10.30 ジョン・カースター

10.17 晴れ

西の部隊がやられた。

「奴ら」は神出鬼没だ。

どこに現れるか、いつに現れるか、全く予測できない。

今日はこの近くで一匹始末した。

「奴ら」は人じゃない、ってわかってはいるんだけど、やっぱり人型のものを殺すのにはまだ抵抗がある。

殺すって表現が正しいのかわからないけど。


10.18

お偉いさん方からの通達。

「部隊を囲むように塹壕を掘り、戦闘に備えよ」だってさ。

「奴ら」相手に塹壕なんかちっとも役にたちやしないのに、お偉いさん方はいったい何を考えているんだか……。

俺らを食わせて、自分が逃げる時間を稼ごうとしてるんじゃないだろうな。

全く、馬鹿じゃないと偉くなれないのかね?

ほら、よく言うじゃないか。

「(部下に)憎まれっ子世に憚る」ってね(笑)


10.20

塹壕掘りは重労働だ。

昨日はつかれて日記が書けなかったよ。

今日もだったけど、慣れたから適度にさぼれて、あんまり疲れてない。

全く、こういう仕事こそロボットにやらせるべきだと思うんだよな。

いくらCPUが虚弱体質だからって、外側ハードを頑丈にすればいい話なのに。

上の方が予算をケチったんで、作戦初日にして、早くもうちの部隊のロボットは全部ぶっこわれた。

以来、塹壕掘りは全て人力だ。

お偉いさんは、自分の飯はゴージャスに、部隊の備品は貧層に、ばっかりだ。

早く任期が終わらないかな。


10.25

突然の襲撃があったんで、4日間日記が書けなかった。

なんだか、だんだん間が開いてってる気がするな。

さて、襲撃のことを書こうか。

まず、21日の早朝に第一波の襲撃があった。

これはそんなでもなかったんだが、問題は第二波だった。

これは23日に来た。

最初、地平線が上にあがってくなあ、としか思わなかったんだ。

でもそれは実は全部「奴ら」で、「奴ら」が並んで地平線のように見えてたんだ。

いやあ、焦ったね。

これは殺されるって思ったもん。

でも、信じられないことに、塹壕が俺らを守ってくれたんだ。

俺は最初、俺たちが塹壕に隠れて銃をぶっ放すんだと思ってた。

でも、いざ「奴ら」が迫ってきたとき、上官がこういったんだ。

「総員、「奴ら」をぎりぎりまでひきつけつつ後退!「奴ら」が塹壕に落ちたところを撃て!」ってね。

いやあ、爽快だったねえ。

何しろ「奴ら」には技術というものがないから、穴から這い上がれないんだ。

で、それをPDW SR635で容赦なく撃つ!

お偉いさん方、最高だったよ!

こんな楽しい戦闘だったら、もっとやってもいいかも。


10.27

お偉いさん方から伝達。

「『奴ら』の大群が接近、予想会敵時刻、10.29、2:10」だってさ。

それで、俺らはこれから徹夜で塹壕掘りだ。

今度のは前回のをはるかに超える大群らしくて、お偉いさん方の口調が結構切羽詰まってた。

おっと、もう行かなきゃ。

続きは戦闘後に書くよ。










10.30 a.m4.33。

僕はこれから死ぬ。

「奴ら」にかまれちまった。

まさか「新型」がいるなんて。

あの「膿人間」には、唯一の攻撃手段だった手りゅう弾が効かない。

いや、無 効化される。

あいつには知性 があるみたいで、投げつけられた手りゅ う弾に、自分の体の一部を投げつけ、 爆発を抑え込むんだ。

通常の「 膿人間」よりも体の粘性が強いのか もしれない。

どうかこれを読んでく れた人、あいつ対 する攻撃方 法 考え付いてくれ。

そ し て    おれ こ と を わ  す れ な いで  


た    の          ん 






















元々、「彼」だったものが揺れながら歩き去った後、ノートは下に落ちていた。

それを、膿だらけの足が踏んづけ、ノートは、読めなくなった。

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