356日目 お守が終われど休む暇なく


 メルトの足を治療し始めてから数分後、魔王はもう大丈夫だと言って手を離すとメルトは足をトントンと地面に当てて痛くないかと確認し。

痛みもなく妙な違和感もないと知ると、メルトは小さな声で「ありがとう」と伝えてから気を紛らわすかのように子グモたちからどう逃げるかという話し合いをすることにした。



「で、子グモが来たらどうする??

私たちの勝利条件は特に決まっていないみたいだけど・・・

ってか・・・追いかけっこって終わりはあるの??」

「私もこういった遊びはあまり知らなくてだな。

追われるものが手を出してはいけないと言う事でもなさそうではあるが相手側に対して攻撃をするにしても面倒を見ないといけない子グモたちに攻撃できるわけでもないし・・・・あ、そうだ。

この事を親クモである巨大なクモは知らないわけだろ??

だったらトンネル内にいない事を知ったクモはここまで来るのではないか??

そのタイミングで私たちの勝利宣言をすれば無事に解決すると思うのだがどうだろう??」

魔王の考えに考えた勝利の方程式をメルトは鵜呑みにするかのように受け取り。

親クモが現れるまで逃げ回ればいいのだと簡単に考え・・・現状を維持して隠れていればいいもののメルトは茂みから飛び出し子グモに挑発するかのように大声を上げると子グモたちはぴょんぴょんと跳び跳ねてやって来ていた。



「さぁ来たわねぇ!!!私たちが掴まるのかが先か親が来て終わるのが先か勝負よ!!!それが終わったら私たちは街へ帰るからそれまで全力で相手をしてあげるわ!!!

さぁどっからでもかかってきなさいな!!!おっともはやそんなレベルの糸じゃ私を捕えることはできないわよ!!!

――――――――――そいやそいや水で相殺!!!」

「真っ向から自分の技が通じない事を見せつけ子グモたちの戦意を喪失させる・・・・まさに大人気ない行動だ。

これも今後の魔王たる振舞い手帳に書いておこう。」

魔王はメルトの行動を見ていると背後からキラリと光るものが見え・・・咄嗟に魔王はメルトの背後に忍び寄る子グモの注意をすると。

メルトはその方面に水を放ち糸を回避したのだが隠れていた魔王の位置バレてしまい魔王は魔王で子グモたちに追われ出し。

落ち込んだ子グモを飛び越えてメルトも魔王を追っている子グモを追いかけて駆け出していた。



「魔王、どこまで行く気よ!!!

それ以上言ったらいけないってハルトが言ってた区域よ。

だから魔王も子グモも早く戻ってきなさいよ~~~親クモに怒られちゃうわよ~~~」

「そう言ってもだな・・・子グモたちは私を捕まえる気満々で糸を飛ばしてきているんだ。

だからこのままうまく曲がって戻りたいのだが・・・・アレは何だ??」

魔王は子グモに終われながら突っ走っていると前方に害獣であるホワイトファングの群れが現れ。

魔王はその群れの中を華麗に突破するも子グモたちはホワイトファングに囲まれており万事休すな状態に陥っていた。



「グルルルルルルルル・・・・・」

「ム、コレはいけないぞ!!!

私は何とか抜けられたがあの子グモたちにはそう言った知恵がないのであったな。

ここは私が助けなければならないな・・・よし、待ってろ!!!今助けに行くぞ!!!」

「うわ・・・よりによってホワイトファングの群れとか私も近づかないでおこっと・・・・子グモちゃんたち今は休戦よ。

あの状況だから今はジッとしておくわよ。」

メルトは子グモを足元と頭に置いて背を低くして魔王の行動を注意深く観察していると、ホワイトファングの1匹が子グモに牙をむこうとしており・・・・



「ブシュシュッ!!!」

「子グモめいいぞ!!!ホワイトファングの1匹に糸攻撃を喰らわせてやるとはいいガッツをしているではないか!!!

っと、さぁお次は私が相手だワンコ共!!!さぁこのまま身を引けば命までは取らないでおいてやろう。

だが・・・牙を剥き私たちに危害を加えようとした瞬間には肉と毛皮になることを覚悟してくれ。

出なければ私たちが親クモに怒られてしまうのでな!!!さぁどうする??魔王との取引をさぁどうする!!!」

魔王は決めポーズを取りながらホワイトファングの群れに言い聞かせると、ホワイトファングの1匹の糸が苦しむ仕草を見ると状況的に不利だと言う事を理解したのかホワイトウルフの群れは子グモたちに関与することなく逃げ出し魔王は子グモたちにケガはないかと確認しメルトと合流しハルトたちの元へ戻ると・・・・



「おまえら・・・まさか・・・捕まったのか??」

「この状態のまま放置は体の芯まで冷えて死にそうです・・・・

早く暖かい場所へ移動して体を温めてください・・・・うぅぅぅ極寒・・・」

「いや、ちょっと横やりが入って追いかけっこどころではなくなってな。

子グモたちも満足したのか追いかけっこを終わりにしてくれるらしくて戻って来たんだ。

それじゃメルト・・・2人を解放してやってくれ。」

「わかったわ・・・それ、ウォーターブレス!!!」

メルトの魔法によって糸から解放されたキルりんとハルトであったが寒い環境で水をぶっかけられたことによって2人の髪や服が氷に早変わりしており。

ハルトとキルりんは違う意味で動けなくなってしまい・・・崩れ落ちてしまった。



それからして、魔王とメルトの2人は巨大クモの元へ子グモを送り届け・・・再びハルトとキルりんの元へ戻ってくる頃には夕方になっており。

ハルトとキルりんは自由になったことをいいことにメルトと魔王を放置してすぐさま家に戻り風呂場へと流れ込んでいた。



「あふぅ~~~あぁ・・・いい湯だァ~~~そう思わないか??

ん?どうしてキルりんが風呂場にいるんだ??」

「は?今は女子風呂の時間ですが何か??

それともハルトは私の裸体を覗くためにワザと入浴してきましたね!!!

コレはナイフで仕留めておかなければいけない案件です・・・と、言いたいところですが今回は2人同時にメルトの水を浴びたのでやめにしませんか?

こんな状況になったのもメルトの解放の仕方に問題があったと思うので。」

キルりんにしてはまともすぎる提案にハルトは少しためらってしまったがよくよく考えるとメルトによる被害だと言う事からハルトも今回ばかりは言い合う事はしないと言って後ろを向き入浴を楽しんでいると魔王とメルトの2人が家に戻って来ていた。

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