柿ノ木

しばらく帰ってない地元の話。

親戚の家の近くに小さな山があった。

とは言え整備されていたので山というよりはなだらかな丘に少し森がくっついてる、そんな場所で、なんとなく公園のような扱いだった。

故に特に危険な場所とかもなかったから子供達の遊び場になってたんだけど、出入口の辺りにある柿の木の周りは何故か心霊スポットと言われていた。

子供達は暗い時間にそこを通る事は滅多に無かったのもあって余り本気にはしていなかった。

誰かの親が、兄弟が、先輩が、見たことあるらしい。

そういう話を時折聞いたけれど余り現実感はなかった。

しかしその山で遊ぶ子供でその話を知らない者は居なかった。

クラスメイト全員が知っていたレベルだ。

それ程本気にしていなかったとは言え、ボール遊びをする時はその柿の木に当たらないように気を使っている連中もいた。

当てた時は何故か無意識に頭を下げた。


自分は大学になって地元を離れた。

そして東京で就職をして数年経った時だ。

その山をきちんとした公園に整備したら古墳が発掘されて地元では小さなニュースになったという。

親と電話した時にその話を聞いた。

ありがちだけど古墳は柿の木の近くだった。

整備されてから、夏休みの時期になると若者のグループが夜中に花火とかをして騒いでいるという。

親戚の子供に聞くと、公園になってからは幽霊の噂は知らない友達の方が多いという。

それはそれでなんだか不可解な話だなと思う。昔はあんなに皆して怖がってたのに。

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