なく頼もしい。
チート万歳!
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