158日目 いざ、ゴルドルの街へ

それからして、せっちゃんを宿に戻してから帰ってきたキルりんは。

皆で乾杯をするのかと楽しみにして戻って来たのだが。

ハルトたちの飲み食いした後を見て・・・少しだけ涙目になっていた。


「私がせっちゃんを宿に戻して帰ってくるまでどうして待てなかったのですか!?

ハルトもハルトですよ!!!何を酔って魔王の膝枕に埋もれているのですか!!

コレは魔王ではなくですよ!!!」

「キルりん!?一体何を言っているのだ!?

私はサキュバスではニャイ!!!私は魔王で・・・清楚と気品に溢れる魔王なのだ!!それにこれはあれだ・・・ハルトが急に倒れたから看護をだな・・・」

「それはそうと、ンゴンゴンゴ・・・ぶはぁぁ~~~

すんませぇ~~~んシュゴビーおかわり~

気品だか何だか知らないけど今のその格好はどうなのかしらね?

そんな格好をしてたら魔王を見てる男連中はみんなサキュバス扱いしてると思うわよ?ねぇ?」

メルトの言葉に周りにいた冒険家やハンターの男たちは魔王と目を合わそうとせずに頷くと。

魔王は急に恥ずかしくなったのか、ハルトをその場に置いて家に帰ってしまった。


「んあぁ?アレ?俺の柔らか枕はどこに行ったんだ?

ん?キルりん?そういやお前・・・せっちゃんは無事に届けて来たのか?」

「当たり前ですよ!!!それよりもハルトはもう少しシャキっとしてくださいよ!!!

ハルトが私たちのリーダーなのですから魔王の事も考えないと駄目です。

さっき口に出してたその柔らか何とかは先に家の戻りました。」

「すごい顔して戻ってたわね。

あれはよっぽど恥ずかしかったのかしらね~~

んあ??もうカラ??すんましぇ~んシュゴビーおかわりぃ~」

フラフラになっていたメルトの注文をハルトはジェスチャーで断り。

代わりに水をもらってメルトに飲ませている間にキルりんは適当に食事と木の実のジュースを食すと。

魔王の事が気になることからキルりんに謝りながらメルトをぶら下げて帰ると。

魔王はソファーに座ってお山座りをしており。

その近くには明日の準備をし終わったのかカバンが置いてあった。


「えっと・・・ま、魔王??どうしたんだ?そんな所で明かりもつけずに。

それとも何か嫌な事でもあったのか?

メルトにいじめられたのか?」

「・・・・うむ・・・・メルトにいじめられた・・・・グスン。」

「コレは完全に精神がやられちゃっていますね。

メルトのやった行動もですが・・・私も少し言い過ぎました。

謝りますので少しは元気を出してくれませんか?

今日のお詫びにとハルトが明日向かう街で一緒に買い物をしてくれるらしいのですが・・・不必要ですかねぇ?」

「ん~私はそこまで酷いことしてないはずなんだけど・・・・だって、魔王の格好は確実にサキュバスだったし・・・うぅ・・・気分悪いから先に寝るわね。

おやふみぃ~~~ふわぁぁぁ・・・・」

そう言ってメルトは部屋に帰り、質問された魔王はと言うと。

少しずつ体をぴくぴくと反応させて立ち上がり。

ハルトに向かって歩き出し・・・・


「明日ので、ででででででデート・・・お、おおおおお願いしましゅ!!!

そ、それじゃ・・・お、お休み!!!」

「よし、完璧に立ち直りましたね・・・・あいたッ!?何をするのですか。

急に火との頭をぶつとか非常識ですよ!!恥を知りなさい恥を!!」

「誰が恥じるか馬鹿ロリが!!!

