148日目 忘れ物はメルト・・・

そして次の日・・・ハルトたちはギルドに溢れかえっている依頼を受け、今年の冬が訪れる前にできるだけの貯蓄をと考えており。

メフィストの件よりも先に自分たちの身の安全の確保に乗り出していた。


「おい、メルト!!!そっちに行ったぞ!!!」

「わかってるわ!!!さぁ!!!観念しなさい!!おチビちゃ~ん・・・って!?コラァ!!!私を踏み台にした!?」

「そんな下らないことしてないでちゃっちゃとホワイトラビットを捕まえてくださいよ~」

「春だからなのかすごい量のウサギだな。

この量が畑に向かうとなれば数時間で全滅するのも頷ける。」

ハルトたちの受けた依頼は生け捕りにした場合のみ1匹5000ゴールドの値打ちがあるウサギの捕獲を受けて捕獲をしているのだが・・・・

その数の多さにハルトたちは圧倒されて捕まえるのに苦労していた。


「あぁ!?また逃げられた・・・何だこのウサギ・・・メチャクチャ威勢がいいじゃねぇか!!!」

「そりゃ1匹5000ゴールドですからね・・・生きがいいのは当たり前ですよ・・・ってそこだぁぁぁぁあぁぁ!!!」

「おぉ・・・キルりんの気合での捕獲はなかなかのものだな。

それに引き換え・・・・」

「のわぁ!?ちょこまかと・・・・ねぇ!?これ全部消し炭にしてもいいかしら??その方が調理する手間も省けていいんじゃないの??」

そろそろ言う頃だろうと感じていたハルトは・・・メルトに再び、生け捕りのみ5000ゴールド手に入ることを伝えると。

握りこぶしをつくって、催眠の魔法をぶちまけた。


「これならどうかしら!!!この魔法ならウサギは傷つかずに捕獲できるわよ!!頭いい~私!!さすが偉大なる魔導士メルトさま!!どうよハルト?

ハルト?なに寝そべってんの?」

「おまえ・・・の魔法で・・・魔王はギリギリ飛んで逃げたようだが・・・俺とキルりんは直撃でダウンだ・・・あとお前たちに任せた・・・・がく・・・」

「すや~~~~~すや~~~~ふへ・・・」

「メルトの睡眠魔法でウサギとハルトたちは皆夢の中。

いい案だったが仕事の量がどんと増えたな。

これからどうしたモノか・・・メルトの半径は睡眠魔法で近づけないし。

やはりメルトにウサギを檻に入れてもらうしかなさそうだな。」

メルトは楽をしようとした結果・・・1人でハルトやキルりんたちの分までウサギを捕まえて檻に入れると。

やっと効果が切れたのか・・・ハルトたちが目覚め魔王も空中から地上に降りて来たのだが。

その中でメルトだけが疲れ果てて地面に倒れ込んでいた。


「よし、みんな無事だな?

それじゃ帰るか・・・・・」

「ちょっと待って!!!私のせいで眠らせちゃったけどちょっと待って!!!

ここは私にありがとうとか助かったとかおぶって帰ろうか?的な言葉はないのかしら!?」

「そうですね・・・メルトがウサギを私たちの分まで全て檻に入れた功績は称えてあげるべきですね。」

「だが・・・私たちはメルトに何をしてやればいいのだ?」

魔王は不思議そうにキルりんに尋ねると・・・キルりんに良い案があったのか。

魔王にコソコソとやるべきことを伝えると。

メルトをウサギのモフモフのベッドに置き・・・そのまま荷台を3人で押して檻を指定された場所に運び終えると。

報酬の引換用紙をもらい、すぐにギルドへ戻って行ったのだが。

ハルトたちはギルドに戻ってからメルトを回収することを忘れており。

いびきをかいて寝ているメルトをウサギのベッドから回収するとすぐに目覚め。

報酬の入った袋を目にしたメルトは真顔になって3人に自分を忘れて帰らなかったかと質問していたが。

ハルトたちはその質問に答えることなくギルドに戻り、さらにもう1つ依頼を受けてポイントに向かった。


「ねぇ本当に私を忘れて報酬をもらいに行ったりしていないわよね?

