numb

タチバナエレキ

「始まり」

「我が神よ、我らの罪を赦し、我らを地獄の業火から救いたまえ。全ての魂、ことに憐れみを最も必要とする魂をを天国に導き給え。アーメン。 =ファティマの祈り=」


あのセーラー服を着た少女達は隠された国防組織です。

表向きは全寮制、カトリック系の少数精鋭の女子高。

その実態は「傭兵訓練所」

陰ではそう呼ばれている。決して表に出せない。ある意味忍者のような存在であり、この国の闇の軍隊とも言える。全員がセーラー服を着て背中に武器を背負っている。

これは国から託されている仕事です。気になるなら幾らでも調べて頂いて構わない。

私はこの組織の「代表」だ。ただの形式的な頭であり、顧問であり、戦闘の前線には全く参加していない。

表向きの名前は学校に於ける「校長」や「理事長」に相当します。

私とは別にひとりの少女がこの傭兵部隊の実質的なトップとして活躍している。彼女はとても有能です。

「生徒会長」、そうですね、いうなれば彼女がそれにあたるのでしょう。全ての隊員にリーダーと呼ばれている。

昨年あった東京タワーを狙ったテロを阻止したのもこの傭兵部隊です。

あれは許されるなら一本の映画にしたい位ドラマティックでした。

高いところからふわっと飛び降り、的確に敵を倒す。彼女達は皆、腕時計型の無線機で密に連携を取りながら動く。

その姿はとても身軽で凛々しい。強く美しく、そして儚い。

この少女傭兵部隊はいつでも私の指示ひとつでか弱き人々を守るために動くのです。

何故全員少女なのか?

それは敵の隙をつくからです。

少女というのは人を油断させる。特に平和ボケした日本ではそうです。

女である、子供であるというだけで舐めて掛かる人が多い。制服をただの記号としてしか見ていない。その内側の本質を何一つ見ようとしないでしょう。

その隙をついて彼女達は自由に戦う。

海外では子供が自分の意思に反して武器を持たされる事があるというが、彼女達は違う。自分の意思で傭兵になるのです。

皆、弱き人を守りたいと言う。そのために強くなりたいと。

私も悪ではない、義務教育を終えた少女だけテストを受けさせる。住む場所も食事もきちんと与え、規律ある生活をさせる。

大体二十歳前後で卒業し、他の形で働く事を選ぶ。その前に辞める者もいるが引き止めない。本人の意志を出来うる限り尊重している。ここにいる間は戦闘と訓練の合間に高等教育に匹敵するレベルの勉強もさせている。表向きは学校なのだから当然のことでしょう。幾ら身体能力が高くてもそれを生かせるだけの知識や頭脳が無くては無意味なのだから。

繰り返すようだがこの傭兵部隊に関して調べられて困ることは何もない。 表向きには存在しない、というだけで、きちんと国に認められた部隊なのだから。

少女達は日本のとある「深い森」の奥に居を構え生活している。

十年程前、森の奥底にあった小さな村が廃村となった。今はそこで学校として使用されていた建物を再利用させて貰っています。その前はもっと不便な田舎にある自衛隊の元宿舎を使わせて貰っていた。でも短い期間です。秘密保持のために移転したのです。自衛隊、というだけでアレルギーを起こす人もいれば逆に崇拝する人もいる。だから自衛隊の施設は不向きなのです。外部の目が気になる。彼女達はひっそりと暮らす方が向いている。

彼女達は戦場を颯爽と走り抜ける。狐のように。風のように。愛のために。

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