20.はにわくん専用武器
金曜の夕方、工学部の友人の元に急ぐ。期待半分、不安半分で眠れぬ夜が続いた。小太郎はいつも寝ているがな。
「出来てるぜ」
大きな段ボール箱を持って来た。中を確認するとサバゲー部の友人にもらった物以外にプロテクター類が増えている。
「モトクロス部の奴から、不要になったプロテクターをもらってきて改造した」
プロテクター自体はFRP(繊維強化プラスチック)だが、内張りにステンレス板が複数貼られている。これをそのまま着るとクッション性がなく痛そう。しかし、そこは考えていたようで、プロテクターの下にサバゲー部からもらったエセ防弾チョッキの中のウレタン部分を二枚に切り、間にステンレス板を挟み改造した物を着ることでクッション性もあり、尚且つ二重の防護を得ることもできるようにしてあるそうだ。
残りのプロテクター部分もステンレス板で補強してあり防具としては申し分ない出来になっている。
壊れていたヘルメットも修理されており、追加で目を保護するためのバイザーまでついている。上下に稼働できるようになっているので、必要のない時はあげておけばいいようだ。
「これ、なんだ?」
「にゃ~?」
「演劇部の奴らが捨てるって言うからもらってきた」
忍者や鎧武者などが身につけているような肘まである手甲で、これもステンレス板を挟みこんでいるらしい。甲の部分は光を反射しないようにカラーステンレスの黒い板を紐で通して組んである。格好いい!
これで全部かな? と思ったら、もう一つ見るからに凶悪な物が出てきた。
「テッテテェー! 魔改造バット~」
「……」
「にゃ~?」
ドヤ顔で説明を始める友人。ソフトボール部で不要になったバットの中に樹脂を流し込み空洞を埋め、表面を鋼で囲うように溶接してある。マスコットバットなんて目じゃないほど重い。両手じゃないと持ち上らない。
というか、これで何をしろと?
「防具ときたら武器だろう? 勢いで作ちゃいました。てへぺろ♪」
てへぺろ……って男じゃ可愛くもなんともない。でも、これって考えようによっては使えるんじゃない?
どうやら、これで全部のようだ。さすがに今回はタダとはいかず、材料費で二万円かかった。人件費は前回とプラスして奢ることで同意となった。いやー、本当に頭が上らない。
土曜の朝、夜も明けぬ間に荷物を担いで
お弁当を注文して小太郎をカウンターに残し、地下のロッカールームに荷物と移動。着替えをして装備品を全て装着して鏡を見れば……どこかの国の特殊部隊の隊員が映っている。誰だよお前……俺だな。
剣スコと魔改造バットはゲート近くに置いて喫茶店内に戻る。まだ、早朝なのでマスターを含め三人しかいないが、俺が姿を表すと小太郎のモフモフした状態でフリーズしている。
「い、十六夜くんですよね? な、なかなか、キマってますね……どこかの
「見た目も威圧感も申し分ないですが、実際の防御力はどうなんですか?」
「思った以上にしっかりとした作りですし、初級クラスならばその装備はなかなかのものですね。なるほど、既製品を改造しても意外といい物が作れるものですねぇ。うちでも作らせてみますか……」
お弁当を受け取り小太郎も引き取ってゲートに向かう。
「はにゃ~♪」
はにわくんを召喚して魔改造バットを渡すと、嬉しそうに振り回し始める。俺だと両手でしか持てないが、はにわくんは片手で軽々と振り回す。だいぶ気に入ったようだ。
腰に剣を腰に佩いているけど、
魔改造バットの威力を確認するため、リヤカーは俺が引いて移動。いつもの採取場に近づいた時に、餓鬼と邪鬼が現れる。
「さあ、はにわくん。魔改造バットの力を示すがいい!」
「はにゃ~」
ブンブンと魔改造バットを振りまして近づけば、馬鹿な餓鬼や邪鬼だって恐れ慄くには当然。見るからに腰が引けている。しかし、はにわくんは
盛大に飛び散る血しぶき。スイカを割っているかのように爆散する餓鬼と邪鬼の頭。魔改造バット恐るべし。
「はにゃ……」
「にゃ~?」
俺も小太郎もはにわくんは魔改造バットに満足してくれるものと思っていたのに、はにわくんはなぜか浮かない表情。
どうしたのかとはにわくんに近寄ると、はにわくんの腕にひびが入っている。どうやら、魔改造バットの威力にはにわくん自体が耐えられていないようだ。レベルアップが必要のようだ。
だとしても、魔改造バットの威力は凄まじい。この辺りの
ひびは再召喚すれば治る。まあ、頻繁にはできないけど頼もしい限りだ。浮かない表情のはにわくんを一旦還すと、魔改造バットも消えた!? すぐにはにわくんを召喚すると魔改造バットを掲げて登場……。
「はにゃ~!」
一瞬、焦った。魔改造バットが消滅したのかと思った。だが、魔改造バットははにわくんの所有物と認識されたのか、召喚されたはにわくんが持って現れた。どうなっているのだろうか?
はにわくんがどこに住んでいるのか知らないけど、住んでる場所で迷惑かけていないことを切に願う……
「にゃ~?」
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