197日目 酒の為にどこまでできるか


 家に戻るとメルトはさっそく瓶を抱きしめ始めており。

魔王とハルトは気になったキルりんの部屋に入ると・・・・・・

お約束の展開が起こった。


「ハルト・・・いいですか?女性の部屋に入る時はまず・・・ノックをしてください!!!あと・・・ジロジロと見ずにでてけぇ!!!!!!!」

「なんだ?アイツ・・・結構元気になってなかったか?

えっと・・・扉越しに聞くが・・・体の痛みはなくなったのか?」

キルりんに尋ねると、とビア越しから聞こえるため息をついてからハルトたちに言い返した。


「半日ほど寝ていたおかげもあってか体の痛みは取れました。

これも若さの力というものでしょうかね?

で、ハルトたちは依頼はどうなったのですか?」

「いや、それがさぁ?メルトの暴走で森の一部を破壊して罰金。

自分の大切にしてた酒樽を手放す羽目になって今に至るってところだ。

キルりんの体調が戻ったのならこれから早めの晩飯にしようかと思っているんだがキルりんも来るか?」

ハルトはキルりんを夕食に誘うとすぐに返事をして部屋から出てくるなりすぐに手持ちの金は1ゴールドもないと語ると。

ハルトは今回だけは奢ってやると言うと。

メルトもその言葉に便乗しようと近づいてきたが・・・酒を売った金の残りと依頼の報酬の分け前があることを指摘すると。

頬を膨らませてブーブーと文句を言っていた。


「そんじゃ・・・用意ができてんのなら酒場に行くか。」

「今日は何も食べていないので沢山食べさせてくださいね!

もちろん木の実のジュースは外せません!!」

「うむ食べないと色々と成長しないからな。

よし、そうと決まればさっさと酒場へ行って夕食にしよう。」

「あ~あ・・・今日は本当にお金がよくなくなるツイてない日ねぇ~

それに大切にしていた酒樽のほとんども売っちゃったし・・・・最悪な一日はシュゴビーのヤケ酒で解消よッ!!!」

メルトの言葉からキルりんは嫌な予感がすると感じながらも酒場へ移動しいつもの席に着いた。


「それじゃ、いつも適当な注文でいいか?」

「私はそれで構わない。

キルりんは好きなものを頼むのだろ?」

「もちろんですよ!!!ハルトが気前よく奢ってくれると言うんですからこういう時に乗っておかないといつハルトの口から奢ると言う言葉が出てくるかはわかりませんからね。」

「私はまずシュゴビーとおつまみセット!!!」

ハルトはウェイトレスに注文を入れるとすぐに奥へと消えて行き。

注文のモノが届くまでの間・・・キルりんに家で変わった様子がなかったのかと尋ねると。


特に何もなかったと言い返し、シュゴビーをがぶがぶと飲むメルトにキルりんはため息を吐きながら依頼の中での暴走について注意したのだが。

酒の入ったメルトにまともな言葉は意味をなさず。

メルトはシュゴビーを片手に持って冒険家やハンターたちのいる方へ向かい。

互いにシュゴビーを叩き合わせて乾杯をしていた。


「私・・・本当にメルトがこの先とんでもない過ちをしそうで不安なのですが。

その時はこのPTから抜けてもいいですか?」

「いや、お前・・・なに自分だけ何もなかったかのようにしようとしてるんだ?

普通はこのメンバーで最後までやり遂げようとか言う場面だろうが!!!

魔王を見て見ろよ!!!文句の1つも言わずにこうやってジッとしているだろ?

なぁ、魔王?」

「あ、あぁ・・・・先ほどから気になっていたメルトが体を売るとか何とか言っていた件について考えていたのだが。

魔族と違ってをするのか?」

魔王の口から飛び出た言葉にハルトたちは口に含んだ液体を吹き出し。

ハルトたちは魔王に大きな声でそう言うことを言わないように注意をしてからキルりんは魔王の隣でこそこそと真実を語ると――――――――


「な、ななななな!?メルトはそんな汚らわしい行為でお金を得ようとしていたのか!?

