「二号、待機」

れんらくしなきゃ、はやく!


二号は団地の六号棟の部屋でひとり待機していた。かまいたちは全員三号棟の盗聴器を仕掛けた部屋の方で待機している。状況が切羽詰まってきているからだ。

パソコンから目を離して腕の無線機を立ち上げる。震える指。今の自分は完全に伝書鳩である。

確保した男の仲間だけでなく、我々の狙うヌエもここに別途ここに向かっているという情報がリーダーから入ってきたのだ。そして確保した男の義眼から爆弾の作り方のデータが入ったチップが発見されたのだ。


恐らく彼らは爆弾テロを行おうとしている。


早くかまいたちに伝えなくては。

しかし今日は天気も悪いせいか電波が悪い。この無線機は便利で丈夫ではあるが少し古い型なのだ、意外とデリケートで困る。なかなか今日は繋がらない。妨害を疑ったが、もう一度やってみようと思い窓を開けてベランダに出ようとした。

その瞬間、不意に背後から何者かに羽交い締めにされた。

弾みで伊達メガネが床に落ちる音がして、心臓が止まりかける。

しかし抵抗するのは相当危険だ。

背中から自分を締め付けてくるその何者かの手がバタフライナイフを持っているのがわかったから。体の感触からして恐らく相手は女。

「………通信兵だな」

そっと耳元で囁かれる。体が強張る。

もしかしてこれがあのヌエなのだろうか。

「お前は人質にする、今すぐ殺しはしないが下手な事をすればわかっているな」

全く感情のない声に背筋が凍る。

しかし焦れば全て水の泡。若造の新人である二号だって最低限の訓練は受けている、それくらい普通にわかる。

護身術は習った。二号は特に体が小さいから、と言われて徹底的に特訓させられた。

こういう時はどれが一番有効か、頭の中で素早く計算する。

頭突き?違う、足を踏むんだ。そう教えられた。思い出した、狙うのは足だ。

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