最終話 本番の森の舞台で猫のように

 占い族の村人や世界の住人が、次々とあなたの前を通り過ぎていく。ブザーとブンボローゾヴィッチが笑いながら仲良く歩いていく。子どものプーとドラクロワが走って二人を追い越す。白象に乗ったアヴァロン。金貨占い師マイユをおんぶするアレフオ。アレフオの後には、眠りの騎士団の人形の行進。その中の一人に騎士の格好をしたベーテが混じっている。蟹。幽霊船の幽霊たち。アレフオの友達。突然フィガロは何も言わずにパンをあなたに手渡す。そのことにたいした意味はない。マジョーは逆立ちしながら、ネビアは花の匂いを嗅ぎながら、並んで歩いていく。断食占い師ミィサが赤子を抱きながら、あなたを振り返る。太鼓占い師マレデイク・パダードは、太鼓を叩きながら、ミトレラはバイオリンを弾きながら。二人に囲まれて微笑むメサエス。鼠を追いかけるサミンツァ、黒くなってしまった猫を追いかけるトランプ占い師、転がった卵を追いかける卵占い師エイン・エイエン。額にハート型の模様のある白い猫が消えた後、プーの母親のエリーは、まだこちらを向いていたが、やがて微笑みながら消えていった。

 あなたの前には何も残らない。あなたは寂しく思うだろう。

 本を読むときはいつも孤独で、決して本の中には辿り着けないと思っている。本当は辿り着くことができたのに、本を閉じた瞬間にそれを忘れてしまっていた。本はたった一人で読むものだと思ってしまう。

 人形占い師ベーテの人形工房を思い出してくれ。花占い師のネビアが人形占い師に会いにいく場面だ。そのページまで戻ってくれても構わない。あの中にこんな記述があった。


「何かを持ち上げて、中のものを覗いている者」


 これは魚占い師が、つまりあなたが水瓶の中を覗くような形で、本を読んでいることを意味している。


「その者が持っている物が落ちないように寄り添って手を貸している者」


 これは人形占い師であるベーテが、「何かを持ち上げて、中のものを覗いている者」を作っている途中のベーテ自身を、自分で占って作ったように見える。

 実際にはこの者は、あなたの読んでいた本が、手が滑って落ちたりしないように、あなたに寄り添って下から手で支えていた誰かだった。あなたの守護者。守護天使と言ってもいい。

 この者は、あなたにとって大切なもので、あなたのことをいつも愛していた。あなたと重なり合って存在して、あなたが本を読むのを手助けしてくれていたし、実際にあなたと一緒に本も読んでいた。あなたが産まれてくる前よりずっと前から、あなたの中にいて、あなたが喜んでいるときには、あなたと共に喜び、そしてあなたの孤独を、自分のことのように感じて、いつも悲しんでいた。だからあなたはたった一人で本を読んでいるときも、決して孤独ではなかった。あなたは忘れていただけだった。あなたが死んだときに、初めて思い出すことのできる大切な存在のことを。今、あなたに何かが起こっただろうか? それはあなたの中の大切なものが、あなた自身に気付いてもらえたときに、あなたを通して伝わってくる、あなたの中で歌われた感動と歓喜の歌だ。


 この本を読み終わった後も、たまに本を開いて読み返してくれないか。

 それが本である私にとっての至福の幸せなのだから。

 我々は読まれるために生まれてきた。本であれ、人間であれ。

 血の雨が降ったときに、我々はまとめて占われたのだ。

 神の子プーは、おならの音で名前を消された。その名前はあなたの名前でも良かった。


 そして私はこの本そのものであると述べたが、この本ですらなく、紙に印刷された言葉の総数でもない。言葉はあなたがたの方便であるからだ。私は何者でもなく、何者でもない私にも父は存在していて、その父は、言葉の向こう側にある、すべての魂の源泉になった。あなたがたが言葉と名付けた以前に存在していた父を、この宇宙の意識が創造し、今、あなたは目には見えない本を読むだろう。


 本番の森の舞台で一歩も間違えずに踊り切れば、母を助け出すことができると幼いプーは信じて踊り続けた。もう決して、報われることのない踊りを。だが、決して報われないことではなかった。プーの踊りを完全にマスターした父ブザーが転写された、もう一つの世界の猫男シャザ―は、爆弾が床に隠された処刑用のダンスフロアで、一つの爆弾を踏むこともなく、太陽に帰る踊り子ベリセシアの曲を、最後まで間違えずに踊り切った。二足歩行を始めた猫のように。初めから占いに頼る必要なんかなかった。子どもたちが喜ぶ声と拍手の音が聴こえてきた。ブザーは手を胸に当てお辞儀をし、幕は閉じられた。













 

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