第75話 八紋堀からの依頼とボーガスの正体
ハーネイトの話に、八紋堀が研究者救出のついでにある依頼を引き受けて欲しいと彼に言った。
「ああ、実は日之国の管轄下にある小さな町で住民たちが失踪しているという連絡が届いてな。ミスティルトの道中にある街だ。何があったか調べてくれるとありがたい。まさかとは言いたいがDGが絡んでいるなんてことが分かれば大問題だ」
「了解した。報告書は使い魔に運ばせる。そういやプロッポーがいないな。ワニム、ウェンドリット」
八紋堀の話を聞き了承し、手持ちの使い魔を確認しつつ、その一匹であるプロッポーの姿を見掛けず気にしていたハーネイトはほかの使い魔たちに確認をとった。
「あいつは事務所を守るってさ」
「確かにあいつは戦闘用だホ。伝達の方はわしらに任せれくれホ」
「確かにそうだな、事務所の方の守りも必要だ。わかった、ありがとう」
プロッポーが事務所にいることを把握し、ひとまずほっとした。花鳥という魔界の生物であるプロッポーは航空戦力としての要であるため、現状いつでも呼べるようにしておかなければならない。そう考えながら策を巡らせていた。
「しかしあまり時間がない。ミスティルトはここから720㎞、ボルナレロの発信機の反応があるガンダスはそれからおよそ90㎞ほど先にある。明日の朝6時過ぎに日之国を発つ。夜之一、色々と世話になった」
「いやいや、ハーネイトがいなければ危なかった。さて、アレクサンドレアル機士国王。しばらくここにいますか? 」
夜之一はハーネイトに深くお礼をし、アレクサンドレアルの方を向く。そして彼もハーネイトと夜之一の顔を見ながら考えていることを述べる。
「そうだな。ハーネイトよ、機士国側の人間は今回同行ができない。ここでさらに情報収集に当たる。それとエージェントの数人と連絡が取れないのだ。ギリアムにファイレン、ロシュー、ヴェルド。特殊諜報隊のメンバーだがもし見つけたら加えてやってくれ。それとカイザルと研究者たちをどの拠点に向かわせればよいか? 」
アレクサンドレアルの言葉にハーネイトは少し悩みつつどこに研究者をまとめておくか考えた。
「ミスティルトでお願いします」
「分かった。アル、至急カイザルのもとへ向かい研究者たちをミスティルトまで護衛してくれ」
「了解しました。ではすぐに向かいます。リシェルよ、お前は遠慮なく思う存分戦え。魔銃士の力、見せつけてやれ。霊界人が何だろうが、撃ち抜いてやれ」
「はい、アル爺さん」
アルの言葉にリシェルは敬礼しながらそう言い、ピシッと姿勢を正す。
「私たちも準備しましょうか」
「そうですね、ではそうしましょう」
ミカエルと風魔はそう言い手持ちの道具などを確認し始めた。日ごろから道具などの確認を怠らないからこそ、彼女らは高い能力を活かせることを理解していた。
「では明日の朝6時半に城門前に集まってほしい」
「了解しました。ハーネイト様」
「ええ、わかったわ。伯爵、町の方見ていかない? 」
「そうだな、んじゃ見てみるかリリー」
ハーネイトの言葉を聞き、伯爵とリリーは早速城を飛び出し城下町の方に出かけて行った。
「さてと、八紋堀。例の男のいる牢屋まで案内してくれ」
「了解した。では向かおう。ついてきてくれ」
ハーネイトと八紋堀は部屋を出て、ボーガスが捕らわれている牢屋のある建物に向かう。そしてボーガスの牢屋の前に来る。
「あんたがあの男か、少し顔つきが変わったか? 」
「それはどうだかな。しかしよくもこの国をめちゃくちゃにしてくれようとしたな? 」
「ああ、そうだな。しかしもうそんなやる気でねえよ」
ボーガスはあの後治療を受け、八紋堀や郷田らに連行されこの牢獄に入っていたのである。
「ふん、口だけなら何とでもだ。お前も宇宙人か何かなのか? 」
「まあな。しかし本当にお宅は強いな」
「別に」
「謙遜はよした方がいいと思うがな。……はあ、俺も好きでDGに入ったわけじゃない」
ボーガスもまた、宇宙警察というDGを追う者の集団に属するものであり、スパイでもあった。各星で悪行を重ねる非道な連中に対抗するため結成されたものであるという。なぜ今回あの事件を起こしたのかについては、存在を怪しまれており調査が困難になるのを恐れてあくまで組織の一員であることを示すために行ったものであると述べた。
それを聞き半信半疑する二人だが、所持していた資料などから否定することができないという判断に至った。
「しかしなあ、他にやり方があっただろうが。DGを駆逐するものとして歓迎はするが、一応反省してもらう。この星にはこの星のルールがあるのでな」
「仕方ない、覚悟はしていたがな」
「とにかくDGにはもう戻れないだろう。どちらにしてもそうはさせないがな」
「どちらにしろある存在のせいでDGの壊滅は目前だ。そしてあなたたちのおかげで奴らの喉笛を搔き切れそうだ」
「しかしそうしても余波がな……」
ハーネイトはDGを倒した後も起こりうる弊害や問題について考えながらため息をついていた。
「何も一人でやらなくてもいいんじゃないのか? 」
「分かってはいるんだけどねえ、体が勝手に動くのさ。ああ、それと例のカードの影響はどうなのだ? 」
「ああ、あれか。もう何ともないが二度と使いたくないね。あれは危険だ。訓練された兵士でも魔獣に意識をすべて奪われるだろう。ましてや一般市民に使われれば、ぞっとするな」
ハーネイトはデモライズカードの後遺症はないかと質問しボーガスはそう言葉を返した。しかし双方、危険なアイテムであることは理解できた。
「ボーガスよ、聞きたいことがあるが、そのカードを受け取った際に、副作用について何か説明とかはあったか?」
「いや、一切なかった」
「ということは、やはりあれを隠して渡していたのか。ハイディーン、何が何でも捕まえて事情を聴きださないと」
「どういうことだ、それは」
疑問に思うボーガスに、ハーネイトは前に戦った戦闘員の話をしてあげた。その話を聞いた彼は顔をすごく青ざめて体を震わせていた。
「爆発して四散だと?それは危険どころの騒ぎじゃない。本当に、ハーネイトは命の恩人だ。感謝する」
「まあ、気にしないでいいよ」
「そ、そうか。はあ、宇宙人が利益のためだけにめちゃくちゃなことをしている。そしてさらに、裏で暗躍している者もいる。霊界人か、ふざけた真似を。そういやあのでかい化け物、よく倒したな。俺の故郷であんなのが出たら倒すのは誰もできなかった」
ボーガスは故郷の星で起きたことを思い出しながら、ハーネイトのような存在がいればよかったなと二人にそう言った。そして窓から彼らがヴァンオーヘインと戦っていたのを見ていたという。
「お主のいたところにも、あのような巨大魔獣が現れるのか」
「そうだ。この星だけじゃないさ、あんな化け物。よかったら、ハーネイト。ぜひとも宇宙警察に迎え入れたいほどだ」
「一体どういう組織なんですかねそれ。こっちもこの星のことで手いっぱいでね。休暇をDGにつぶされて私は怒っている」
ハーネイトは顔に力を入れ早く休みが欲しいと叫びたいところをぐっとこらえていた。そして宇宙警察とはどんな組織で、どこが運営しているのか彼はすごく気になっていた。
「ハハハ、なかなか面白いな。ああ、そうだ。この姿はこの星になじむための偽のものだ。本当の姿を見せてやろう」
ボーガスはそう言うと、静かに目を閉じ力を体に集め始めたのであった。
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