「保健室」

宿舎に戻ると二号は衛生長に指のかぶれを見てもらった。

「なんだこれくらい、大した事ないよ。ちゃんと手当出来てるし。もし三日位して治らなくて悪化したらまたおいで。面倒だろうけど極力触らないようにしてね」

衛生長はそう笑いながら、むしろ帰る時に転んで擦りむいた膝を心配してくれた。

「私、子供の頃に足を怪我してそこからばい菌がいっぱい入って大変だったんだって。病院でさ、私死ぬんだ、って思った。いつも遊んでる神社でこけてさ、偶然通りすがった女の子が助けてくれたんだよ」

そう言いながら赤チンを持って来た衛生長の膝小僧には確かに太ももに掛けて大きな傷跡が残っていた。普段はニーハイソックスで隠されているが、今日は暑いからという理由で脱いでいた。

服装の乱れだ。

怒られますよ、と二号が言うと、衛生長は「掃除してる時に汚したから洗って乾かしてるんだよ、って事にしておけばいいんだよ。まあそれでも怒られると思うけどね」とあっけらかんと笑った。

絆創膏と塗り薬を三日分だけ渡され、二号は保健室を後にした。

衛生長はこういう時はとても頼りになるし話していると安心する。でも年上のはずなのにたまに「妹みたいだなあ」と感じる事がある。そんなこと、誰にも言えないのだけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る