09.総評
「はにゃ~」
元気な姿と声でモコモコと地面から現れる、はにわくん。元気な姿が見られて安心。ボロボロの状態で現れたらどうしようかと思ていた。
「げ、元気があって強そうな? 眷属ね?」
「はにわくん。あいつを倒せ!」
「はにゃ~」
腰に吊っていた太刀を薩摩の示現流のような構えで立ち、餓鬼を見据える姿は頼もしく見える。
「はにゃ~!」
チェストー! とはかけ離れた気の抜ける気合のもと、間合いに入った餓鬼に飛び込み切りつける。
がシャーン!
うん。太刀が壊れたね。頼もしく見えたけど前と変わりはないようだ。
「はにゃ……」
「も、もしかして弱いの?」
そう、弱いんです。でもあの太刀で切ら……殴られた餓鬼は血だらけになりフラフラしている。よし、ここは俺が止めだ! さあ、俺の偃月よ、その力を示せ!
15cmほどの黄金色の半月が俺の周りにゆらゆらと浮き上がる。
「アキくん。それが本命なのね!」
「いけ! 偃月!」
ゆらゆらと浮かんでいた黄金色の半月が行きよいよく回転しながら、餓鬼に向かって飛んで行く。
偃月がまだフラフラして動きの止まっている餓鬼に当たる。もらった! ………………も、もらったよね? あれ? 当たって刺さってはいるが、余りダメージにはなってないかな?
「アキくん……あなたもなのね」
そんな残念な子を見る目はやめてください。今日初めて
フラフラしていた餓鬼が俺を睨んでいる。ワレ、何しとんじゃい!? って感じに……。もしかしなくても、余り効いていない? マジですか……月読様~! これもレベルが上がらないと使い物にならないやつですか~!?
餓鬼は爪での引っ掻き攻撃をはにわくんにするが、土で出来ているはにわくんにはたいしたダメージにはなっていない。そんなはにわくんを盾にちまちまと偃月で攻撃。餓鬼が血だらけ傷だらけになっていく。
「可哀そうだから止めを刺してあげてよぉ……」
葛城さん。その止めを刺す手段が俺にはないんですよ! なんです? その拳を突き出したポーズは? 嫌ですよ、素手で殴って倒すなんて! 蹴り? 同じです!
「にゃ~」
肩の上にいた小太郎が急に鳴いたと思ったら、餓鬼が炎に包まれ消えていった……。
肩の小太郎を見れば疲れたなぁとばかりに欠伸をしている姿がある。小太郎がやったようだ。
「やればできるじゃない。あんな隠し玉を持ってたのなら、早く使いなさいよ。餓鬼が可哀そうだったわ。苦痛を味合わせ続けるなんて、優しそうな見た目によらずSなのね」
違いますから! いろんな意味で違いますから!
「Sでもなければ、止めを刺したのも俺ではなく小太郎です」
最初にSを否定したのは大事だからだ。俺はいたってノーマルだ。アブノーマルではない!
「そうなんだ。やっぱりコタちゃんは凄いのかな?」
「にゃ~」
肯定とも否定、そして謙遜ともとれる鳴きかただ。というか興味ないといったところか?
そんな小太郎とは対照的にやり切った表情を見せるはにわくん。戦っている時はダメージを受けているように見えなかったが、正面は餓鬼の引っ掻き攻撃によってボロボロ。そんな姿を見ているのが、いたたまれなくなり召喚を解除した……。不甲斐ない
しかし、これが戦いの現実。レベルが上がってこその加護のようだ。素手で殴って倒せる相手にわざわざここまで苦労しなくても、俺が武器を持って倒せばいいのではないだろうか? 加護はレベルが上がるまで当面はけん制程度に使えばいいだろう。
この後、お弁当を食べ戦闘は葛城さんに任せて採取に励む。いくつか価値ある資源を見つけ、この日は終了。
葛城さんの総評として、採取は問題ないが戦闘は難あり。やはり、俺自身が武器を持って戦うのが今のところベスト。加護については、俺の考えと同じでレベルが上がるまではけん制にとどめる。はにわくんはよいけん制になると言っている。小太郎に関しては未知の部分が多いので、危険な時だけ援護してもらうのがよいとのこと。
だいぶ考えさせられる探索だった。現実は厳しく易しくないとわかっただけでも収穫があった。
ゲートとに戻り元の世界に戻る。採取してきた資源を葛城さんに渡す。たいした額にはならない。すぐに換金できるかと思っていたが、これらの資源は一度国の機関に送られる査定されるそうだ。
それからひと月分が給料として翌月支払われる。もちろん給料なので税金と健康保険、年金が差し引かれ通帳に振り込まれる。光明真会は一応会社なので健康保険と年金の加入になるそうだ。なので今まで払っていた国民健康保険と国民年金は不要になる。社会保険と厚生年金に変わるのは助かるが、それだけ稼がないといけないわけだ。
次回分は小太郎の新発見分で十分に相殺できるので、安心していいと言われた。小太郎様々だ。
「にゃ~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます