「きみのために。」

急ぎで行かなくてはならない。

卒業生に隠密に連絡を取り、頭を下げて車を出して貰える事になった。

学校で待機している他の隊員には「私だけ急に呼び出しがあった。皆はここで連絡を待つように」とうそをついた。

情報を盗み見る事などたやすい事だ。

衛生長の特技は嘘八百。

今、あの団地は包囲されている。

つまりそこにヌエがいる。

衛生長は自分の手でリーダーを助けたいのだ。

今の自分にとって、ヌエはライバルなのだから。

そして死ぬとしてもリーダーのためなら怖くない。

車が到着する五分前、衛生長はチャペルにいた。

二階の教室のひとつに作られた簡単な物である。あくまで形だけの物だが衛生長はここが好きだ。

別にクリスチャンではない。

だけれど何故か今、神にお願い事をしたい気分なのであった。

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