&3 登頂直前とつなぎ少女
「はぁ、はぁ……。や、やっと俺たちは来たのか」
「やっとというか。まぁ、1時間半くらいの登山ダったけど」
巧の先ほどの言葉にハルートは、なんとなくの想像をしてしまう。
それはRPGであって、主人公は町3つほど冒険をしてラスボス戦に挑もうとしている。危なくも勝利を修め、家に帰っていく―――。
完全にクソゲー判定なところである。たぶん、主人公とはある農村の民であって、悪役とはそこを統治している領主。主人公は、不当な
「おい、ハル。どうしたんだよ、そんな
「タクがさっき言ったことに合いそうな背景を考えていたンダよ。
「良くはならないのかよ。でも、最後はハッピーエンドなんだろ?」
「それには間違えない」
「そんならいいんじゃね。それよりも、さっさと登り切っちゃおうぜ。飲み物がそろそろ限界だし、椅子に早く座りたいしさ」
巧はこちらも限界が近づいている足を、一歩一歩と目の前の階段に上げていく。その歩みは既に手すりがないと危なっかしいものではあったが。ハルートは巧の後を追いかけるように登って行った。
そしていよいよ、山頂に来たのであった。登った先はその神社の
「そうだよ! こんな瞬間を待っていたんだよ。すべてをやり切った後の
だらしなくベンチに座って、いかにもこれは俺の場所だと態度で言っているように見える。
「ほら、ジャマになるよ。それに、誰が座っていいって言った?」
「はぁ?」
なにそれと言わんばかりに、
(え、参拝しろっていうことか? いや、そこまで細かく言うやつではないし。じゃあ、
彼は、横に立ってずっとこちらに
では、彼が望んでいることは何なのか?
巧が再思考に入ろうとネタを探していると、先程、ハルートが言った言葉を思い出した。
《誰が座っていいって言った?》
言った本人は、荷物を置くことはせず、さらに座ることもしない。
まさか―――。
巧は嘘だよねというような顔をして尋ねた。
「ここって、ゴールだよな?」
「やっと気づいたか。うん―――」
ハルートから〈うん〉と聞こえた時点で、巧は良かったと緊張を解いたのだった。しかし。
「この先、もうちょっと行ったところがゴール。木でできた休憩スペースで、景色も良いンダよ!」
終わった。すべてが暑さの中に消えていくんだ。
「もう限界だ! ほら見てよ。足がピクんピクんてお助け信号を上げてる。ここで休憩してもいいんじゃないか?」
「まぁ、ここでもいいと言えばそうダけど……結局はこの先の駐車場を目指すンダよ。さっき言ったところは途中にあって、それ以外にトイレと自販機がある。たしか、ペットボトルが空になりそうって言っていたのは誰ダったっけ?」
「くっ!!! そんなうまい話が―――」
「あるンダよな~。ですよね?」
ハルートはベンチがある空間の横にあったお守りなどを売っているところの人に尋ねる。巧からもその人を見ることができ、そして、彼が
「じゃあ、行きますか」
「くそー! こうなったらヤケだ。行ってやろうじゃないか!」
ここが巧のいいところだ。勢いよく立った彼は、隣に投げ捨てていたザックを肩に掛け、準備を終える。
「よし、行くか」
「行こうか~」
2人はまず、自販機を目指してそこを出発しようとした。ハルートが巧から行き先に向き直り、歩き出そうとする。顔を上げた瞬間、彼はしまったと思った。
「っ!!!」
目の前には人が立っており、先程到着した人らしい少女だった。
歩き出そうとしていた彼は少女とぶつかってしまい、その勢いで彼女が倒れてしまう。
「ダ、大丈夫ですか?」
ハルートは直ぐに彼女へ申し訳というように手を伸ばす。そんな時、彼は彼女の服装に目がついた。
(あれ? どうしてつなぎ?)
彼女の服装に
そんな彼女の一部始終にハルートが気づくとともに、後ろにいた
「ばーか! レディーをガン見するとかありえないだろ。恥ずかしがっているじゃないか」
「いや、彼女の服装が―――」
「そんなこと関係あるか。どういう理由だとしても、自分の恋人以外の女性を見続けるのはマナー的にヤバいだろ」
巧が久しぶりにまともなことを言った。先程までの行動がうそのようである。
ハルートは彼の注意に
「さっきはすまなかった。そのままダとあれだから……立てるかな?」
少女は
「僕は
「俺は
2人は短くだが自己紹介をする。それは、少女の警戒心は依然とあるため、まずは自己紹介から始めようというところだ。そんな考えの彼らに、受け入れたわけではないが、彼女は首をかしげてしまう。
その反応を返された2人は彼女を背にして
〔おい、また変なことをしたんじゃないのか? ちなみに俺は何もしていない〕
〔僕もダよ。
そんな話をしていると、次第に
完全に範囲から外された少女は、どうしたものかと声を出そうとしていた。
「@*"#」
彼女の声は彼らの言い合いの前には響くことがない。
今度こそ無視された彼女は、先程の何倍かの声でもう一度言う。
「@*"#▽$β#▽&\☆!!!」
彼らは振り向いた。
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