何と言う執念・・・・ハルトの提案がなければメルトは今頃・・・・ゴクリ。」

「魔王が何を想像してんのか知りたくはないが・・・・

知らなくていい事も世の中にはたくさんあるんだ・・・・メルトが酒の為なら魂でさえも捨てる覚悟があると言う事とか。

誰かさんの何かのサイズとかな。」

「ほ~う・・・・誰かさんのサイズって・・・・ハルトは誰の方を見ながらそう言いました??

私のどこのサイズを知りたいのですかね??

足のサイズですか?鼻の高さですかねぇ?それとも身長???

で知りたいところがあれば覚悟して聞いてくださいね♪」

「な~にそこでテンション高くしてんのよ~~~

それに私の話をしてなかったかしら??なんかメルトがどうのこうとか話してたような・・・・」

酔ってフラフラなメルトがハルトたちのいるテーブルに戻って来ると。

先ほどまで話していたことを聞きたがり。

魔王の熱が再発しないようにとハルトはフザケて答えることにした。


「あぁ・・・お前をどうやったらダメ人間から卒業させられるかって話し合ってたところだ。

酒にダメで金にもダメで私生活もまたダメ・・・・マジでダメダメ尽くしのメルトを清く正しく美しく更生できるかなんだが・・・・どう思う?」

「いや、無理ですよ。

どこに行っても酒に飛びつき金に飛びつきでさらにぐうたらでいざっていう時にポンコツなカエル魔導士トードマスターですよ?

そんなメルトをどうやって厚生できるというのです?

1000万ゴールドあってもできませんよ。」

「そうだな・・・ここまで来てしまっていたら魂からやり直すしかないだろうな。

知り合いにソウルコンバーターという魔法が使える術者がいるのだがやってみるのはどうだろうか。

少しはマシな人格になるかもしれないぞ?」

話の流れからメルトはこれはマジだと感じたのか・・・店主から水をもらい頭にぶっかけてシラフに戻すと。

メルトは顔を鎮めたままハルトたちの方に戻ってきた。


「ん?どうしたんだ?急に水を浴びだしてビビっちまったぞ?

今日はもう飲まないのか?」

「飲む?何を呑むって言うのかしら?御冗談を

私は決められた分量でしかお酒は飲みませんよ?オホホホホ。」

「な、なんですかこの猫かぶりメルトは・・・・

さっきの話の流れからですかね?

ですがコレはチャンスではないでしょうか?これをきっかけにまともになってもらえればこちらにとってもあちらにとってもよいのでは?」

「だ、だが・・・このメルトにはさすがの私でも違和感が拭いきれないのだが。

何せ・・・メルトはここまで笑顔を振り撒くようなキャラじゃない・・・」

魔王の発言からメルトはギラリと目を光らせて魔王の胸を鷲掴みしており。

メルトは渾身の力で握りこんで魔王に力で抵抗すると。

魔王はあまりの痛みにメルトに謝ると、その魔の手から解放され・・・掴まれた胸を撫でていた。


「オホホホ・・・それでは私はお先に帰って眠りにつきます。

それではごきげんよう~~~コレは皆さんの・・・・ぐぐ・・・分の代金も置いておき・・・置きますね!!!」

「いい子ぶって俺たちの分まで払おうとしてくれるのは有難いんだが。

本音が漏れかかってるし無理すんなよ。

どうせ数日も続くことはないだろうしお前がいつものようにバカをしてくれねぇと気持ち悪いんだが?」

ハルトは過ぎ去っていくメルトに声をかけるとメルトはピタリと足を止め。

悩んだ末にくるりと振り返り、テーブルに置いたゴールドを回収して再び席に着き。

魔王たちに詫びることもせずにシュゴビーを注文するのであった。

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