無題

 幼稚園の頃、警察官になりたかった。

 泣いてる人を助けて、悪い人を捕まえるんだと。


 小学生の頃、音楽家になりたかった。

 描く旋律を聴かせて、たくさんの人を楽しませるんだと。


 卒業する頃、小説家になりたかった。

 世界はこんなにも広いと教えてくれた物語を、今度は自分が作るのだと。


 中学生の頃、医者になりたかった。

 たくさんの命に触れて、自分が救われたかった。


 卒業する頃。

 夢なんてなかった。


 高校生の頃、死ぬまで生きたかった。

 何かに追われて、今すぐにでも諦めそうなこの命を終わらせないことで精一杯だった。


 卒業する頃、教師になりたかった。

 足元しか見えていない、そんな人達を導くんだと。


 そして今、迷ってる。


 たくさんの夢とすれ違って、


 たくさんの想いとすれ違って、


 たくさんの人とすれ違って、


 たくさんの自分とすれ違って。


 何一つ成し遂げられなくて中途半端に終わってしまった夢達だ。


 中途半端にさせてたまるか、


 せめてその動機だけでも、連れて生きなければ。


 抗わなくては。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る