31.裏技

 餓鬼と一進一退を繰り返す。餓鬼の動きをちゃんと見ていれば防ぐのはなんてことはない。動きは単調でたいしたことはない。そう、ないのだが攻めるための一歩が踏み出せない。


 何合目か忘れたが餓鬼の刀を受け払ったとき、餓鬼の手から刀が離れ地面を転がる。武器を持たない餓鬼はただの餓鬼とばかりに剣スコを喉に突き刺す。


 小太郎とはにわくんの視線が痛い……。小太郎は駄目だなこりゃとまた欠伸をして昼寝に入り、はにわくんからはまあ気にすんなという同情の目線を投げかけられているような気がする……。


 しかしだ! 収穫はあった。さっきの戦いで苦戦はしたが、戦い方に光明を見出したのだ。次こそはクレバーに勝ってみせる!


 そして現れた怪異モンスター共。今度こそ俺の糧になるがいい。武器を持たない餓鬼と邪鬼をはにわくんとさっさと始末し、武器を持った天邪鬼と向き合う。


 天邪鬼は餓鬼たちより一回り大きい。そんな奴が武器を振り回す。持っている武器は柳葉刀と言われるものだ。あ、相手を間違えたかな? えぇーい、ままよ!


 さっきの戦いで思いついた戦術を試す。そう、なんのことはない、武器を持たなければ俺の相手ではないのだから、武器を持たせなければいいだけのことなのだ。


 攻撃する構えを見せてフェイント、実は偃月で武器を持つ手を攻撃。偃月は天邪鬼の手首辺りを斬り裂き、天邪鬼はたまらず武器を落とす。後は一突き。完璧だ。自画自賛。


 なぜか、小太郎とはにわくんの視線が痛い。デ、デジャヴュか!?


「みゃ……」


「はにゃ……」


 なんだ、このやれやれって感じは? 結果良ければすべて良し、だろう? さあ、乗ってきたからこのまま行くぞ!


「「……」」


 気にしない、気にしちゃ駄目。


 さっそく、相手が現れる。さっきの要領で戦いを始める。武器を持つ餓鬼だけになり、偃月で武器を奪う。ちょうど俺の足元に転がってきた。ぼろい直剣だ。


 拾い上げて餓鬼の喉元に一突き。剣スコと違い、人を殺すために造られた直剣は、餓鬼の喉に吸い込まれるように貫く。なんともいえない感触が手に伝わってくる。


 少し経ち餓鬼と直剣が消えていくと、なぜかそこには鞘に入った状態の直剣が残っている。ほわ~いぃ?


 拾って見るとやっぱり直剣だ。さっき奪って使った直剣より幾分ましな直剣である。これはドロップアイテム? しかし、そんな話は聞いていない。でも、大宮駐屯地のあの洞窟では出たよな?


 よく考える。武器を持った怪異モンスターと何度か戦っている。だが、武器はドロップしていない。何が違う? 相手の武器を奪った? いや、一つ前の戦いでも相手から武器を奪っている。違うことはなんだ? 


 奪った武器で止めを刺した!? これか!


 よし、検証だ。


 また、怪異モンスターを探して武器を持った奴を残して瞬殺。今度は刀を持った邪鬼だ。


 はにわくんにけん制させ、その隙に偃月で武器を持つ手を攻撃。はにわくんがけん制して、注意がはにわくんに向いてる間に刀を拾い上げて、邪鬼の首めがけてフルスイング。ぼろい刀の切れ味が悪いのか、俺の腕が悪いのか邪鬼の首の中ほどで止まった。


 それでも、十分に致命傷となり倒れ込む。消えるまでじっと見つめていると、鞘に入った刀が残っている。


 こ、これは!? 裏技発見!


 武器を手に入れ放題じゃないのか? 売れば金になるんじゃないか? もしかしたら……貧乏脱却か!


 武器を集める前にもう少し検証しておく。


 俺が武器を奪った後にはにわくんが止めを刺す。何も残らない。


 俺が武器を奪い、その奪った武器をはにわくんに持たせて止めを刺させる。何も残らない。


 今度は、はにわくんが武器を奪い、その武器を俺が拾って止めを刺す。残らない。


 はにわくんが武器を奪い、その武器で止めを刺す。残った。はにわくんでもドロップすることがわかった。


 最後は、俺が武器を奪い、はにわくんが瀕死に追い込み俺が止めを刺す。残ったが、さっきの武器よりぼろい。


 この検証からわかったことは、武器を奪った者が止めを刺すと武器が残る。


 そうとわかれば武器集め開始だ!


 小太郎は興味なしの様子。欠伸をしてお昼寝に戻る。浪漫のわからん奴だ。


 基本、はにわくんがけん制役。俺が隙をついて武器を奪い必殺! 刀や直剣などはやり易いが、こん棒や小太刀、槍では止めを刺すのに苦労する。こん棒は相手を殴り続けるしかない。怪異モンスター相手なので本当に倒し切ったかわかり難く、倒れた後も殴り続ける。


 しかし、途中から棍や三節棍、ヌンチャクまで出てきたときはどうやって扱うかがわからず、こん棒と同じくただ殴り続けた。おそらく、武器はそんな扱いに泣いていたな……。


 陽が暮れるギリギリまで続け、リヤカーいっぱいになりほくほく顔。はにわくんもやり切った顔つき。小太郎は呆れ顔。気にしない。


 気づけば、武器が怖いという気持ちが消えていた。途中からは完全に怪異モンスターの持つ武器がお金に見えていたのは内緒だ。


 さあ、いくらになるか楽しみだ。はにわくんにリヤカーを引かせて。俺はルンルン気分でスキップでゲートに帰還した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る