25.不測の事態
昼食を食べ終わり、今度は組を変えて戦闘訓練。
「午前中の威勢はどうした? さっさと行けよ」
「無理……」
天水さんは敢えて
天水さんと組んだ尊は動くことも援護もできずに棒立ち。尊のマギの
俺と組んでる杏紗は天水さんの狂気じみた無双振りを見て震えている。高校生にはちょと刺激が強すぎたようだ。
「はぁ……あの子は……」
天水さんのお姉さんの紗耶香はため息をつきながら首を振る。それでも小太郎をモフっているのはモフラー故か。
せっかく組んだが俺も杏紗も一戦もしていない。軍神がすべてを刈り取っているからだ。こちらに譲る気などさらさらないとみえる。恐るべし、軍神天水沙羅。
「いい加減に……」
紗耶香さんが天水さんに対して声をかけようとした時、視界が揺らぐ。地震か!?
声を出す暇もなく全員が地面に飲まれる。落下するGを感じながら、やべ死んだかもと思ったのは俺だけじゃないはず。三十から四十メートルくらいを落下し、地面がもうすぐそこという時に怖くなり目を瞑る。
「夜刀神!」
ぼよ~んとトランポリンに落ちたような感覚を受けて目を開ければ……巨大なにょろにょろ……もとい、角の生えた蛇の上。角はあるけど手足がないから蛇だよな?
ぽんっ! と音と共に蛇が小っちゃくなる。
「あだっっっ!」
一メートルくらいからどさっと地面に落とされた。痛い……痛いけど助かってよかったぁ。
紗耶香さん以外はみんな俺と同じような状態。小太郎だけは紗耶香に抱っこされ暢気に欠伸。お前は大物だよ。
服の汚れを払い、空中で手放した己の武器を探す。すぐ近くに落ちていて壊れた様子はない。よかった……二千九百八十円は無事だ。たかが二千九百八十円、されど二千九百八十円なのだ
紗耶香さんの元に集まり上を見上げれば、どうしようもないほど上のほうに落ちてきた地面の大口が見える。どう足掻こうと登るのは無理っぽい。
天水さんと一緒に落ちてきた
周り窺えば洞窟のように二方向に通路が続いている。その通路の広く開けた場所に落ちたようだ。
「姉さん、どう……」
天水さんが声をかけようとした時に通路の奥から何者かが歩いて来る。
俺がまだ見たことがない
「参ったわね。悪鬼だわ。あなたたち後ろにさが……」
紗耶香さんが言い終える前に軍神天水さんが突撃。悪鬼は余裕の表情で迎え構える。餓鬼、悪鬼を真っ二つにしてきた薙刀が悪鬼に振るわれる。
ザスッと音がして悪鬼の腕が切断……してない!? 薙刀の刃は数センチ食い込んではいるが完全に止められている。天水さんはなんとか薙刀を悪鬼の腕から外そうとするが抜けず、逆に無防備になった胴に蹴りが入り後ろによろけ倒れ込む。
「沙羅!」
紗耶香さんが叫び、悪鬼がそんな天水さんに追撃を加えようとする。
「はにわくん! 小太郎!」
「はにゃ~!」
「にゃ~!」
みんな頼む! はにわくんが悪鬼と天水さんの間に現れ、魔改造バットを振るう。小太郎は焔で悪鬼を攻撃、火だるまにしている。俺も走り出して天水さんの元に向かう。間に合えぇ!
はにわくんの魔改造バットが悪鬼の顔に叩きつけられるが、悪鬼は涼しい顔。小太郎の焔も悪鬼を火だるまにしているが効いている様子がない。
悪鬼の蹴り一発ではにわくんの胴体が粉々に……。天水さんはまだ立ち上がっていない。チッ、効かないのはわかっているけど走りながら偃月で攻撃。ハエを払うかのように偃月を防ぐ。当たったとしてもさしてダメージを与えるとは思えないけど、時間稼ぎにはなる。
上半身と下半身に分かれたはにわくんも上半身だけで、悪鬼の足にしがみつきなんとか動きを阻害しようとしてくれている。が、無理そう……ズルズルと引きずられている。
残る手段はあと一つ水月! 悪鬼の斜め後ろに出して、
「やれ!」
の声と水月の写し身をわざと大袈裟に見せて、悪鬼の視線誘導を狙う。
さすがの悪鬼もギョッとした感じにはなったが、すぐさま回し蹴り。写し身が消える。だが、時間稼ぎにはなった。天水さんを立たせて後ろに突き放す。と同時に背中に激痛がはしり、いつの間にか天と地がひっくり返っていた。
「十六夜くん!」
「夜刀神!」
「にゃ~!」
天水さんと紗耶香さんの声、そして小太郎の声が遠くで聞こえてブラックアウトしたのだった……ぐぅ、無念。
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