勝手に不必要な約束を解除のしにくい魔王に取り付けやがって。

マジでどうしてくれんだよ・・・・」

ハルトは嫌々そうに語ると、魔王は扉の前から死んだような目をした顔を覗かせて見ており。

それと目が合ったハルトは・・・変な汗をかきながら、キルりんにグーサインを出され・・・・


「あ、あ・・・アシタハホントウニマオウトノデートガタノシミダナー」

完全なカタコト喋りであったが魔王はそれでよかったのか。

にっこりとほほ笑んで部屋に消えて行き。

完全に明日の街で魔王に引きずり回されると覚悟し・・・・

ハルトとキルりんは自分の部屋に戻って眠りについた。


そして翌日・・・妙に張り切りモード全開の魔王とハルトたちは朝食をとった後。

メフィストの研究所近くの街、ゴルドルに向かって馬車で移動していた。


「あぁ~~この揺られる感じ・・・久しぶりだな。

いっそ旅のキャラバンとかしてみるか?」

「嫌よ・・・あの街のシュゴビーが気に入ってるんだから離れたくないわ。」

「メルトは本当に酒に目がありませんね?

ですが、こうも言えませんか?

旅の中で出会う珍しいお酒に仲間たちと騒ぎながら飲む・・・・

これぞキャラバンの醍醐味では?」

「うむ・・・それも一つの楽しみ方だと思う。

仲間たちと酒を飲み交わし、恋が生まれ・・・結婚するのだろうな。

ん~ロマンに溢れるキャラバン生活じゃないか!!」

魔王の話しに夢は程々にとメルトが語ると。

馬車のおじさんが街に着いたと言うと、ハルトたちは窓から街を拝見した。


「おぉ~~ここがゴルドルの街か!!

ここは何が名産なんだ?」

「ここはですね・・・このご当地パンフレットによりますと。

鍛冶屋と鉄産業が盛んな熱い街で。

ゆで卵と熱々シュゴビーが有名だそうです。」

「ほほぅ・・・熱々シュゴビー・・・それは今夜のお楽しみにしておこうかしらね。

で、私たちの泊まる宿はどこかしら!!!」

「それは私も気になっていた。

高級なロイヤルスイートがいいな。」

魔王たちの期待とは裏腹に到着したゴルドルの街を歩き、ハルトは近くにあった宿屋に入り部屋を2つ取ると。

その宿屋は高そうでも安そうでもない普通の宿屋であり。

メルトと魔王たちはブツブツ言いながら部屋に荷物を置き。

ハルトも荷物を置いて表で待ち合わせることとなり移動すると。

昨晩の約束である魔王とのデートが始まろうとしていた―――――――


「あれ?メルトにキルりんはどうしたんだ?」

「あの2人なら先に出かけると言って消えて行ったな。

でも・・・これで2人っきりので・・・でででデートができるじゃないか。

わ、私と・・・は、ハルトの2人っきりは嫌か?」

魔王の問いにハルトは嫌ともなんとも言わずにすぐに出かけると言って歩き出すと。

魔王はハルトの後をモジモジしながら歩き始め。

いつものハツラツとした元気さを感じない凛とした魔王の姿がそこにあり。

周りの目も魔王に釘付けであった。


「は、ハルト・・・その、今はどこに向かっているのだ?

どこか行く当てがあったりするのか?」

「キルりんから聞いた話によると。

この先に川があるらしい・・・そこが観光名所らしくてな。

ほら、きっとあれだろ?」

足を止めたハルトの見ている先には綺麗に輝く川があり。

魔王もその美しさに目を奪われてハルトの隣で眺めていた。


「なんと、こんなに美しい場所があったのだな・・・・」

「お、おう・・・で、魔王・・なんか近くないか?」

魔王は雰囲気でぐいぐいと近づいてきており、ハルトは魔王を華麗にかわして次の場所に向かうと。

魔王は舌打ちをして再びハルトの後方について行くと。

今度は鍛冶屋の見学をすると、魔王はそろっとハルトの手を握ろうとしたのだが。

勘の鋭くなったハルトは手を握られる前に鍛冶屋の中にあった剣を手に取って回避すると。

魔王は次に行こうと言ってハルトを連れ出し・・・ついに魔王は強行手段に出た。


「おい、魔王・・・ここって・・・・」

「そうだ・・・ここは人気のない路地裏だ。

妙に私から逃げるハルトをどうやればいいかと考えた結果・・・こうするしか手はないと思ったのだが・・・・

そこのお前達、いつまで隠れて付いてくる気だ?私たちはだぞ?」

魔王の問いに陰で隠れていた男共が数人武器をもって現れ。

ハルトたちを囲んでいた―――――――――――

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