34.パートナー
いつものアールグレイが入ったカップが置かれる。うーん。いい香りだ。小太郎にもいつもの猫用ミルクの入ったお皿が置かれる。
「みゃ~」
小太郎が
「こないだの件なんだけどね。凄い反響があったんだよ」
国の機関では上を下への大騒ぎだったらしい。まさか、
強奪って……褒められているのか貶されているのかわからない。
「情報量は満足してもらえる金額を得られたのだけれどね……」
買取金額がこうなったと紙を寄越す。内容を確認する。
えっ!? マジですか……。想像を遥に下回っているんですけど?
まず、こん棒。値段がつかない。いい意味ではなく悪い意味で。確かに武器としては優秀なのだが、所詮はただの木。薪くらいにしかならないとある。書き方に棘がないですか?
槍、これも値段がつかない。日本の槍なら多少は値が付くかもしれないが、西洋、中華の槍なので槍頭が鉄の物なら金属としての買い取りになる以外使い道がない。き、厳しい……。
直剣、柳葉刀は需要がない。それでも比較的いいもので一本一万円。質の悪いものは金属価格。
期待していた刀もほとんど変わらない。比較的いいもので一本二万円くらい。あとは金属価格……。三本だけ五万円というのがあった。売ってもいいかな。質の高い武器の集め方はわかっているんだ。
結局、トータルで四十五万円ほどだ。ん? あれ? これって凄くねぇ? リヤカーで鉱石を運んで多いときで四万円だったんだぞ? こん棒と槍を無視して、天邪鬼狙いで一撃必殺をすればもっと稼げるんじゃないだろうか?
「すまないね。十六夜くんが期待して金額には程遠いだろう? もう一つ言い難いことがあってね……」
買取価格が下がっていくそうだ。結局は需要と供給の問題。使う人がいなければ在庫が増えるだけ。美術品クラスなら話は別だが、この程度の数打の品ではどうしようもないと言うことだ。
ただ、葛城さんから俺の鉱石集めは評判がいいと言われている。確か顔料の素材だったかな? いくらあっても困らないものらしいから、逆に供給を止めると困るらしい。武器集めと鉱石集めを半々くらいがちょうどいいかもしれない。
最近、更に天水さんの機嫌がいい。何かいいことでもあったのだろうか? その機嫌に比例して小太郎への貢物が増えていく。値段を聞くのがちょっと怖い。
下宿の部屋に戻れば、すぐに加奈ちゃんがやって来て、寝る時間まで小太郎と遊んでくれる。食事もお風呂も一緒だ。
土日に
土曜に
「私もね。ここに所属することになったの」
自衛隊一家の天水家だけど、天水さんは自衛隊に進む気はないそうだ。自衛隊に入る気はないけど
「だから、今後とも一緒によろしくね。十六夜くん。コタちゃん」
「にゃ~」
「一緒に?」
「駄目ぇ?」
ぐっ、駄目じゃないです。こちらこそよろしくお願いします。
天水さんが
「じゃあ、よろしくね。天水さん」
「サラでいいよ? 私もアキくんって呼ぶから」
「サ、サラさん……?」
「サ・ラ!」
「サラ……」
にっこりと微笑む目の前の人物は小悪魔か! いや、天使だな……。
「かぁー、ガキの恋愛ごっこはほかでやってくれ!」
なに、しれっと失礼なことを言ってるんですか! 錬さん!
「まあ、パートナーができたってのはいいことだ。探索がしやすくなるし、なにより命の危険が大幅に減る。一人じゃ無理しちまうが、二人ならどちらかがブレーキになるからな。よし! せっかく新人が二人いるんだ、先輩が後輩の指導をするのも大事だからな、今日は俺が付き添ってやる」
天水さん改めサラのことは、事前に光明真会の所属メンバーにリークされていた模様。なので、ちょっかいを出す人がいない。代わりに、俺に対する周りの視線が痛い……が、嬉しいから気にしない。
サラと二人なら楽しくなりそうだ。
「にゃ~」
はいはい、小太郎も一緒な。ついでにはにわくんもな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます