第76話 宇宙警察密偵のアポロネスとエレクトリールの関係?
そういうと、ボーガスの体が突然まばゆい光を放ち、二人は目を守るため手ですかさず顔を覆った。
すると次の瞬間、目の前には先ほどとは全く別人の男がそこにいた。姿形は人ではあるが、腕の部分がきれいな羽、または鱗のようなもので覆われていた。後ろに逆立つきれいな紅の髪、首には赤いマフラー、機動性のある衣装に身を包んだ若者であった。
そんな彼を見て、この星の人間ではない特徴の数々に二人とも少し後ずさりした。
「紹介が遅れた、私の本名はアポロネス・フェニキシア・プレガナード。DG殲滅を目標に結成された宇宙警察の特務諜報員だ。あのようなことを引き起こして反省している。その罪滅ぼしは、DGとの戦いで償おう。ようやく偽りの仮面を外すことができた」
変身し声が若返るアポロニアに二人は目を点にしつつ、協力関係にはあるのだと認識はする。しかし突然の事態に頭が若干追いついていなかった二人はただただアポロニアを見つめていた。
「宇宙人は珍しいか?そうは言いつつ、あの金髪のボディスーツを着込んだ奴も宇宙人であるだろうが。エレクトリール、なぜここに」
「なんだと、エレクトリールのことを知っているのか? 」
アポロニアがエレクトリールのことを口に出し、ハーネイトは冷静に問いかける。彼女についていまだ謎が多く、彼女自身もあまり自身のことについて詳しいことは話してこなかったため、知り合いであるようなそぶりを見せる彼をみてそう尋ねたのであった。
「ああ。あいつと私は同じ軍学校にいた。テコリトル星人とフェニキア星人は協力関係にあってな。仲は良かったが、ある事件を境にあいつは変わってしまった。それで狂ったようにあいつは力を求め、テコリトル星の軍の司令官になったと風の噂で聞いていたが……まさかな」
アポロニアはエレクトリールと顔なじみであり、友人でもあった。互いに切磋琢磨していたのだが、ある日突然次元ルフループが発生し、異世界から来た侵略魔の集団にエレクトリールは友人を奪われ、大切な友を救えなかった。それから彼女はひたすら力を追い求め、親とも別れひたすら上を目指したという。
アポロニアはそれについて以前から悪名高いDGの仕業ではないかと考え、その当時募集していたDG討伐隊に入ることになった。DGがそのような力を求めて活動しているという話をアポロニアは聞いていた。
互いに違う道を進みつつも、こうして別の星で顔を見ることになるとは彼は思ってもいなかったという。
「エレクトリールにそういう過去があったのか。だから好戦的で、相手に容赦しない性格なのか。納得がいった」
「よくあいつを迎え入れたな、面倒な奴だろう」
「……いや、結構素直で、かわいいところもある。DGからあるアイテムを守るために、この星にきて大けがをしていたのを助けただけだ」
ハーネイトはアポロニアの質問に事実を話した。彼の行動にアポロニアは笑顔を見せ、静かにその場で一礼した。
「エレクトリールを助けてくださり、ありがとうございました。私の友人を治して面倒を見ていただいているとは」
「まあ成り行きだからな。そのせいで休暇つぶれて本音はグレたいところだけど」
「本当に変わった人だな」
アポロニアの言葉にやれやれだというジェスチャーを見せながらそう言うハーネイト。彼の姿を見た印象をアポロニアは、少し気が抜けているが優しく、面倒見のいい若者だとみていた。
「すまんな、この男は断れない男でな。いつも仕事を引き受けすぎて全部解決している変人だ」
「変人とは心外だな八紋堀」
八紋堀の言葉に少し顔をムッとしながら目を閉じてため息をつく。自分だって本当はスイーツのお店に入り浸って大好物のパンケーキを食べていたい。けれどそうしている場合じゃない。悪いのは邪魔をする存在。そう割り切って、彼はまた元の穏やかな笑顔に戻った。
「さて、これからどうしようか。宇宙にいる連中は白い謎の男の影響で弱っていたDGの大拠点と残りの工場をすべて破壊しているし、本当に最後の正念場だ。戦いたいがどうするか」
「こっちは今から作戦に必要な研究者の確保を先に行わなければならない。アポロネスはどうしようか迷うな。八紋堀、こちらの要請があるまでここに置いといてくれるか」
ハーネイトは八紋堀に頼みを入れる。研究所襲撃は少人数で行うのと、シャムロックの運転するベイリックスの定員のことを鑑みてそう判断したのであった。
「別に構わんが」
「必要な時はウェンドリッドで手紙を送る。そういうことだ。研究者の回収後に来てもらうことにする。それでよいか?」
「異存はない」
「分かった。では私は温泉に入ってから早めに寝よう」
ハーネイトはそう言い牢屋を後にしようとしたそのとき、アポロネスが一言話しかけた。
「それと、ハーネイト。エレクトリールは、DGと繋がっている可能性がある。捜査記録に裏付けるものがある。気を付けて、見張っていてほしい。ハーネイトがあいつのことを見ている限り、悪さはしないはずだが」
「……そうか、ありがとう。気を付けてなアポロネス。体の方に気を付けて、また会おう」
そういい、ハーネイトは城の本棟に戻ると温泉に一人入って考え事にふけっていた。
「白い男か。この戦いで、すべてがわかると、いいな。そうすれば今までのこともすべて受け入れられそうなのに。それに、エレクトリールがDGのメンバーだと?確かにリリエットの視線がかなりエレクトリールに対して嫌な意味で注がれていたのは感じていたが、何かあったのだろうな。事情を早く聞かないと」
熱いお湯を肌で感じながら部屋の天井をハーネイトは見ていた。力の開放により今まで鈍かった感覚が少しだけ鋭くなった。今感じている温度も彼にとっては新鮮なものであった。
「人じゃないものか……ええ、確かに自分の力は人のそれを遥かに超越した何か。それでも、私は人を愛し続ける。この世界も誰かも守り続ける。それが私の存在証明?」
そうして風呂から上がり彼が部屋に戻ると、南雲や風魔たちにまた話をしてあげつつ、ひたすら資料に目を通していた。彼がもっとも今気にしていたのは、フューゲルの女神についての言葉、アポロネスの言っていた白い男の素性、それとエレクトリールに何があったかということである。
その少し前、エレクトリールとリリエットは城の廊下で睨み合っていた。
「よくもまあ、私たちの前に平然と姿を出せるわね」
「そ、それは」
どうも彼女たちは何か因縁があるようであった。そしてリリエットは少し機嫌が悪そうにエレクトリールが行ったことについてとがめていた。
「ふん、貴方が邪魔しなければ、あの霊宝玉を父さんに打ち込んで、暴走させて力を無くすこともできたのに」
「本当にそれで、いいの?実の父親をそうまでして止めようとするなんて」
「いいのよ……それで止められるならね。それに、エレクトリール、なぜあのハーネイトにあのアイテムを預けたの?彼の命が狙われるのよ。正気なの? 」
「私は、あの人のことを信じています。そして今度こそ、私の力でも死なない、強い人だって」
リリエットは、ハーネイトの体内から感じた膨大な霊力の反応を感じて、それがエレクトリールの持っていた霊宝玉の仕業と考え話を切り出した。それに対しエレクトリールはひたすらハーネイトのことを信じていたからそうしたと述べた。今まで短い間だが側で戦いぶりを見て、その頂上的な力に彼女は完全にほれ込んでいた。
「はあ、前に聞いたけどあなた、貴族の生まれで政略結婚の相手をことごとくその電撃で亡き者にしていたじゃない。恐ろしいわ」
「私は、私の力より強い人じゃなければ、いやです。そのせいでずっと一人だった。そこにDGが現れて、誘いに乗ってしまった。だけど今はハーネイトさんがいます。至近距離であの一撃をかわし、電撃をものともせず笑顔でいたあの人に、私は惚れているのです」
そう言いながら思い出して微笑むエレクトリールに対し、リリエットは前に彼女自身が話した内容を思い出し恐怖を抱きつつも、その顔の前に強くは言えない状況であった。
「呆れた、そんなに大切ならばせいぜいしっかり守るのね。私が彼に教えられることはそんなに多くないわ。後は彼自身の潜在能力如何よ。一応この先も同行するけれど、貴女もしっかりなさいよ。そろそろ父さんやあの下衆な魔女、こちらに気づいて襲ってくるわよ」
「わ、わかっています。リリエット」
「もう、なんかあなたを見ていると世話を焼かずにはいられないわね。とにかく、次は大切な人を間違っても殺さないようにね。じゃあ私も、温泉を楽しんでくるからまたね」
「うん、ありがとう、リリエットさん」
そういうとリリエットは階段を下りて温泉のある2階まで向かっていった。この2人はそう、かつての同僚であったという。
「私は、あの人を王様にしたい。そしてずっとそばで、お慕いしたい。優しくて強き王、彼ならなれると信じているから」
エレクトリールは胸の内でそう秘めながらも、初めてハーネイトと出会ったときのことを思い出してうれしそうにしていた。
「うーむ、これは厄介どころじゃない。エレクトリール、お前……、一体何者なんだよ」
一方で、リシェルはトイレに行こうとして、彼女たちの話を偶然聞いていしまったのであった。
「じゃあなぜDGに襲われたのか?仲間なのに?」
彼は心の中で、そう考えながらも彼女が組織内で何か裏切ったのではないだろうかと考えつつ、眠たそうな顔をして廊下を歩いて行った。しかしもやもやする。なぜそこまでして、強引な行動に出たのか、彼にはどうしてもわからなかったのであった。
その後は各自が作戦前に必要な準備を済ませたり、観光を楽しんだりとさらなる戦いの前に自由を満喫していた。そして翌日の早朝、先にメイドたちがベイリックスに乗り込みチェックを行っていた。
「依頼の件、よろしく頼んだぞ」
「了解した。八紋堀」
「必要に応じ兵や物資の支援を行う。いつでも連絡を。早く終わらせて、念願の休暇を楽しもうじゃないか」
「はは、そうですね。では、行ってきます。それと色々お世話になりました」
夜之一の言葉に対し感謝の意を述べつつ彼は深く礼をした。近いうちに作戦を移す。そうハーネイトは彼らに告げるとベイリックスの車内に乗り込んだ。そしてエレクトリールたちも深々と礼をして乗り込んだ。
「武運を祈るぞ、ハーネイト、遊撃隊の皆さん」
こうして、シャムロックの運転するベイリックスにハーネイトやリシェルたちが乗り込み、ミスティストシティに向かうのであった。
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