第25話

「__体に気をつけろよ」

北澤が吹き出す。

「なぁんだ。さっきから何の事かと思ったら」

うんうん、気をつけます、と言って立ち上がる。

「じゃ、そろそろ行くよ」

「き、北澤! 」


思わず腕を掴んだ。

北澤が振り返る。

目が合った。

「あ・・・、あの、」

 目をそらす。

「その」

 彼は黙って僕を見つめている。


「__僕も海外へ行こうかな」


思わず。

沈黙を破りたいがために、思いもしなかった言葉が出てしまった。

北澤が目を見開く。

「なんだ、そうだったのか。どこ、いつ? 」

「ア、アメリカへ」

 会社で従事しているソフトウェア開発の腕を磨きに。

 英語も、もっと上手くなれば良い所へ転職できるから。

 二、三年くらいは滞在するつもりだ。

 そうだな、来年くらい。


 北澤に質問される度に、すらすらと答えが出る。

 それは口からのでまかせではなく、自分が昔やりたかった事だと__、気付く。

 北澤は紅潮した顔で、そうかぁすごいな、頑張れよ、と僕の肩を叩き、

「じゃあな、連絡するから! 」

 と、笑顔でゲートへ向かって行った。

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