16.魔改造
まずは、三人でリヤカーの錆取り、もう三人は材料調達。俺は錆取りグループ。
材料は資材置き場という名の廃材ゴミ捨て場に集めに行った。自転車サークルや自動車サークルなどの廃材が置いてあるらしい。もちろんタダ。半年に一度しか産廃業者が取りに来ないので取り放題らしい。それでも、足りない場合は本当の機械科の資材を使うそうだ。いいのか?
グラインダーで大まかに錆を落としワイヤーブラシで細かい場所をこ擦る。完全に錆を取るのではなく大まかなけれん作業だ。完全に錆を落とさなくていいのかと聞くと、問題ないと返ってきた。まあ、何か考えがあるのだろう。
それにしても、地味な作業だ。だが、これが一番お金のかからないやり方なんだそうだ。お金のかからないことはいいことだ。
ちなみにお金がかかるが手っ取り早いのはサンドブラストを使い錆落としする方法。だけど、リヤカーの大きさだと自動車サークルで持っているような大型の装置でないと無理。借りると結構な金額になる。それこそ、新しいリヤカーを買ったほうがいいくらいに。
錆取りが終われば設計図に沿って切断。ここで使える部分と腐食が激しい部分を選別。三分の二くらいがゴミ行きになったんだが……。
残った部分は塗装に入る。塗布形素地調整軽減剤という塗ることで錆を抑える塗料を下地に使う。外も内も万遍なく塗り乾かす。乾くまで時間がかかるので、今日はここまで。それでも、結構な時間が経っていた。
次の日は上塗り塗装。シルバーに色塗りをした。俺がな。その間に友人たちが集めた廃材を設計図を見ながら加工していく。そんなこんなで、空いてる時間を使ってリヤカー制作を続けて、完成したのが金曜の夕方。明日の
魔改造リヤカー。本体の骨組みを三分の二ほどアルミに変更。底板もアルミ板二枚にして、全体を折りたたみ式に変更。タイヤもノーパンクタイヤにしベアリング式に加工。ついでにベアリング部にダイナモを設置しスクーター用の小型のバッテリーと1200LmのLEDライトを両脇に取り付けた。
とても明るい。明るいというより眩しいくらいだ。バッテリーとライトの配線は、端子を簡単に取り付け取り外しできるようにしてある使用者に優しい設計。
構造計算上、積載量は180kgまでは保証。取り外し可能な作業台兼小太郎のお昼寝台まで完備。正直、こいつら何やってんだ? って感じだったが、見事魔改造リヤカーが完成した。
値段を聞くのが怖いが勇気を振り絞って聞いてみると、今度飯奢れと言われた。くっ……こいつら……。持つべきものは、マッドな友だな。
涙を抑えちゃんと聞くと、実際ほとんど廃材使用で人件費のみらしい。使えるものでもすぐ捨てる、使い捨て日本。断捨離なんて言葉が流行った時代もあったけどねぇ。どうなのよ? 今回は助かったけど。
今度、必ず飯を奢ることを約束して、リヤカーの作業台に小太郎を乗せ家路につく。そういえば、廃材の中に柄の壊れたつるはしを見つけたたので、新しく柄を作り直した。欲しかったつるはしがタダで手に入ったのはラッキーだった。これでガンガン掘ってウハウハになる!
土曜の朝、早く起きて
「おはようございます」
「おはよう。アキくん。コタちゃん。ご注文は?」
「にゃ~」
まずは、モーニングコーヒー……もとい、モーニングティーだ。
「お冷とアールグレイで」
コーヒーは苦手なのだ……。
小太郎をカウンターに下すとお水の入ったお皿が置かれ、小太郎はチロチロと飲み始めた。
俺の前にもティーカップが置かれベルガモットの香りが漂う。フレーバーティーの名に恥じぬいい香りだ。味も申し分ない。これにミルクを加えても香りを保ち、違う味わいを楽しめる。
アールグレイを楽しんでいるとお客が増え始める。客というより
サンドイッチが出来上がり表にあるリヤカーをバラしに入ろうとした時、葛城さんが声をかけてきた。
「ねぇ。アキくん。君はいったいどこに向かっているのかな? お姉さんとっても心配なんだけど……」
「なんのことです?」
「それってリヤカーよね? つるはしまであるし。装備はいつものスコップにつなぎの作業着。
「にゃ~」
「それがなにか?」
小太郎くん、変なところで相槌を入れないように。まるで鉱夫であることを肯定しているようじゃないか。
それにこの格好は別にTPOに合わせたわけではない。たんにお金がなくて十分な装備を買えないだけ。そう、貧乏が悪いのだ! その貧乏からの脱却するための装備がここにある物なのだ。
お金のためなら少しばかりの格好悪さなど気にしない。お金のほうが大事なのだ!
「はぁ……人の価値観は千差万別、十人十色。もう、何も言わないわ。怪我だけはしないで戻って来てね。高いけどポーションくらい買って行ってほしいわ。それより、何をしてるの?」
「リヤカーをバラしていますけど?」
「なんで?」
「なんで? ってエレベーターに入らないからですよ」
「その程度の大きさなら、搬入用エレベーターを使えばいいんじゃない?」
は、搬入用エレベーターだ~と~? 葛城さんのあまりなカミングアウトに体が硬直して動かない。
油の切れた機械の如く、ギギギィィィーと首を回し葛城さんを見る。いや、睨んでしまった。
「にゃ~」
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