第20話

「金、結構かかるんだろ」

「もちろん。すぐに仕事にはありつけないだろうし。だから真面目に五年間働いてたんじゃないの」

「何か、もったいない気がするな」

「親みたいな事言うんだな」

「・・・・・」

「大手だとか別にどうでもいいよ。踏み台にすぎないんだから、俺にとっては」

「__いつ出発するの」

「十月中旬」

「一ヵ月後かあ・・・」

 その後は、当り障りのない事を話して、店を出た。

 駅で別れる。

「じゃあ、見送りに行くから」

「うん。それと__」

 北澤が僕の肩をつかみ、顔を引き寄せる。

 一瞬、どきりとした。

「後悔、するなよ」

「え」

 どういう意味だと言いかけて、北澤と目が合った。


 強い瞳。

 真剣な顔をしていた。

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