29.新人研修会を終えて
残念ながら立食会は盛り上がらず終了。
途中で明日の講習会の中止が発表されたからだ。新人研修運営側にしてみれば新人研修会なんて開いてなどいられない状況だろう。
故に、明日の新人研修がないと知ると、もう用事はないとばかりに帰ってしまった人たちがいる。閑散とした会場のうえ自衛隊の
俺は天水さんそして尊と杏紗の二人を連れて、残った研修会参加者と交流を兼ねての挨拶回りをした。同年代はおらず、みんな年上でそれなりの地位にいる人もいて驚いた。
近年の
その夜は、みなさんと連絡先を交換してお開きになった。
天水さんは泊まらずに迎えの車で帰る。俺と尊と杏紗は泊まる組。葛城さんにどうするか聞いたら、今から帰るのは面倒くさいと言って、ほかの付き添い組の方々と夜の繁華街に消えて行った……。
俺は素直にホテルに帰ったよ。初めてのホテルに興奮して、部屋の風呂とは別の大浴場で長湯をしてのぼせたのはご愛敬だ。
いいベッドのおかげで熟睡できビッフェ形式の朝食を食べ、部屋で小太郎をモフリながらゆっくりとしていると、フロントからお客が来ていると連絡が入りフロントに向かう。
紗耶香さんだった。
「昨日、約束した補償の件よ」
一緒に来ていた女性が俺の体のサイズを測りだす。
「さすがに新品はあげられないけど、型落ちの入替候補から選んで送るわ。型落ちだけど性能的には問題ないからね」
と言いつつ、小太郎をモフっている。
「もちろん、口外無用。シリアルナンバー等は全部削っているけど横流し禁止だからね。」
まあ、もらえるなら問題ない。素人作りの品より性能は上なのは間違いないだろうから。
昨日の件について少しだけ話をした。紗耶香さんは当事者だけあって大変だったらしい。調書を取られ、上役らからの尋問、更に報告書作りまで。どれか一つで駄目なのかねって言ったら、
「それがお役所勤めの性よ」
って言われた。 自衛隊をお役所って……いいのか?
補償の品は来週中に
そろそろ、帰りの新幹線の時間なので帰りの用意をして、フロント近くのラウンジで葛城さんを待つ。公共の場なので小太郎はキャリーバッグの中。葛城さんはなかなか来ないので、フロントから連絡を入れてもらう。
新幹線の時間に間に合うギリギリの時間に、顔色の悪い荷物を抱えた葛城さんがエレベーターから降りてきた。
「ごめん! 寝過ごしたわ……」
酒臭い……シャワーを浴びる時間もなかったのだろう。髪の毛が鳥の巣状態だ。葛城さんの荷物を預かり、フロントでチェックアウトの手続き。駅に急ぎ新幹線に乗る前に、コンビニで二日酔いの栄養ドリンクとサンドイッチを購入。ギリギリ間に合った。
「大変だったみたいだね。いろいろな意味で……」
そんな俺たちの横でカウンターに突っ伏したまま動かない葛城さん。
葛城さん、お大事に~。
「にゃ~」
大学の昼休みいつもどうり天水さんと一緒にお昼をとる。なぜかいつもよりニコニコといい笑顔。反面、俺に対して周りの嫉妬の視線が強くなる。それより、なにかいいことでもあったのかな?
土曜日、
中身を確認すると迷彩服はなかったが一揃い入っているようだ。ボディアーマー、鉄帽、ブーツ、ゴーグル、水筒、
まあ、喜んでもらえてなによりだ。今度、紗耶香さんに会えたらお礼を言っておこう。天水さんにもお姉さんに俺がお礼を言っていたことを伝えてもらえばいいな。
さて、
あの悪鬼との一戦。俺にとって何かが変わった気がする。それを確かめたくてうずうずしてたのだ。
よし、小太郎行くぞ!
「にゃ~」
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