「ジェシカ様」

 大声をだして、戸を開けたカインを見て驚いていると。

「大丈夫ですか?」

「ええ」

「まさか、殺されたとでも思っていたのですか?」

「ああ、そのまさかです」

 ケリーは、青ざめる。

「やっぱり、カルミナ様か、ジェミナ様が暗殺を考えてらっしゃるのですか?」

「その通りです。しかも、カルミナの方です」

 ケリーは、びくっと震えた。

「カルミナ様ですか、それでは、容赦はないですね」

「ケリー、カルミナ様って、そんなに怖いのですか?」

「ええ、使用人を次々首にしている、暴君と名が高い方ですわ」

「やはり、そうでしたか、そうでなければ、あんな理由で殺しをするわけがない」

「あんな理由?」

「十三が嫌いだったのだと言っていたのです」

「えっ? それだけ?」

「そうです。暴君ならやりかねない。自分は、十四代目になると張り切っていました。そして、ジェシカ様は、殺すのにちょうどいい孤児としか思っていない様です」

「むごいですわ」

 ケリーが頭を抱えているとカインが。

「私は、ジェシカ様を守るように言いつけられた。しっかり守るつもりでいますから、安心してください、もし、どうしてもだめなようでしたら、ジェシカ様を抱えてこの家をでる」

「!」

 ジェシカは、驚いてしまった。

「この家を出る? でも、それでは、あなたにとっては、契約違反なのではありませんか?」

「それでも、守れる命、守り切れなかったら後悔します」

「カイン様、本当は守り切ってもこの家にいるのが危ないとわかっているのでしょう」

 ケリーが落ち着いてそういう。

「ああ」

「それじゃあ、最初から、この家を出る気でいたのね……」

「ああ」

 カインは、照れくさそうにそう言う。

「きっと、奇襲は今夜だろう、ケリーは、メイドの部屋から出ないように、足手まといにしかならないからね」

「はい」

 ケリーは、力強く返事した。

「それでは、ジェシカ様とは、お別れなのですね」

ケリーは、涙を流しそうな顔をしている。

「ケリー」

 ケリーと抱き合った。

「生きていれば、いつか会えるわ」

「そうですね」

 ケリーは、キッと顔を元に戻して。

「二人とも、いつかまた」

 手を振って別れた。

「ケリーは、いいやつですね」

 カインは、剣の柄を握ってそう言う。

「ええ、カインも、あんまり無理しないでね」

「今日一日ぐらいで、私は、倒れませんよ」

「そうみたいね」

「奇襲が来たら、「キャー」とか「ギャー」とか声を上げてください、足音でわかると言っても、入るタイミングがありますから」

「はい」

 カインはそう言って、外に出た。

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