40.月読神社
ゲートに戻り、リヤカーの鉱石を納品。
「三人で頭割りでいいかな?」
「俺はいらねぇぞ」
「私もお金はいらないよ。一緒に探索できるだけで嬉しいから」
さすが、お金持ちの二人は言うことが違う。俺には口が裂けても言えない言葉だ。
「じゃあ、今度ご飯でも奢るよ」
「うん。期待してる」
「男と飯食っても嬉しかねぇ。酒奢れ」
はいはい、錬さんは機会があったらね。
紅茶の香りを楽しみながら沙羅と話をする。沙羅が探索に参加できるのは基本土曜日。日曜曜、祝日は習い事があるので基本不参加。来週はゴールデンウィークなので俺も沙羅も休みにした。
沙羅は家族で旅行なのだそうだ。旅行かぁ、俺もどこかに旅行でもしてみようか? 明日の日曜日は旅行の計画でも立ててみよう。
日曜の朝、今日は
お金に少し余裕がでてきたので、泊まりの旅行もいいかも。どこに行こうか? ネットを見ながら考える。
そういえば、月読様って神様だよな。月読尊で検索。膨大な量のサイトがある。神社を検索に追加。まだ多い。更に東京近辺を追加すると地図がでてきた。
近場にも意外と月読様を祭る神社はあるけど、せっかく旅行に行くのだ多少の遠出はしたい。
そこで選んだのが、茨木県のつくば市にある月読神社。もちろん御祭神は月読様。東京駅から常磐線とバスを乗り継いで二時間ほど。旅行初心者にはちょうどいいのではないだろうか? つくば市というくらいだからホテルは多いはず。行きあたりばったりでもいいだろう。
JRに電話して小太郎の乗車代金を確認すると、手回り品としてキャリーバッグ代で済むそうだ。バスはキャリーバッグに入っていればただ。ただ、いい言葉だ。
翌朝、大家さんには旅行に出るとだけ言って家を出る。ワクワク,ドキドキで駅に向かう。
東京駅で俺と小太郎の切符を買って乗り込む。電車に乗っていると、小学生低学年くらいの女の子が小太郎のキャリーバッグを覗き込んでいるので、見やすいように抱え直す。触りたそうにしているけど、電車の中なのでごめんね。
そんなことをしていると目的地の駅に着いた。バスに乗り込み目的の停車場で降り、近くにコンビニがあったのでお弁当とお菓子、お茶、小太郎用の軟水のミネラルウォーターを買った。
天気もよく、気温もすごしやすい。小太郎をキャリーバッグから出してやり、定位置の肩に乗せると顔にスリスリしてきてくすぐったい。
スマホの地図を見ながら歩くこと二十分で月読神社が見えて来た。緑に囲まれたいい場所だ。正面に回り、
「にゃ~」
拝殿に向かい眺めると飛天、龍、狛犬、象などの彫刻が施せれている。
拝殿で一揖、二拝二拍手一拝。拍手するたびに周りの空気がピーンと張り詰める感覚がする。最後の一拝を終えて顔を上げると……ここはどこ?
「
声がする後ろを振り返れば、月読様がいらっしゃる。あれ、ここは
小太郎が肩から飛び降りて月読様に飛びつく。
「にゃ~!」
「おぉおぉ、小太郎は愛い奴よのう。息災にしておったかえ?」
「にゃ~」
小太郎が今まで見せたことがないほどペロペロスリスリと甘えている。デレ期なのか?
「そうかそうか、よきかな、よきかな。して、おぬしの主はいまだに呆けておるのう」
白と黒のツートンカラーの巫女服を着た月読様と小太郎が冷めた目で俺を見ている。
「これは、夢じゃない?」
「白昼夢とでも思うたか?」
また周りを見渡す。漆黒の空に、命の始元たる大いなる水を湛えた紺碧の惑星、地球が見える
「お、お久ぶりです。月読様」
「うむ。聖臣も息災そうでなにより」
「なぜ、俺はここにいるのでしょうか?」
「おぬしたちのことは、たまに見ておる。せっかく、神域に来たゆえ呼んだまでのこと。ついでに、異界で苦労しておるようゆえ、ちと手を貸してやろうかと思うた」
どうやら、戦い方を教えてくれるようだ。それは、凄く助かる。基本も何もないのでどうにかしたいと思っていたところだ。
「いつまでいれるかえ?」
「三日後には帰らないと駄目です。なんとかなるでしょうか?」
「おぬし次第よのう」
ですよねー。頑張ります!
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