23.新人の戦い方
小太郎は紗耶香さんが抱っこしている。天水さんはなんか納得がいかない様子。
準備の整った別のグループはゲートから離れ始めている。取りあえず、俺たちもゲートから離れて
「姉ちゃんの装備かっけぇな。それに比べ、あんたの装備だっせぇ」
「ダメだよ。たけるくん。本当のことでも失礼だよ」
なんなんだ。このバカップルは? 尊というガキは口が悪く、杏紗というガキは注意しながらもディスっていやがる。正直、気分が悪い。
「でしょうー。私もこの鎧気に入っているの!」
天水さんは意外と能天気だ……。
「その兜飾りもかっけぇよ!」
「兜飾りじゃなくて、立物な」
「いいんだよ! 意味がわかれば。あんたそんなに細けぇと禿げるぞ」
煩せい! 世の髪の薄い人から刺されてしまえ!
「ふふふ。上杉謙信の兜の中でも一番好きなものなの!」
「その立物って虫の飾りなんかもあるよねぇ。気持ち悪るくないのかなぁ?」
これだから学のない奴は……。
「ムカデやトンボってのはな、後ろに進めない生き物なんだよ。要するに前にしか進まないって意味があるんだよ」
「それって猪突猛進で馬鹿ってことじゃね?」
「はぁ……。気構えだよ。気構え」
「十六夜くんは博識ね。じゃあ、私の兜飾りの意味は?」
天水さんまで……。
「確か、日輪と三日月は
「なんだよ。
自分で調べろ! って言いたいところだが、天水さんからの問いでもあるので答えてしんぜよう。
「北極星を神格化した密教の信仰で妙見菩薩を本尊としている信仰だな。上杉謙信は己を毘沙門天の生まれ変わりと言っている。毘沙門天は仏法を護る四天王の多聞天の別名。多聞天は北方を守護することから
パチパチと紗耶香さんが手を叩いて、
「なかなかの考察ね。もしかして、歴史オタクかしら? それより来たわよ」
自分で意識したことはないが、この程度もオタクなのだろうか? オタク……。
現れた
「誰から行くのかしら?」
「じゃあ、俺たちから行くぜ! あずさ!」
「任せて。たけるくん!」
二人の脇に大きな鳥と中型犬が現れる。あれが二人のマギ、
「
「コケェー!」
って鶏か! まあ、軍鶏っぽいからいいのか?
「
「ワォン!」
犬か! ってまんま黒犬だった……。お尻から煙が出ているが大丈夫なのか?
なんて思っていると、
「幻火ね」
「にゃ~」
紗耶香さんがポツリと言った言葉に相づちを打つ小太郎。ということは、そういうことなんだろう。なるほど、講師役だけあって見識高いとみえる。だが、そんな紗耶香さんは小太郎をモフリまくってニヤニヤしているせいで、俺の勘違いなのではと思ってしまう。
幻火に包まれた餓鬼と邪鬼は身動きができずにいる。そこに
幻火で動きを封じられ、火の糞で焼かれ死ぬ。餓鬼と邪鬼、哀れ……。
「いいコンビネーションだったわ。次は沙羅たちの番ね」
「なあ、あんた本当にそのシャベルで戦う気か?」
なんだ文句でもあるのか? というか、その憐れむような目はなんだ!
「お前、西日本で育ったろう?」
「なんでわかんだよ?」
「東日本ではスコップて言うんだよ」
「マジかよ! スコップって園芸用のちっちゃい奴だろう!」
あれ? 天水さんもウンウンと頷いていらっしゃる?
「土木用語で剣先スコップ。略して剣スコ。突いてよし、殴ってよし、掘ってもよし。外国の軍隊では万能武器って言われている。そして何よりコストパフォーマンスに優れている。ちなみにお前のその武器はいくらだ?」
「量産品の安物だけど二十万するぜ」
マジかよ……。あんなナックルガード如きで二十万……。俺の全身装備がいくつ買えるんだよ……。
「くっ……高けりゃいいてもんじゃない。いいか、この剣スコはホームセンターならどこにでも売っているし、総金属製の頑丈な物でも二千九百八十円!」
「「「「……」」」」
あれ? みなさんの目線が痛いんですけど……。
「そんな安もんに命預けっるって、ある意味あんたすげぇぜ……」
と、とても頑丈なんだぞ? made in Japanだし……。
などと言ってるうちに
特殊な
二体いるので分担して倒そうかと言おうとした時には、天水さんは走り出している。
おいおい……バトルジャンキーか!?
しょうがないので偃月でサポートにまわる。
薙刀のリーチを活かしての袈裟切り。餓鬼がおどけた表情のまま、真っ二つ。返す刃で邪鬼の首が飛ぶ。天水さん無双。そして何事もなかったのように、眩しいほどの笑顔で戻って来る……。
「ね、姉ちゃん、すげぇな……」
「そ、そうだな……」
その後も餓鬼と邪鬼を相手に何度か戦闘を繰り返す。小太郎は紗耶香さんが抱っこしているので戦闘には参加していない。小太郎は俺のマギなのだが……。
「なあ、あんたその万能武器は見せかけか?」
「じゃあ、お前はあの軍神の戦いに割り込めるのか?」
「悪りぃ、無理。だけど、あんたのマギも何もしてねぇよな?」
「たけるくん! あんな可愛い子を戦わせる気!」
「……」
思わぬ所から援護射撃がと思ったら、杏紗はいつの間にか紗耶香さんと一緒に小太郎をモフモフしている。なんかおとなしいと思ったら……確か戦闘訓練に来てるんですよね?
「ふう。体が温まってきたから、そろそろ本気でいくよー!」
ってあれで、本気じゃなかったんかい! 天水さん!
「にゃ~」
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