44.穴掘り

 お土産を大家さんに渡す。加奈ちゃんはお土産より小太郎が戻ったことのほうが嬉しいようで、小太郎にスリスリしている。チーズは苦手だったかな?


「あんた、どこ行ってたんだい?」


「ちょと、高原まで……」


 高原は高原でも高天原たかまがはらかも。なので、嘘は言っていない。


 翌日、世話になってる友人たちにもチーズとソーセージを渡して回る。みんな酒飲みだから喜んでくれた。


「本当にいいの? この翡翠、おそらく琅玕ろうかんだよ」


 琅玕というものが何かわからないが、沙羅のためにもらってきたものだ。


「沙羅への贈り物だから受け取ってほしい」


「うん。ありがとう」


 帰りにアイスとお菓子、ジュースを買って、部屋のテーブルに置き月読様に奉納すると、消えたね。


 あまりにも置いてすぐに消えたので、見ていたのだろうか疑ってしまう。待ちきれなかったとか? 歯ブラシセットも送っておいたほうがいいだろうか? そもそも、神様って虫歯になるのか?


 土曜日に喫茶店ギルドマスターギルド長にもお土産を渡すと、とても喜ばれた。


 沙羅と異界アンダーワールドに行き、最初は武器集め。沙羅が武器を持たない怪異モンスターを担当。その間に俺が武器を奪う。リヤカーが満杯になったところで鬼婆退治に移る。


 俺は奪った刀を使う。月読様の所でうさぎ師匠から修行を受け体術スキルを身に付けたせいか、動きがよく体が軽く感じる。スキルの恩恵とはこれほどのものなのか。


 沙羅がメインで戦うが、俺もたまに参戦。体術スキルだが、刀の動きにも多少恩恵があるようだ。刀を振るうと自分の無駄な動きが少しわかる。そこを少しずつ修正していく。今まで何もわからなかったことが、少しでもわかるようになったことは一歩前進と言えるだろう。


 月読様には感謝しても感謝しきれない。今日から高級アイスを奉納しよう。


 はにわくんに周囲の警戒をお願いして昼食をとる。


「おばあ様があの勾玉を見て、驚いていたんだよ!」


 祖母が一緒に住んでるのか。そういえば、沙羅の家族についてはお姉さんの紗耶香さんしか知らない。


「たしか、お兄さんもいたよね?」


「うん。いるよ」


 前にも聞いたが天水家は元は武士の軍人家系。祖父、父、兄、姉が自衛隊に勤務している。全員、探索者シ-カー関連の部隊にいるそうだ。


 沙羅は探索者シ-カー関連の仕事に就きたいらしいが、性格的に自衛隊は合わないと考えているという。なので普通の大学に通っている。ちなみに兄姉は防衛大だそうだ。エリートだな。


 今日の異界アンダーワールド探索はまずまずだ。これからすべきことがわかったのは重畳だった。これで少し前に進める。


 日曜日、今日は一人で異界アンダーワールド


 考えていたことがあるので、実行するためいつもの鉱物採取場所に向かう。


 小太郎の穴掘り能力で地下に向かって掘ってみる。ここ掘れにゃんにゃん迷宮を探せ作戦だ。


 小太郎に地面に階段状に穴を掘って、崩れないように気を付けて掘れるか尋ねると。


「にゃ~」


 と返ってくる。


 ならば、作業開始だ。はにわくんには怪異モンスターの周囲警戒。見つけ次第撃破。今のはにわくんは余裕だろう。


 小太郎が四メーター四方の穴を掘る。それを階段状になだらかに掘り進める。床や壁はつるつるの大理石のようだ。壁はいいとして、床はこれだと滑って転んでしまう。小太郎になんとかならないか言うと、壁はそのままで、床は踏み固められた土になった。小太郎、万能だ……。


 掘った土は定期的に外に捨てに行く。その中の鉱石は、掘った穴の入り口近くに外から見えないよに大き目の穴を掘り、保管部屋にした場所に集める。リヤカーも置いておけるので便利になった。


 小太郎が疲れるので休み休み続ける。途中からはにわくんと交代。小太郎ははにわくんの頭に載って作業続行。はにわくんはリヤカーを引いて、明かり担当も務める。俺はちょっと先まで行って、刀を奪ってきて戻り、刀の練習。


 怪異モンスターが弱いこともあり、いい感じで斬り伏せることができる。斬る、突くと体がいい感じで動く。が、刀をうまく振れているかといえば全然だ。刀の扱いは奥が深い。一朝一夕で上手くなるはずはないか……。


 途中、うさぎ師匠の真似をして怪異モンスターを投げてみた。面白いように転がるが、たいしたダメージは与えていないようだ。こいつ、俺より受け身がうまいのか?


 餓鬼と邪気を転がすのにも飽きたので、攻撃を投げから蹴りに変える。蹴りを入れる毎にいい音がする。今まではこんな音はしなかった。足がしなるというか、ダメージを与えられる動きがわかるというか、変な感じだ。


 でも、これに頼ってばかりではいけないと、錬さんから言われている。これを体に覚えさせて、更なる高みを目指さなければならない。


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