&4 話すことと反応は大変で
自分たちの間だけでしょうがない話を進めていたこともあり、少女の大声になってやっと反応をした。2人は彼女の前に整列し、彼女からの指示を待つようにピシッとする。
そして、そんな彼らを見て彼女は声のボリュームを落とすことなく話し続ける。
「θ□△γ℃▽&※♭=!」
「「……え?」」
2人は彼女の
言い合っていた時に話し掛けられた言葉はしっかりと聞こえていたわけではなかったため、今初めて彼女の話す言葉を聞いたのである。内容をどうにか理解しようと知識を
巧は、彼の横にいるハーフで海外経験もあるハルートなら知っているのではないかと思い、小さく呟いてみる。
「もしかしてというようりか……外国語だよな? 俺が知っている限り、さっきのような日本語を聞いたことないぞ。もしかしたらテレビでたまにやっている『難しい方言』の一種という線もあるが、それにしては違和感しかない」
「確かに方言にしては、ちょっと違うような気がするね。でも僕が知っている限り、アメリカ英語で無いことも確かだよ。さっきのような言葉を聞いたことがないよ」
「そうか。……っということはなんだが、これって俺たち、半分以上積んでいる状態だと思われるんだが。どうよ相棒ー」
「このまま返事をしないというわけにはいかないし。難しいとことだよね」
彼女を再度見てみると、ちょっと怒ったような顔をしている。そして、そんな彼女を見て巧とハルートは『あっ、かわいい』と思ってしまう。
巧が思うに、最初に見たときにもそうだったが、この少女はすごく表情というよりか感情が豊かで、それが顔にとても表れる。なので、今も怒った顔ではあったが元々の可愛さプラスで得点は随分高くなっていた。
そんな可愛さを眺めることはとても眼福の域ではあったのだが、いつまでも観ているわけにはいかなく、対策をどうにか考える。
「俺さ、今書くものを持っているし、絵を描いて話すとかどうよ?」
「タクってそンなに絵を描くことが上手かったっけ? この前美術でデッサンやったよね。何点だった?」
「58点」
………………。
「なんだよ。何か文句があるのか?」
「上手いかどうかで言ったら、どっちでもない。ビミョー過ぎてどう反応したらいいか。彼女の件があるンダから問題を増やさないでくれる?」
「お前が聞いたんだろ!」
「♨Ⓦ!」
また言い合いそうにあっていたのが分かったのか、彼女は声を上げる。
ここまで来たら、もう
「もう普通にダけど、首を傾げるしかない」
「最初にあの子がやったみたいにか。なんか、会話にならないような気がするが」
「そンなことはもう関係ないよ。今はすぐに、何かしらの反応をしないといけないから。もしかしたら、それを見てあの子から何かしらの行動を取ってくれるかもしれないし」
「
彼らは、彼女に向き直り、ピシッと立つ。
待たされていた彼女は何事かというようにビックリした行動と表情をするが、彼らがこちらに身を正したということに何かしらの返答があるのだろうと心が構える。
周りが風によって葉が擦れ合う音に包まれる。
少女の額から一粒の汗が流れる。
そして、彼らは腕と首を動かし始め―――。
「……!」
少女は日本語で言うなら『ズッコケた』がとても似合うように、姿勢を崩した。
(これって芸なのか?)
(面白い子ダな~)
口を開くことが
「Хп!」
彼女はまた声を荒らげる。しかし、彼らには分からず返しようもないので、続けるように腕を組んで首を傾げる。今度はこけることはなくとも
その後も3、4回ぐらい彼らに向かって言葉が飛んでは来るが、2人はバリエーションよく反応するわけでもなく、一定の『首を傾げる』に
そして、いよいよ彼女は疲れたようで、胸に左手を当てて荒れた呼吸を落ち着かせようとする。
「あんなに声を大きくしていればしょうがないか」
「なンか、さっきの言葉までになるとかわいそうになってきたよ」
「でも、俺たち自体ああいう状態なんだからしょうがないだろ」
しかし、このままではどうしようもなく、どちらにとっても価値がない。次の少女の行動によっては何かしらの違う行動をとってみようとハルートは小さく巧へ合図を送る。
呼吸を整えていた彼女は、整え終えるまでに数十秒。そして、両手を腰に当ててため息を大きく1回した。
『あの子もこの状況に終わりを見たんだな』
『まあ、あんなに話して投げ返されるものが傾げるじゃあね』
そして、彼らにはどうにか聞こえるかのような小声でつぶやき始める。それには
巧とハルートとしては何について解決したのかが分からないので、次の行動を見守ることに徹する。
少女は左手をちょっと前に出すと、体が安定するように足を広げ、目をつぶる。
ちょっと前に出された手が何を意味するか眺めていると、小さくだが光り始める。その後、彼女は先程の会話とはなんとなく違う話し方を始めると、光の強さが増す。
「……おい、ハルート。あの子の手がいきなり光り出しているのを俺は見ているんだが、お前には見えるか?」
自分の見ている状況を疑う巧。
「うん、光っているね」
巧が言うことに間違えがなく、ハルートは答える。
彼らが見ている限り、何を使うこともなく手が光っているのである。彼女を中心として異様な雰囲気が巧とハルートを包み始め、圧倒されていく。先程まで3人の会話を気にせずしていたお守り売り場の人もそれには驚きを隠せないようで、目を離せなくなっている。
そして、一定のことを言い終わったのか、彼女の口が閉じられると手の光も小さくなる。そして、何もなかったかのように光は消えた。
「今のって―――」
目の前で起こっていたことが理解できず、巧は自然と彼女に質問をしようと声を出す。しかし、それとともに少女は前に倒れ始めてしまう。
すぐさま反応したハルートは彼女の近づいて、体を支える。顔を覗くと顔色が悪くなって、汗もたくさん
「お、おい! 大丈夫かよ」
「顔色が悪い。体の力も抜けているし、体調がヤバそうダよ」
「お姉さん、この子が休ませる場所ってある?」
巧は売り場の女性に尋ねると、「分かりました。準備してきます」といって、すぐさま動き始める。
「タク、君にも水を買ってきてほしいンダが」
「わかった!」
ハルートが巧に指示をすることで、どうにか
「……やっと話せる」
巧は走り出そうとしていたことを止める。
彼女が話す言葉はこれまでとは違い、巧とハルートが理解できる日本語になっていた。
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