32.発見なのか、忘れられただけなのか
ゲートを潜り、
葛城さんが下りて来た。
「どうしたの? 珍しいものでも見つけた?」
そう言いながらも、すぐさま小太郎を奪ってモフモフし始める。
まあ、珍しいといえば珍しいものかな?
「これなんですけど、買い取りしてもらえますかね?」
「……?」
首を傾げる葛城さんのために、俺の後ろにあるリヤカーを前に出す。
「ちょ、ちょっと!? これなに!」
何って、リヤカーとそれに積まれた武器類ですけど?
「ど、どうしたの……これ?」
「ドロップアイテム?」
「ちゃんと説明しなさい!」
急遽、応援の係の人が呼ばれて仕分けが始まる。いやぁー、並べて見ると壮観だね。でも、新品同様の武器は数個しかない。他のは見るからに中古品のように見える。ドロップするその違いはなんなんだろう。明日、じっくりと検証してみよう。
少しこめかみ辺りに青筋の立った葛城さんに
「何かあったのですか?」
そう言って、いつものアールグレイを出してくれ、小太郎にもいつもの猫用ミルクが差し出される。
「大問題です! というより、本当なら大発見です!」
「そ、それほどのことですか?」
「アキくん、説明!」
かくかくしかじかと説明していくと、いつの間にか錬さんも俺の隣で小太郎をモフモフしながら聞いている。錬さんはいつ
「確かに、大発見といえますね。ほかのギルドが隠蔽していなければのはなしですが。まあ、武器が大量に売りに出されたという話は聞いたことがないですから、新発見かもしれませんね。これはうちのギルドだけでは手に余ります。上にあげる必要がありそうですね」
「素人って怖ぇな。突拍子もないことしやがる」
「どうなのでしょう? 残っている記録にないだけで、昔は普通のことだったのかもしれませんよ。辺鄙な場所にある異界だと近くに集落すらありません。現代のように流通や交通の便がよくなかった頃は、武器はどうしていたのでしょう? 自分でメンテするにも限度がありますよね?」
「なるほど。武器がなくなるのは致命的だからな。だが、それならどうして今にその方法が伝わっていないんだ? そんな大事なことなら口伝で伝わっていてもいいはずじゃないか?」
確かに書類としての記録は失ったとしても師から弟子へ、またその弟子へと伝えられることもあるはずだ。
「そうでもないかも。アキくんには悪いけど、ドロップした武器はあまり質が良くなさそうなの。精々、使い捨てってところかしら。明治に入って産業や物流が発達した頃には、記録や口伝もなくなっていた可能性もあると思うわ」
幕末から明治、大正の時代は国内外で戦争をしていた時代。武器は売るほどあったはず。おそらく、今より安価な値段で手に入ったに違いない。質の良いものが使い捨て程度に使われていた可能性もある。
でも今は? 刀以前に武器を売り買いすることは法律で禁止されている。ギルドを通せば
ゲームの主人公のように一切生活のことを考えず、戦いに没頭できる人は稀だろう。まあ、金銭感覚の違いもあると思うけど。そんな人には朗報だろう。ドロップ条件は厳しいけど、ソロじゃなければなんとかなると思う。
取りあえず、今回ドロップした武器は全部査定はされず、一度上に提出されることになった。情報料は期待できると
明日も
翌日、
さっそく武器を持った
剣スコで攻撃すると見せかけ、偃月で武器を持つ手を攻撃。落とした刀を拾い正眼の構え。剣術なんて全く知らん。授業で剣道を少し習っただけ。それも防具が臭いので真面目にやった試しがない。
その程度の腕前で、映画やドラマの殺陣のような恰好いい動きなどできるわけがない。一度、本格的な剣術を習ってみたい。だが今はそんなことどうでもいい。俺が持っているのは人を殺すための刃物。昨日は何も考えず我武者羅に振り回していただけだけど、今日はちゃんと考えて戦ってみようと思う。
ほとんど武器に対する恐怖はなくなった。弱い
刀を振りかぶり、そして振り下ろす。邪鬼はこちらが刀で攻撃するというのに、頭の上で両手をクロスさせて防御する。
ガツッと音がして邪鬼の腕の骨で刀が止まる。一刀両断なんて考えていないが片腕の骨半分ほどで止まっている。思ったほど切れないものなんだな。まあ、腕が悪いというのもあるだろう。
しかし、ここからが大変だった。腕の骨に食い込んだ刀が抜けない。邪鬼もじっとしているわけもなく大暴れ。なんとか蹴り飛ばす形で刀が抜けた。刃こぼれなどはしてないようだ。
今度は間合いを取って右から左下への袈裟切り。これも邪鬼の腕に阻まれ致命傷になりえない。しかし、おかげで邪鬼の両腕は使い物にならなくなった。それでも、戦意を失わず、噛みついてこようとする狂暴さは恐れ入る。
また、間合いを取り袈裟切り。今度は首から胴にかけて斬り裂きやっと倒れ込む。
映画やドラマでは斬られやすいように、役者さんが動いているんだと実感させられた。実際は、今のとおり死に物狂いで防御したり攻撃してくるのだ。
相手の防御を掻い潜り、隙をついて相手に攻撃させずに斬る。ちょっとだけ刀の使い方がわかった気がする。
気がするだけなのかも……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます