第3話

「いやはや、正義殿が協力的になってくれて何よりだ」

「もちろんです、オルグさん。誰かが助けを求めているなら当たり前のことですよ」

「当たり前か。素晴らしい精神の持ち主だな、本当に」

 感心したようにオルグは正義を見る。しかし、学からしてみるとさっきまで騒いでいた厄介な正義をどうにか懐柔しようとしているようにも見えた。

 そんなことを学が考えている間に王宮の部屋の一つに招待された。

「さて、まずは皆さんにはどんなスキルがあるかを確認してもらおうと思います」

「スキル・・・ですか?えっと、たしか特殊な力みたいなものですか?」

「その通りです。姫花さん。もっともそれは皆さんはここに来た時点で感じているかもしれませんが」

「はい!なんだが力がみなぎっていますよ!」

 オルグは姫花に向けて言ったようだが、正義は何か今まで以上にみなぎってくるものを感じているようで自分に言ったように聞こえているようだ。

 しかし、学は思った。というよりはそんな感じがしてはいないようだ。

(・・・あんまり俺は前と変わらないみたいだな。もしかして身体強化のようなものじゃないのかな。だとすると少し不便かな。俺らしいといえば俺らしいけど)

 学はもともとあんまり運動神経のいいほうではないので、前線で剣を振り回すよりは正直後衛職が似合ってると思った。

「さあ、皆さん着きましたよ」

 そんなことを学が考えていると、目的の場所に着いたようだ。

「ここは?」

「スキルロールを保管している場所です」

「スキルロール?」

「ええ、この世界では自分の持っているスキルを確認するためにスキルロールというものを使うのです」

 そういってオルグは扉を開ける。そこには大量の白紙の紙が積まれていた。

 その1枚をオルグがつかみ、持っていたナイフで自分の指を少し切る。

 ちなみにナイフは魔法を使うときによく使うものなので持っているそうだ。

 そして、指から出た血を一滴その紙に落とす。

 すると、


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 オルグ・マジリア 男

 スキル:全魔法適性・全魔法耐性

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 という言葉が浮かんできたのだ。

「おお!すごいですね!!」

「これがスキルロールといいます。これで自分自身が持っているスキルを確認できます」

「・・・」

「どうされましたか、学さん」

「あーいや、純粋にすごいなと。元々文字が浮き出るようになっているならともかく人それぞれ違うっていうのは。ただの何の変哲もない紙っぽく見えるんですが」

 学は浮き出てきたスキルよりもスキルロールの方が気になるようだった。

「うーん・・・やっぱり魔力がこれに影響してくるのか・・・元の世界で作るなら血液・・・遺伝子構造で判断して浮き出るようにすればいいのか・・・」

 学は顎に手をあてブツブツと紙を見ている。

 その様子を見た正義と姫花は相変わらずだという表情で見つめていた。

 元の世界でも、何か新しいものを見るといつものこのように集中していて周りが少し見えなくなるのだ。

 そんな様子を少し苦笑いしながら、オルグは続けた。

「興味を持ってもらえたなら何よりです。では本題に入りましょうか。このようにスキルは様々なものがあり、そのスキルによってこの世界では人生が左右されます。私のスキルは2つありまして、1つ目が魔力の適性にかかわらず、魔法を全て発動できるもの、2つ目が魔法によるダメージを軽減できるものなので、このように王国直属魔導士長を務めさせていただいております」

「なるほど・・・」

「では、あなた様方のスキルを確認しましょう。学様もよろしいですか」

「・・・ん、ああ。いいですよ」

「では、皆さん。血をスキルロールに」

「「「はい」」」

 3人はスキルロールに血をたらす。やはり自分で指を少し切るのにはためらいがあったが、たらした後にすぐにオルグが魔法で治療する。

 そして、3人のスキルロールから少しずつ文字が浮き出てくる。

「おお」

「わ」

(本当に3人ともバラバラだ)

 学は3枚の紙がすべて違う文字を映し出すのに興味深々だった。

 そして、少し時間がたつと3人のスキルロールが完成した。


 オルグがまず、手に取ったのは正義のスキルロール。

「正義様は・・・おお!!なんと!!!」

「え!何ですか!オルグさん!!」

 オルグの反応から正義は自分のスキルがいいものだと気づいたようだ。

「やはり勇者召喚は成功だ!これをみてください!!」

 そう言ってオルグは学たちに正義のスキルロールを見せる。

 そこに書いてあったのは以下の通りだった。


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 天月正義 男

 スキル:勇者・異世界から選ばれたもの

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「おおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 正義は喜びのあまり咆哮している。

 やはり目を引くのは勇者。

「今までこんなスキルはありませんでした。正義様、詳細なスキルの内容を知りたいのでスキルの部分に触れてもらえますか?」

「こうですか?」

 正義がスキルロールのスキルに触れる。すると、先ほどまではスキルの下に何もなかったのだが文字がゆっくりと浮かび上がる。


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 天月正義 男

 スキル:勇者・異世界から選ばれたもの


 勇者・・・勇者認定されたもの。以下のスキルを持つ。

 ・身体強化

 ・物理耐性

 ・全魔法適性

 ・全魔法耐性

 ・聖剣召喚    


 異世界から選ばれたもの・・・異世界から召喚されたものが持つ。以下のスキルを持つ。

 ・全能力向上

 ・成長促進

 ・言語理解

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 オルグはきらきらと生き生きとした目で正義を見ている。

「さすが異世界の方!これで私たちも希望が出てきた!」

「いや~、本当になぜか力が湧いてきたので何かあると思っていたんですよ」

 とても嬉しそうに頭を掻く正義。

 ちなみにスキルはそもそも基本的に2つ。だが、正義のようにスキルの中にスキルが5つも入っているスキルは今までにないらしい。

 2つに増やすだけでもこの世界の住人にとってはかなりの鍛錬が必要なのだ。

 要するにチート中のチートだ。

「では、次は姫花様ですね」

「は、はい。これです」

 そういって姫花はおそるおそるオルグに自分のスキルロールを渡す。


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 白百合姫花 女

 スキル:聖女・異世界から選ばれたもの


 聖女・・・聖女認定されたもの。以下のスキルを持つ。

 ・治癒魔法適性

 ・光魔法適性

 ・身体強化

 ・魔力回復速度上昇

 ・状態異常耐性

 ・聖女の加護


 異世界から選ばれたもの・・・異世界から召喚されたものが持つ。以下のスキルを持つ。

 ・全能力向上

 ・成長促進

 ・言語理解


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 こちらも明らかにチートだった。

「姫花様も素晴らしい!!やはり姫花様も選ばれたものだったのですね!!治癒魔法に適性があるものは少なくはありませんが、それに加え、光魔法に魔力回復速度上昇、状態異常耐性とは・・・正義様同様に見たことのないスキルもありますね。戦闘向きではないですが、後衛としては万能ですね。本当に名の通り聖女が降臨なされたようですな」

 オルグの言う通り勇者のように戦闘向きではないが、スキルの量では正義を上回っている。

 ちなみに状態異常耐性とは、毒や麻痺などの効果をある程度なら防ぐことのできるスキルだ。

 即死毒でも、弱い毒程度に変えることができるらしい。

「よかった・・・これなら足手まといにならない・・・」

「さすがだな!やはり姫花は凡人とは釣り合わない!」

 そんな話を聞いたからなのかホッとする姫花とあきらかに学の方見て姫花を褒めながら、学のことを凡人と言いたげな視線でみる正義。

(本当に扱いがひどいな。まあ、わかっちゃいたけどそれよりも・・・)

 そんな目にも慣れていた学は自分のスキルロールを見る。

 そして、少し冷や汗をかいていた。

「さあ、では次は学様ですね。さぞ、素晴らしいスキルがあるのでしょう」

「あ、オルグさん」

「もったいぶらないでください。拝見させてもらいますね!」

 オルグは前の二人のせいもあってか、早く見たい衝動からなのか学からスキルロールを奪うように取った。

「さて、学様はどんなスキルをお持ち・・・え?」

「どうしたんです・・・え?」

「あの?オルグさ・・・え・・・」

 そして、オルグは学のスキルロールを見た瞬間固まってしまった。

 そんなオルグを見た正義と姫花も固まってしまった。

 それを見た学は頭を抱える。

(あーやっぱりそういうことなのか)

 なぜそんな反応なのか、理由はもちろん、学のスキルロール。

 そこには・・・


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 北野学 男

 スキル:鑑定技師・召喚に巻き込まれたもの

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 と表示されていた。

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