14.レベルアップ

 ゲート内に設置してある内線電話でギルドにいる係員を呼び出す。採取してきた物を引き渡すためだ。採取したものは一度必ずすべてギルドに引き渡す。それをギルドが国の機関に渡して査定されて、税金等が引かれてギルドに支払われる。その後に保険料などが差し引かれて俺の給料となるわけだ。


 今日は係員ではなくて葛城さんがやって来た。


「どうだった?」


 どうやら心配だったようで、葛城さんが係員の代わりに来たようだ。だが、心配していたのは俺のことだったのだろうか? 葛城さん、俺より小太郎を抱っこして小太郎の体を怪我してないか入念に調べてる。調べてるというかモフってる?


「まあ、なんとかってところでしょうか」


 俺はリュックから鉱石の入った土嚢袋を出して、デジタル計量計の上に乗せる。三十二キロと表示された。


 中身を葛城さんがチェックして、土嚢袋をベルトコンベアに載せ機械を操作して運んで行く。奥の倉庫に別の係の人がいて再チェックするそうだ。


「そうねぇ。三千円くらいかしら?」


 わかっていたけど、あれだけ苦労して三千円……。今回の道具代にもならない。作業着も袖がなくなったし……赤字だ。まあ、最初から多くのお金を稼げるなんて思っていないから、それはいい。そんなことより今回の一人での異界アンダーワールド探索はいろいろ考えさせられる内容だった。


 明日も異界アンダーワールド探索するつもりでいるので、いろいろ対策を講じねばならない。


 不意を衝かれて動揺して冷静な判断ができなかった。今思えば無理せず偃月で攻撃してけん制し、時間を稼げば怪我をすることもなかった。


 小太郎との連携も詰めないといけない。小太郎も不意を衝かれて本来ならばはにわくんがけん制している怪異モンスターではなく、もう一方の怪異モンスターに攻撃を仕掛けるべきだった。


 まあ、これは俺の対応も不味かったのでしょうがないことだが、今後はもう少し小太郎との連携も考えていかなければならない。今はまだいいが、怪異モンスターの数が増えたり、強くなってきたら効率よく戦わないと命にかかわってくる。


 それと小太郎がある程度、怪異モンスターの気配を察知できるとはいえ完璧ではない。小太郎が怪異モンスターの気配を感じるのはゲームの気配察知のようなのものではなく、音や匂い振動など五感を使って気配を察知しているだけにすぎない。なので、風が強く吹いていたり、雨が降っていたりすると気配を察知し難くくなる。俺自身も警戒を怠らないようにしなければならない。


 夜にそのことを小太郎に話したらにゃ~と答え、理解を示してくれた。小太郎は頭の良い子なのでちゃんとわかってくれたと思う。小太郎も俺も一緒に成長して強くなる!


 翌日、ゲートをくぐり昨日の採取場所に行く。周囲の警戒をはにわくんと小太郎に任せて、鉱石を掘りまくる。スコップよりつるはしが欲しい今日この頃。


 それでも、一度鉱石の層を見つければ大量に採取できるのが楽しい。楽しすぎて、昨日残した分も含めて、二トントラック一台分になるくらいの鉱石の山ができた。これをどうやって運ぶのかが悩みどころだ。車でもあれば楽に運べるんだがなぁ。


 車で楽に運ぶ? なるほど、その手があったか。帰ったら少し考えてみよう。


 小太郎とお昼をとり、まだ時間に余裕があるので荷物をここに置いて近場で怪異モンスター狩りをすることにした。神経を研ぎ澄まし怪異モンスターの気配を探る。まったくわからない……。


「にゃ~」


 小太郎が怪異モンスターの気配を察知したようだ。慎重に小太郎が促すほうに歩いて行くと……いた。


 小太郎とはにわくんをこの場に待機させ、俺は怪異モンスターに気付かれないように後ろに回り込み、はにわくんにハンドサインで姿を現すように指示。


 怪異モンスターは一瞬、はにわくんの出現に驚くがすぐに攻撃態勢に入りはにわくんに向かって行く。俺は後ろから走り込み、邪鬼に偃月、餓鬼にスコップを突き刺し、偃月で怯んだ邪鬼に餓鬼の首元からスコップを抜きざま横に一閃、邪鬼の首を切り裂いた。


 いい感じだ。だが、相手の不意を衝いただけ、自分の実力で倒したわけではない。真正面から戦って無傷で倒せるようにならないと駄目だ。いろいろ考えながら三回ほど怪異モンスターを倒した時に、急に体が発光した。ほんの一瞬だったけど確かに光った。何が起きた?


 気になったので採取場に戻り、荷物をまとめてゲートに戻る。リュックに土嚢袋一つを入れて、リュックのベルトを最大にしてはにわくんに背負わせる。埴輪のくせに意外と関節は軟いようで問題なく背負えた。両手にも一袋ずつ持たせ移動開始。怪異モンスターと遭遇したら両手の土嚢袋は離すように指示してある。


 ゲートまでに二度怪異モンスターと戦ったが難なく倒せた。最初からこうすればよかったんだな……後悔先に立たずだ。


 また、内線電話を使うと葛城さんがやって来た。さっそく計量。頑張ったわねと労われるが、七十八キロ。やはりこんなもんか。思いついた方法を実行に移すべきだと本気で考える。


 それよりだ。戦闘後、体が光ったと葛城さんに話し、何か知らないか聞いてみた。


「そう、光ったんだ。体が光る理由は……」


「(ごっくん)……理由は?」


「おめでとう! レベルアップです」


 あれがレベルアップ? というより、本当にレベルアップしたのか?


「初めてだから実感はないと思うけど、これから何度も経験すればわかるわ。人間の域を超える感覚をね」


 葛城さんの目がキラリン☆と光ったようなの気がした。まあ、おそらく気がしただけだろう。


 それに、人間の域を超えるねぇ……そいつは面白そうじゃないか!


「にゃ~」





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