「天狗の統領」
この傭兵部隊の花形でありトップ、全ての中心である「天狗」は戦闘専門の分隊となる。
地上戦を主とした部隊で約十五名からなる。
天狗のリーダーこそがこの傭兵部隊全体の実質的な司令塔である。
敵の背後から素早く忍び寄り、慣れた手つきで喉笛にナイフを刺す。ガスマスクに血糊が掛かるがそんな事は気にしていられない。
スピードがなければこちらが死ぬ。
天狗部隊の死体処理は手早く的確だ。これはチームワークがなくては出来ない仕事。
本来殺戮は余程の事情がなければやらない。
基本は法に乗っ取り「対象は生かして捕獲」それがポリシーだ。
しかし最悪こちらの命が危ぶまれる時には隠密行動として殺戮も容認されている。
無論殺戮の機会などそうある事ではないのだが。
全ての事後処理は常に完璧に淡々と行われる。
結果はどうであれ常に死という緊張感を持たなくては、人のために戦う事は出来ない。
リーダーは本来なら前線に出なくとも良い立場だ。
それなのに何かと理由をつけて戦闘に参加する事が多い。本部で指示だけ出しているのはどうしても性に合わない。現場を見ないとわからないことだってごまんとあるのだから。
そして私は何よりも血の匂いが好きだ。
これは誰にも言えない。
自分は幼い頃からずっとこの汚い感情を胸にしまいこんでいる。
神のような顔をして全ての隊員の頂点に君臨しているのだ。
何よりも真っ赤な血を愛す。
私は私の血を誰かに与えたい。
それが愛だと思っている。そう教えられた。非情にも私の前から突如去って行った元恋人に。だから現場から逃れるわけにはいかない。望んでここにいる。
それだけで立っているのだ、このガレキの城の上に。たったひとつの言葉のためだけに。
その言葉のために戦う。
左手首に装着した無線機に向かって囁く。
「全員配置につけ。敵は恐らく我々を『殺る』つもりだ。その場合はどうするべきか、わかっているな?散れ」
戦闘では冷徹に冷静にあらなくてはいけない。
我々は独立した部隊組織であり、人を守るためにある。
爆発物の処理がある。
しかし今日は処理班を呼んでいる暇はなく、無線で遠隔操作をしてもらう事になっている。
隊員の一人がタブレットで爆発物の映像を処理班に送る。
「赤」
処理班は無線の向こう側でそう断言した。 リーダーは躊躇いなく赤い紐を切った。いや、一瞬だけ手が震えた。何故かはわからない。
私はこんな時に手が震えるような弱さがある。しかし十八にして全てを掌握している。それは誇るべきだ。
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