第13話

次の日は、朝からプールへ行った。会員制で子供が入れないせいか、広々としている。ビジター料金を払ってプールサイドへ行くと、北澤は既に泳いでいた。小さい頃水泳を習っていただけあって、クロールのフォームが格好良い。水しぶきがほとんど上がらず、静かに滑るように泳いでいく。なのにとても速いのだ。

僕は隣のレーンに入り、彼の泳ぎをしばらく見てから、壁をけった。七十五メートル泳いで一旦休む。息が切れる。彼のように滑るようにも、長距離も泳げない。

「年とったなあ」


 体は、確実に。

 心も、確実に。


 午後は、半分だるい体を引きずって図書館へ行った。北澤は返却カウンターへ本を返した後、そのままどこかへ行ってしまった。僕は雑誌や新刊図書をぶらぶら見た後、「旅行」の棚へ行った。

 そこに彼もいた。‘ニュージーランド’と書かれた本を数冊手にしている。

「ニュージーランドへ行くのか? 」

と聞くと、

「ああ」

と答える。

 旅行が好きだもんな。


 その日はそのまま、水泳の疲れが取れるまで写真集を見たり、旅行のガイドブックを読んだりして、ゆったりと過ごした。

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