第69話 貞操の危機が訪れる

 それから数日後。

 今度は、アンソニーが運転する車に押しいれられた。

 行った所は、本当にここはシンガポールなのか?と思えるほどの広大な敷地をもつ屋敷だった。そこは、アンソニーの父であるシンガポールマフィアの『ドン』の居住だった。

 

 案内されるがまま、リビングに入っていった。豪華絢爛な調度品だったが、嫌味のない置き方をしていた。そうそう、目を奪われそうな裸体像もいくつか。


 この間の出来事も含め話をしたいので、との事だった。

 その『ドン』は、とても気さくな感じの人だった。

 その時は、まだマフィアの人間だとは思ってもなかった。なにしろ、父親だと紹介されただけだったからだ。

 話を聞いていくうちに段々と分かってきたことが幾つか。

 アンソニーは博人先生とは従兄弟同士だと。なるほど、天然なところは似てるなと内心思ったものだ。ということは、だ。大学の学長にサメとも従兄弟同士だということになるな。

 1時間ほどの滞在だったけど、疲れた。


 フラットまで送ってもらうことになった。

 車が駐車スペースに入った。

 うん…、駐車ってあったっけ?

 アンソニーは降りたが、私は降りなかった。

 「どうぞ」と言って助手席のドアを開けてくれるアンソニーに対して、「はよ車出さんか」と言ってやると「休憩だ」と言って、強制的に車から追い出し担がれる。そのまま部屋まで連れて行かれた。

 「トモ、重ーい」と言いながら。

 なら、降ろせよっ!


 部屋に連れて行かれた私は、そのまま寝室に連れて行かれた。

 このやろ、なんで私なんだ?

 今までは手を出してきたことはなかっただろう。


 アンソニーは寝室に入って私を降ろそうとしても、私がアンソニーの身体に捕まってて降りないから困ってる。

 さて、どうしてやろう。


 「トモ。実は、日本に居た頃からエッチしたいと思っていた」

 降ろすよ、と言いながら私を担ぎ上げたままベッドに滑り込んだ。

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