アルマと魔法と器

 「魔法は使えないのか??」


赤色のロングワンピースを着たフォンがアルマに思っていた疑問をぶつけた。


もちろん今は夢の中である。最近は毎日寝ると夢の中に2人が出てきて会話をしている。


「魔法ですか??使えませんよ。父さんも母さんも魔法は全く使えません。急にどうしたのですか??」


「いや、今日アルマを見ていたが竃の火を灯す時に魔法を使ってなくてのぉ。気になったのじゃ」


「あぁ〜それはですねぇ••••••」


以前トルムに魔法を使いたいと駄々を捏ねて魔法の才能がどうか試したことがあったのだが詠唱してみたが結果、指先から線香花火がバチッと一瞬散って終わってしまった。


結果、アルマは魔法を使えないんだと判断したと教えてくれた。


「何回も何回も試したんですけどね、結局ダメでした。なので諦めたんですよ。」


触れられたくない思い出に 肩を落とすとフォンは不敵な笑みを浮かべてアルマに近寄った。


「なるほどのぉ〜どれどれ〜アルマがどれくらい小さい器なのかみてみようかのぉ〜」


「小さい器とか失礼な!」


 アルマが頰を膨らませるとフォンがアルマの両手を握り瞑想し魔力の痕跡を探す。


 ???


 何か異変に気付く••••••


 フォンはルタを呼びつけルタも手を取りアルマの魔力の痕跡を探る。


「ん〜どこかおかしいですかぁ??私にはわかりませんけど••••••」


「お主ホントに••••••まぁよい、ルタよもう一度よく見てみよ。あるはずのものが無かろう??」


「ん〜••••••あ、あれ??ちょ、ちょっと!!」


「魔力の痕跡がない!!」


「それもそうなのじゃが••••••」


「〝器〝が無い!?」


「そうじゃ!!!それじゃ!!」


驚愕するルタと少し満足気に語ったフォンは目の前にいるアルマという人間の構造での欠落部分に気づきアルマへ振り向く。


「まぁ、魔法が使えないんだから〝器〝ですか?は必要ないんじゃないですか??」


アルマはさも当然のように苦笑いしながら黒髪を撫でている。アルマは自分の体が欠陥品という事にどうやら気付いていないようだ。


「あ、あのねぇ〜••••••まぁよい、説明するとしようか。この世界では大気中に漂っている〝魔素〝を体の中で精製して魔力として魔力を使い魔法を発動させているのじゃ」


 「魔力とはそのままにしておくと霧のように霧散してまた元の魔素に戻ってしまう。だから〝器〝に魔力を溜めて置き、いつでも使えるようにしている。」


「じゃがその〝器〝がアルマにはないという事じゃ。」


フォンの魔力についての講義は今のアルマには難しいらしく顔を赤くして悩んでいるがまだ解決できていない。


「まぁよい。少し調べたい事もあるしそろそろお開きとするかのぉ」


フォンが講義終了を告げると夢はゆっくりとフェードアウトしていった。


そして朝が来た••••••


いつも通りアルマは起きて朝から畑仕事をしているとフォンが頭の中から魔法を詠唱しろとアルマにせがみついてきた。


「ん〜、いいですけど無理だと思いますよ。」


結果が見えている行為に落胆するアルマを尻目にフォンは無理に頼み込んで魔法詠唱をしてもらう。


〝ポッ〝


「!!!」


アルマの人差し指からライターの種火ほどの火が上がった。


「うぁっ、点いた!フォン見て見て点いたよ〜」


 魔法が使えた事を初めて歩いた赤子のように喜ぶアルマだがフォンは手を顎に当て何かを考えている。


そしてまた今日もアルマが寝つき夢の中でフォンとルタが集まり、、、


「アルマ。お主は他の人間とは違う人間のようじゃ」


アルマを人間じゃない人間と仮定して、小さく息を吐き頭の中を整理するとフォンは語り始めた。


「昨日、そして魔力を溜めておける〝器〝を小さくも誰もが必ず持っているとも話したのぅ」


 フォンがルタの方を見るとルタは首を縦に振り頷いていた。


 「ではなぜ朝方にフォンが試したようにアルマは魔法を使えたのか?〝器〝を持たない筈のアルマは魔法を使えるはずがない」


 フォンの語る仮説に理解が追いついていないアルマはでフォンの話を聞いている。


 「どの種族も魔素から精製した魔力はそのまま留めておく事ができない。魔力を作ろうにも魔素から精製するのにも時間がかかる。それを補う為に体の中にある器に魔力を溜めておき、溜めた魔力から魔法を使うのじゃ」


「アルマよ、以前詠唱して魔法を使おうとした時は体に変化はあったかの?」


フォンがアルマに問いかけにアルマは腕を後ろ頭に組んで魔法を使おうとした時の事を考える。


「ん〜、詠唱したら体の中から何か抜けるような感じはあったかなぁ。」


「そうか、では今日種火の魔法を使った時はどうじゃ??やはり体の中から抜けるような感覚じゃったか??」


「いや、なんてゆうか、、、体の周りから体の中に入ってくるって感じはかなぁ、、こうスーッと」


 以前と今での違いをアルマの感覚でフォンに話すとフォンは頭の中でアルマから聞いて情報を整理すると全て理解が出来たようでそれ以上は聞いて来なかった。


「これからは妾の推測じゃが••••••」


 フォンはアルマに全てを聴き終えるとアルマとルタに自分が考えた仮説を話し始めた。


「アルマは魔法を発動させる時に必要な分だけ瞬間的に魔力を精製し消費しているのではないかのぉ??

じゃから朝方の魔法が使えたのは魔法を発動するのに必要な魔力をその場で瞬間的に魔素から精製し魔力にしたのではないかと。」


「!!!!」


「ということは••••••ということはですよ••••••それが本当ならアルマが使える魔力量って••••••」


「うむ••••••この世界中の魔素••••••という事になるかのぉ」


 世界中の大気に必ず存在する魔素がアルマの魔力保有量であるーーフォンはそう仮説を結論づけた。


 静けさがアルマの頭の中を支配する。

 少し間を置いたあと、ルタとフォンはアルマを見て大好きだったオモチャが壊れたような残念な顔をした。


 3人しかいない夢の中の世界には項垂れる2人とまだ小さな子供がいる。


 アルマは魔法が使えるようになった事を喜んでいた。だがルタとフォンはこの状況を焦っていた。


「こりゃアルマに魔法の使い方を教えないと将来世界を滅ぼすようになるのぉ」


「そうですね、明日からでも魔法について教えましょう」


使い方を知らなければ世界を滅ぼしかねない••••••そう考えたフォンとルタは魔法の使い方をアルマにきっちり教えようと話し合って夢からフェードアウトしていった。

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勇者と魔王が平民と 天家 楽 @sc1122

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