&23 沢山のモブ候補を発見?
リバリエで昼食を採り終えると、市場で簡単に買い物をしようとなった。ここでは、生活するに当たっての一式を
「果実に魚、家具……あれは椅子なのか?」
タクの言う先、単純に木の根を用いた家具のようなものが並んでいた。いや、あんなのに座ろうとしたら、根っこの部分が邪魔でバランスを崩すんじゃ……。
それ以外にも、いまリーネが首に巻いているルロなどの伝統工芸の店や武具店などもある。そうやっていい店がないものかとゆっくり歩いていると、ある店の前で足が止まった。人の出入りが特に多いわけではないが、開けた入り口から少し入ったところのカウンターで、何人かが店員に紙の束のようなものを渡している。その光景が気になり、近くを一緒に歩いていたウミーリルに聞くこととした。
「あの店って何の商売をしているんですか?」
「え? あぁ、あそこは『ファレード』と言いまして、転移
「僕たちの世界で言う郵便局みたいなものかな? でも、配達速度ではこっちの方がダンとつダけど」
「そちらの世界でも同じようなものがあるんですか?」
「同じと言っても僕たちの方は早く届くとして半日ぐらいかな。こっちの世界に魔統があることは
そんな話をしていると、前で話していたリーネとタク、ケティ―がこちらに参加してくる。
「俺たちも魔統が使えたら、念願のファンタジー住人になれたのにな。本当に使えないのか?」
「そうですね……ケティ―の診察所で調べてみれば判断できるのですが。どうですか?」
「そうだねぇ。後日尋ねてくれれば、準備をしておくよ」
「この世界で俺たちだけが使えないなんて、モブ以下判定を食らいそうだ」
「異世界に来たンダから、それなりの体験はしたいよね」
「モブとは何ですか?」
またしても聞いたことない言葉ということで、恒例の質問タイムに入る。
「モブはな、雰囲気作りのためだけに使われる存在のことだ。この世界で例えると、魔統を使える人たちが主人公だとしたら、それ以外の人は人が住んでいますよと見せるだけの存在がそう言えてくる」
「ふむふむ、勉強になります」
研究ノートにまた1単語言葉が加えられていく。ただ、聞いている限りだと、その定義ではこの世界にも部がいないことになる。モブにはなりたくないが、彼らが居なければ物語が成り立たないのも事実。大事な存在なんだよ?
学んだことを書き終えたリーネは何か考える姿勢をとる。そして、言うことが決まった彼女の言うことに僕たちが信じられないと思うのだった。
「そうなると、私たちの世界では半数近くの方が当てはまってしまいますね。この国だと、えっと―――」
どのくらいだったかなと自分の頭の中を探し回っている。
……?
「リーネ。今、半数って言った?」
「はい。この世界にも魔統が使えない方が多く居ます。このことについてはケティ―の方が詳しいのですが」
彼女はそう言うと、ケティ―にバトンパスするという目配せをしている。それに対応するように、しょうがないと反応する。しかし、すぐに話し始めるには場所が悪いということで、今日の夜、食事を終えてから話をすることとなった。
また持ち越しですか。この世界って、焦らせることが好きなのかなと思い始めてしまう。
しかし、時間的にもケティ―は午後の診察をしなければいけないということで、彼女とはここで別れることになった。みんな、仕事があるから仕方がないことだよね。
よって、僕たちももう少し探索をした後、別の地下出入り口から城に戻ることとした。ケティ―と別れてから約30分ぐらいだろうかの探索だったはずだが、タクと僕の腕は物でいっぱいになっていた。
全部がリーネの買い物である。
昔、父さんから聞いたことだが、女性の買い物は心した方が良いと。
……この瞬間、よくわかった。
陸上部で筋トレのためにダンベルなどを使った練習をしていたが、違う意味で厳しい。量が……。タクに至っては、首元まで荷物が達していた。他の護衛の人はと思うが、彼らも同様である。
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