22.新人研修会
初めての新幹線にウキウキ。用もないのにトイレに行ってみたり端から端まで歩いてみたりした。付き添いの葛城さんはずっとキャリーバッグの中にいる小太郎をニマニマ見ている。よく飽きないものだ。
大宮まで三十五分だったが大変楽しい時間だった。大宮駅から大宮駐屯地まではタクシー。正直、タクシーに乗るのも初めての経験。料金メーターに無線機、カーナビ等、珍しさに目が釘付けだった。そんな俺に葛城さんは呆れ顔。仕方がないじゃないですか、乗る機会がなかったんですから。
駐屯地に到着して受付を済ませ荷物を預ける。今日の泊まりは駐屯地内ではなく街中のホテルになる。小太郎を出してやると大きく背伸びしてから、俺の肩に登ってくる。
受付で渡された名札をつけて
体育館でまた受付を済ませて中に入ると、百人くらいの人がすでに集まっている。私服の人が多いけど、作務衣、修行僧の袈裟などを着ている人もいる。年齢も様々で老若男女いるが、若い人が多い。
そんな中、見知った顔を見つけた。なぜか袴姿の天水さんがいた。声をかけようと思ったが、研修会の挨拶が始まり姿を見失ってしまった。
一時間ほど今日の研修についての話があり、今日明日一緒に行動する班分けをするように指示が出される。班分けと言われても
「コタちゃん? なんで?」
少し離れた場所から聞き覚えのある声がしたので向かう。まあ、天水さんなのはわかっていたことだけどね。案の定、彼女の周りには一緒に班を組もうと多くの男性陣がいる。
「十六夜くん?」
「や、やあ」
周りの男性陣の目が怖い。取りあえず、一緒に班を組むことを了承してもらい、近くで高校生くらいの
四人組の班になったので受付に報告に行くと、班ごとに担当講師がつくようで紹介された。どこかで見たことのある顔の自衛隊の制服を着た美人な女性講師だ。
「姉さんなの」
なるほど、見たことのある顔だ。横を見れば確かに姉妹だと納得。
名札に張る番号をもらい着替えてくるように言われたので、聞きたいことは多くあれど着替えを済ませてしまおう。装備類は事前に送っているので受付で名前を言ってロッカーの鍵をもらい着替えをしてくる。
新調した特殊部隊装備だ。バラクラバは身に着けていない。暑いからな。一応、リュックにしまってある。
着替えて体育館に戻るとまだメンバーは戻って来ていない。少し待っていると鎧姿の天水さんが現れた……おいおい。
突っ込みどころは多くあれどまずはどういうことか聞いてみる。
「私の家系は昔から
どうやら、天水さんのご先祖様は公家らしく
そういえば、葛城さんが自衛隊には
そんな家系なので天水さんも
なるほど、だから天水さんの担当講師はお姉さんなんだな。これは既定路線ということか。
そんな話をしていると高校生の
男の子のほうはカンフー着に革と思われる色彩鮮やかなブレストアーマーに、拳に金属製のナックルガードの付いたグローブ。女の子のほうはチェーンメイルに革のブレストアーマーに金属製のメイスだ。
そして、突っ込みどころ満載の天水さんの装備なのだが……武者姿だ。
当世具足に陣羽織。兜は日輪に三日月。軍神上杉謙信か!? 武器は薙刀と腰に小太刀を差している。聞けば、総チタン製で丈夫なうえ軽いそうだ。本当は兜ではなく鉢がねにしたかったらしいが家族の反対にあい、それならばと好きな武将の兜にしたそうだ。
お金持ちって凄いね……凄い以外、言葉が出てこない。
天水さんのお姉さんが来たところで自己紹介になった。
天水さんのお姉さんは天水紗耶香さん。いつもは薙刀を使っているらしいが、今日は講師なので武器は持ってきていないそうだ。代わりに何かあった時のために、グレネードランチャーを持って行くそうだ。照明弾や発煙弾に催涙弾、しまいには対人榴弾まで用意しているので安心するように言われたが、俺たちは戦争にでも行くのだろうか?
女の子はやはり高校生で
俺と天水さんの自己紹介も軽く済ませ、
「ねぇ、十六夜くん。なんで、コタちゃんを連れて行くの?
うん。ごもっともなご意見。でもね、
「小太郎は俺のマギだから」
「えっ?」
「いや、だから小太郎は俺のマギだから」
「え、えぇー!」
「にゃ~」
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