無題


 また眠れない夜がやってきた。


 暗い部屋の中で、パソコンのディスプレーに照らされたアホ面とキーボードを叩く音だけが響いている。


 何をやっているのだ。


 何をしたんだ。


 キーボードの音に混じって、外の風がうるさい。


 風の音がうるさいから眠れないのだ、と


 誰に聞かせるわけでもない言い訳をふと思いつく。


 何の利益になるかわからない文章を打ち終え、物語が描きたくなった。


 彼の行く旅路には何があるのだろう。とか


 あの少女には人間のどんな姿を見せよう。とか


 いっそ、現実ではなく物語を紡ぎたい。


 何千、何万という笑い話、悲しい話、つまらない話、面白い話、感動する話、びっくりする話、退屈な話、考える話。


 いくらでも作ってやる。


 紡いでやる。


 外の風は本当にうるさいな。


 こんな誰に聞かせるわけでもない人生の言い訳を吹き飛ばしてくれないか。

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