17.収入UP

「搬入用エレベ~タ~?」


「い、言ってなかった……かな? で、でも常識で考えればわかることよね! ねっ!」


「にゃ~」


 ぐっ、確かにゲートや電波塔の建設やその保全を考えれば、その資材をいつものエレベーターで運ぶなんて無理だ。そこまで、頭の回らなかった俺が悪いのか? それとだ、小太郎。もしかして、お前気付いていたのか? なんで教えないんだよ!


「にゃ、にゃ……」


「アキくん。コタちゃんに当たっちゃ駄目でしょう!」


 わかっているんだが、このやるせなさをどこにぶつければいいんだ~! そうか!? 怪異モンスターにぶつければいいんだな!


 よし。行くぞ! 小太郎! この膨れ上がるパトスを怪異モンスターにぶつけるのだ~!


「にゃ、にゃ~」


 葛城さんに搬入用エレベーターに案内してもらうと、ビルの後ろにあったね。知らなかった……。


 そして、ゲートをくぐり異界アンダーワールドへ! 


 はにわくんを召喚し、意気揚々と怪異モンスターを探すがこんなときに限って見つからない。この湧き上がるパトスをどうすればいいんだよ!


 そして、何事もなくいつもの採取場に着く。世の中こんなもんだよな……。


 見張りをはにわくんと小太郎に頼み、新装備のつるはしを振るう。スコップと違いサクサクと掘れる。文明の利器……偉大だ。楽しくなってガンガン掘っていく。たぶん、怪異モンスターに怒りをぶつけることができなかったせいで、穴掘りでナチュラルハイになっていたんだと思う。


 気付けば、とんでもない量を掘り出していた。なのに、それほど疲れがない。ナチュラルハイのせいなのか、それとも異界アンダーワールドでレベルアップしたからなのか、まあいいことなので深く考えない。


 掘り出した鉱石を土嚢袋に詰め、リヤカーに積んでいく。


 なあ、小太郎。お前見張りをちゃんとしてるんだよな?


「にゃ~」


 小太郎はリヤカーに設置されたお昼寝台で日向ぼっこしながら、欠伸をしているんだが? いや、これが小太郎のデフォルトだ。この緊張感のなさげな風を装って、実はちゃんと周囲の確認をしているに違いない……よな?


「はにゃ!」


 確かにはにわくんも緊張感のない表情だけど、今は小太郎のことだからね。


「はにゃ……」


 いやいや、落ち込まないでよ! 怒ったわけじゃないんだから。


「はにゃ~」


「にゃ~」


 小太郎くん、元々は君のことですから!


 などとコントをしている間に、土嚢袋七つ積み込んだ。一袋およそ25kgくらいなので、全部で175kg積載重量いっぱいだ。今の時間帯なら一度ゲートに戻り、荷下ろししてからもう一往復できそうだ。


 そうと決まれば急いで戻るぞ。だけど、周囲の確認は怠るなよ。


「にゃ~」


「はにゃ~」


 数回、怪異モンスターと遭遇して倒したが、昼過ぎにはゲートに着いた。荷下ろしして昼食をとりもう一度採取に向かう。


 往復の帰りに怪異モンスターと遭遇した時に焦ってしまい、リヤカーから出ようとして持ち手を離したら、持ちてが跳ね上がり顎に激突。ピヨリ状態に陥ったけど、小太郎とはにわくんで怪異モンスターを撃退してくれたおかげで難を免れた。


 そして、また気付く。はにわくんにリヤカー引かせればいいんじゃねぇ?


 まあ、それは後で考える。係の人を呼ぶとまた葛城さんが来た。


「た、大漁ね……」


 重さを測りベルトコンベヤーに載せていく。およその査定額は三万から四万になるだろうとのこと。前回の五倍ほどになる。これなら文句なし、やりがいがあるってもんだ。


「この鉱石は顔料の元らしくてね、引き取り額は安いけど需要は大きいのよ。でも、供給が間に合ってないから、じゃんじゃん持って来ても問題ないわよ」


 そこそこの探究者シーカーなら、こんな苦労しなくてももっと稼ぎがあるのだろう。採取場の周りの怪異モンスターは弱い怪異モンスターしか出ないので、対策さえちゃんとしておけば俺のような初心者向きだ。


「任せてください! いい場所を見つけたのでガンガン掘りますよ!」


「完全に鉱夫ね……やっぱり、お姉さん心配だわ」


 別に俺は英雄になりたいわけでも、レギオンになりたいわけでもない。まずは、貧乏からの脱却。そして、月読様と契約できるくらいに強くなることが俺の主たる目的だ。


 保険などが引かれても月に十万円ももらえれば、なんの不自由なく暮らせるじゃないか。今まで断っていた飲み会や、読みたかった本、やってみたかったゲームだって買うことができる。なんて夢のような生活! 考えただけで涙がこぼれてくるじゃないか!


「ア、アキくん。だ、大丈夫? 急に泣き出すからお姉さん、ビックリだよ!」


「安全第一。それだけ稼げるなら十分です!」


「夢がないわね……枯れすぎじゃないかしら? 探究者シーカーなんだから、もっと大きな夢を持とうよ!」


「夢!? 夢なんてものはですね、金持ちが考えることですよ。金のない者はその日その日を生きることで精一杯なんです。夢を語る余裕なんてありません!」


「お姉さん。アキくんの将来も心配になってきたわ……」


 俺は金持ちになる!


「にゃ~」







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