&24 さらに多くの共通点
今日の夕食は、市場で買ったものを使った料理となった。それぞれに3つの皿が置かれ、一つはサラダ、一つはボルシチのようなもの、一つはミートスパゲッティのようなものという内容だ。後者2つは実際、ようなではなく、そのものであった。驚いたことに、こちらの世界には元の世界と似た食べ物が多く存在しており、そのうちの一つがトマト。こちらではタオと呼ぶらしいのだが、見た目や中身はまんまそれだった。卓上から漂ってくる香りも何度も嗅いだことがあるもの。他の皿にあるものも見たことがあるようなものが材料に使われている。
「ここまでくると、生活環境だけしか異世界と思えないなぁ。食べ物がここまで似ていると、ハルの家へ食事しに来たみたいだ」
「私も驚きですよ。2人とも帰ってきたら、調理場で料理を始めちゃうんですから。男の人がこんなものを作れるなんて……本当に性別は男性ですか?」
リーネは、ジト目でこちらを見てくる。
僕とタクは見合って、お互い性別上、男だったよなというアイコンタクトをとる。各々が否定することが無かったので、自分たちの認識が間違っていないことに
「驚くところはそこかよ。いや、この世界でも男の人が料理しているなんて普通だろ。独り身の人なんて、特にそうだ」
「もしかしたら、この食材で知っている料理が作れるかなって思ったから、やったダけダよ。僕たちそれぞれの家族は同じところで働いていて、帰ってくるのが遅いときがあるンダ。ダから、毎日とはいかないけど、僕の家で、こうやって交替で料理をして食べてるって訳で」
大体、週に4日ほどがこれになり、買い物にかかるお金は両家の親から渡されている。始まった理由は、一つが同じ会社で働いている両親たちの帰りが遅かったこと。そしてもう一つの理由が、モテたいから。料理ができる男はモテるという記事を見た僕たちは一つ目の理由があることも鑑みて、やってみようとなったのだ。ただ、実際は料理ばかりが上手くなるばかりで、女性の前で
ケティ―が遅れて卓に到着したところで、食べ始めた。
『いただきます』
現在、夕食には僕たち二人とリーネ、ケティ―、ニナリンゼ、そして執事に
各々が食べ始めると、最初に口を開いたのはリーネだった。
「っん! このスープ、とてもおいしいですね。野菜の切れ端やヴェルガの肉からこのような味が出せるなんて」
「こっちのもなかなかだ。パコのソースにタオを使うなんて考えられなかったが、見た目といい、味の深さとしても、おいしい」
「リーネが食べているのはボルシチ、ケティ―さんとニナリンゼさんが食べているのはミートスパゲッティというものです。本来なら、それぞれの料理でもうちょっと材料が必要ダったンダけど、代用できるものを使って作っています」
「ボルシチはハルが、ミートスパは俺が作ったんだ。煮込み料理やスープはハルの得意分野でな、リーネはお昼から察するにそこら辺が好きそうだから、食べたくなったらこいつに頼むといいぞ」
「本当ですか!?」
いい情報を聞いたとリーネは大喜びだ。僕は直ぐになんてことを言うんだと非難の視線をタクに向けるが、彼は自分で作ったスパゲッティを食べることに集中している。絶対、また作る時が来たら手伝わせてやる。
僕はそう思いながらサラダを食べようとした。その時、ニアリンゼに話し掛けた。
「城では、調理人が料理をしていますが、男性が料理できるというのはかっこいいですね。普段は私たち女性がするべきことだと認識している方々がいる中で、これほどの物を作ってしまうんですから。陛下が好きな料理をハル殿ができるということは、好きになってしまうのでは?」
「そうですね、こんなに美味しいものを作られると好きになって―――、っっちょっと! なんてことを言わせるんですか! 私は、その……いえ、料理はおいしいんですよ。とても私好みですよ。ただ、好きというのは、料理が好きというわけであって、ハルのことがとかという訳ではなく―――」
リーネは顔を今食べていたボルシチのように赤くし、僕にはではなく、ニナリンゼに話していた。顔に熱を感じる。あれ、もしかしたら僕も赤くなっていたり?
鼓動がいつもより早く打って、陸上競技をやった後のようだった。ま、まさかね。
こちらの方は一回も観ることが無い。そんな時、横から声が聞こえてきた。
[ちくしょう! こうなったら俺も勉強するしか―――]
恥ずかしさ隠しをするためにも食事を続けることにした。あるだけで作ったけど、おいしくできたなと自分をほめておく。
少しの間だが、食卓はうるさくなった。
「コホんっ! そ、それではケティ―、お昼に約束していた
未だ、顔の赤さを少し残しつつも忘れようではないかというように新たな会話を始める。ケティ―としては、もう少し慌てていた様子を見ていたかったそうだが、リーネがうるさく言うように催促したので、しょうがないと説明するためにいくつかをトルヴァと準備していた。魔統によって作った大きめのウィンドウをトルヴァが準備し、ケティ―が羽ペンのようなものをそれに当ててセッティングしている。液晶タブレットのように使うのかな。
「じゃあ、始めようか。お題は、『この世界での魔統の在り方と認識』だ」
一つ目のウィンドウにケティ―はペンを走らせた。
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