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「お、お、まだ食べたい? まだ食べたい?」

 そう言いつつ手を少しずつ上にあげる。猫ちゃんは前足を浮かしてでもお菓子に夢中だ。

 もうちょい、もうちょい・・・。

 ガシッ。

「ふぉぉぉぉぉぉ」

 俺の手が猫ちゃんにホールドされたぁぁ。何これ可愛い。何これフワフワ。なのに力がこもっていて。あ、ああ、尊い無理しんどい。

「かっわいい」

 一生懸命手を抱いて食べている姿マーベラス! こんな可愛い生き物今までに見た事がない。天使、天使、天使!

「あぁ、このまま連れて帰りたい」

 連れて帰らないけど。ってか猫飼えないけど。 

「あ」

 にゃおん。

 でもこんな素敵な時間も終わってしまう。猫ちゃんはお菓子が空だと分かると、サッと身を翻してスタスタと歩いていく。

めっちゃドライ。もう用済みだとばかりに振り返ってもくれない。

「そこもいい」

 猫独特のこのメリハリ。ギャップ。最高かよ。

「ふぅ」

 今日の癒しタイム終了。猫ちゃんが見えなくなるまで見送ってから扉を閉めた。

 あの猫ちゃんは前からこの辺りにいるらしくて、飼い主は誰からは知らないけど、この近辺をよく散歩しているらしい。そして朝一に雨が降った時は、昼頃に店の裏路地を通ることが多い。でもたまにしかないから、今日はラッキー。一目ぼれしてから、こうやって会えるチャンスのある日は必ず勝手口から様子を見ている。

可愛い容姿だから多分色んなところで可愛がられているはずだし、現にこの辺でもみんなあの猫ちゃんにお菓子を与えている。なんでも飼い主さんから許可を貰っているとか何とか。スナックの朱美ママが言っていたけど、本当かどうかは知らない。でもお菓子をあげて言いならあげるに決まっている。だって可愛いんだもん。


俺はその時まだ気づいていなかった。このウハウハで緩み切った顔を見られていることに・・・

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