うつしみ。
大学を出て就職して長い年月が経った。
もう結婚もして子供も産んで産休も明けて、気付けば30代後半だ。
ある日のことだ。毎朝出勤時に駅でよく擦れ違う男性の顔にふと見覚えがあると思った。
最初はそれが誰なのか、なかなか思い出せなかった。
よくよく考えてみたら昔、地元の古い写真館のウィンドウに展示されてた結婚写真。
それに写っていた人だった。
そう、あの新郎だ。
もう15年以上前、私は大学の時にその写真館の目の前にあったパン屋でバイトをしてたのだ。
今はもうその写真屋は潰れてしまった。パン屋も来年には閉めると聞いた。
あの頃は毎日店のウインドウ越しにあの写真を見ながらバイトをしていた。
ちょっと特徴的な顔をしてる、若い新郎新婦の写真。
そう、繰り返すようだけど15年以上前の話なんだ。あの写真をあの写真館で見たのは。
それでとても不思議なのは、あの男の人。
なんであの時から顔が全く変わらないんだろう。
皺ひとつ増えてない。
白髪の1本どころか髪型も全く同じままなんだ。
一体あの人は誰なんだろう。いや、なんなのだろうか。
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