第24話 以前と同じように父さんと呼んでくれるかい?
ルビヤ族とリオン族の席の間を、ルビヤ、メアイ、メーイェ、ユリスの順番で歩いていた。牛頭の天使、馬頭、羊頭と、猫頭、鼠頭、ジャッカル頭に、蟻などの虫や植物に渡って、多種多様な天使が座っていた。居住する惑星もまた、多種多様だった。火星、金星に、プレアデス星団とシリウス派からは宇宙連合に属する非好戦的な者たち、二百五十万光年離れた、初代アンデの故郷のアンドロメダ銀河からは、プレアデスの中心太陽、恒星アルシオーネに常駐する、頭部にたくさんの眼のある大使が、大マゼラン星雲からは、暗黒の顔の中に、星の雲の様子が再生されている大銀河平和委員会の委員が、天の川銀河とアンドロメダとマゼランを内包する乙女座超銀河団からも、真紅の髪の中性的な元老院議員が来ていた。
鏡の顔をした女天使はこちらを向いて、歩いているルビヤたちの顔を、次々と鏡に映していった。メーイェが思わず鏡の中を覗いた後は、その顔が気に入ったのか、ずっと、メーイェの顔を保っていた。メーイェ本人が緊張した面持ちだったのに、そのメーイェの顔を盗んだ鏡の天使は笑みを浮かべていた。
すでに着席していたルビヤ族とリオン族の天使たちは、歩いてくるメアイとメーイェの姿を見るために振り返った。花園の子だ、我らの希望の子たちだ、と囁き合った。
歩くたびに近くの席の天使たちが振り返った。新時代の家族たちは一番前の列に並ぶ指定された席に腰をかけた。メアイの席の二つ後ろの席に、メアイと瓜二つの石の彫像が座っていた。
「私たち天使が人の姿に似せているのは、あなたたちが恐怖を感じないようにするためだよ」
ルビヤは小さな声で、自分とユリスの姿のことを、二人の子に説明した。
様々な生物の姿をした天使たちが、最終的に人間という美しい姿の存在を創り出した。だから神々にとっての最高傑作だった。テラでは様々な動物が造られたが、それらは様々な形態の天使の名残だった。天使の似姿として動物が造られ、天使は人間の姿を模倣しようとした。人間に怖れを抱かせないために。人間は形の違うものを恐れた。その恐怖を克服できなかったのは、人間の持つ生存本能だからかもしれなかった。
アンデの立体映像の下に黒い円形の棺桶が置かれていた。アンデの遺体は花に飾られていた。メーイェは空中の生前のアンデと今は動かなくなったアンデの亡き骸を交互に見比べていた。瞼はきれいに閉じられていて、長い睫毛が反り返っていた。
この人があなたたちのおじいちゃんだったのよ……とユリスはメーイェに説明して、手の平で目頭を押さえた。ここからは声を上げてはならないよ。ルビヤは非常に小さな声で囁いた。
「三代目アンデは太陽の海に還られました……」
背中に純白の翼を生やした大天使マイカが、葬式の司会を進行していた。アンデの霊魂は多くの天使によって見送られて昇天した。これからは太陽の海に移動して、見えない世界での天使となるのだった。そこには初代、先代のアンデたちがいるはずだったが、初代、先代のルビヤはいないはずだった。二人のルビヤを筆頭とした多くの天使の亡霊たちは、リラ、ベガの
ルビヤは父アンデと遊んだ、最も古い記憶を思い出していた。メーイェは横を向いて、ルビヤに訊いた。
「ルビヤは、父さんは、本当はどんな姿をしているの?」
「もし、それを知ったとしても、以前と同じように父さんと呼んでくれるかい?」
「うん……」
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