ユーガットメール。


先月仕事が少し立て込んでいた頃の話だ。

なんとか仕事を一段落つけ、昼の2時前にやっと遅い昼食を取りに外に出ようとした時だ。

忙しさでテンパっていてやはり昼飯もろくに食べていない上司から「アメミヤさん、もし外に行くならこの封筒ポストに出して来てくれる?」と頼まれた。

先程別の人を郵便局にお使いに行かせた時についでに頼もうとしたのだがうっかり渡し忘れたそうだ。

急ぎの重要書類ではないというが、出来れば今日中に投函したいとの事。

いつも会社の郵便局関連のお使いに関しては、会社から駅を挟んで反対側にある大きな局を利用する事になっている。


今日、自分は駅前の古いビルにあるナポリタンの店にどうしても行きたかった。

疲れている時にどうしても食べたくなるのだ。

だが、そのビルまでの道にポストがなかった事に気付いた。

ビルに到着してから例の封書を手にして軽く困り果てていると、そのビルの地下2階に郵便局がある事に気が付いた。

ふと見下ろした階段の踊り場に表示板がある。

薄暗い階段を地下2階まで下りて古びたドアを開けると、そこには小さいながらも郵便局があった。


そして急いで昼食を済ませて会社に戻る。

上司は「へえ、あのビルに地下2階とかあるのか。郵便局はいつもあっちの局を使うからなあ」と驚いた様子だった。他の社員や派遣さんもほとんどが知らなかった。「そういえば表示板なら見た事ある・・・かも」と曖昧に言う人もいたが、あのビルの地下2階郵便局に行った事があるのはどうやら今日の自分が初めてのようだった。

数日後、別件でやはりそのビルに行った。

なんとなく気になり、再び地下に行ってみた。

すると何故か地下2階へ続く階段はなくなっていた。

シャッターが下りているとかそういう事ではなく、壁があったのだ。

この下に郵便局あります、という表示板も見当たらなかった。

あの日封書を出した会社からはきちんと上司のところに「届きました」という連絡があったそうだ。

だからこそ瞬時に消えたあのビルの地下二階が不可解で不可思議な話である。

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