私たち仲間だもんね?そんな酷いことしないよね??ね?そうでしょ?」

「悪いメルト・・・ガチで忘れてた。」

「1人いないだけでかなり静かな物でしたね。」

「おい・・・それを本人の前で言うのはどうかと思うぞ?

め、メルト?気を悪くするな・・・・何なら今日は私のおごりでシュゴビーでも飲みに・・・行かないか??ん?」

魔王の誘いをうんとも言わずにメルトは岩の上にお山座りをすると。

遠い空を眺めて人生について呟き始めていると。

前方から依頼されていたビッグワームが突撃して来ていた。


「おいメルト!!!マジで危ないから早立てよ!!!

あのバカ・・・俺がメルトの場所に行くから魔王たちは援護を頼む!!」

「了解しました!!!虫の嫌いな臭いを出す殺虫玉をお見舞いしてやりましょう!!」

「それじゃ私はあのワームが背を向けた時を狙ってトドメを入れよう。」

「人生って・・・・山あり谷あり地獄アリ・・・仲間に見捨てられた私は・・・生き地獄・・・うぅぅぅ・・・・」

ハルトは絶望するメルトの元に全速力で駆け出し。

何とかメルトの手を握ってワームの突撃を回避すると・・・キルりんはワームに向かって殺虫玉を見舞うと、予想通りに背を向けて反り立ったところに魔王の凶悪な一撃が突き刺さりワームの頭が飛んで体液が噴出していた。


「ぺっぺっぺ・・・クソ・・・体液でべっとべとだ・・・でもナイスだ魔王。

少し忘れたくらいでどんだけ落ち込んでるんだよ。

別に故意に忘れたわけじゃないだろ?

それに・・・やっぱ俺達にはお前が必要だ・・・・囮役として。」

「ハルト・・・最後に言った言葉は聞こえないように言わないとぶっ殺されますよ?

ですが、そうですよ!!!ハルトの言った通り私たちのPTにはメルトは必要不可欠な存在!!

太陽があるのなら月がなければ風情が無いようにメルトは大切な囮役ですよ!」

「おい!!途中までいいことを言っていたのにぶち壊しじゃないか!!!

ち、違うんだぞメルト?これは私たちのジョークだ。

本当はメルトに帰って来て欲しくて仕方ないんだ。

だから・・・戻ってシャワーを浴びて酒場に行かないか?」

「ロイヤルシュゴビー・・・・飲ませてくれるのなら考える・・・・ぐすん・・・あと、ハルトとキルりんを半殺しにする。」

メルトはそう言うと、ハルトとキルりんを捕まえてポカポカと弱い力で殴ると。

2人は相当弱ったメルトに付き合うようにやられたをすると。

少しだけ元気が戻ったのかハルトの少し強く踏みつけてから街へと戻って行った。


そして、ハルトたちは風呂に入って一日の汚れを落とすと。

メルトの唯一の楽しみである酒場にやって来ると。

飲みたそうにしていたロイヤルシュゴビーを飲ませてやると・・・・


「1杯じゃ足りないわ・・・・」

「んじゃ何杯ありゃ良いんだよ!?好きなだけ飲めよ!!

お前のテンションが低い方がある意味病気的におぞましいわ!!!

飲んで忘れられるのなら好きにしろ。」

ハルトの言葉にメルトの涙腺が崩壊し・・・ついに泣き出したかとと思えばハルトに今日あったイライラを全てぶちまけ始めた。


「そう言うこと言うんだったら全部吐くだけ吐かしてもらうけど!!!!

マジであんたたちは私を置いてって何とも思わなかったわけ!?

罪悪感のかけらも何もないの!?それでもあんたたちは血の通った人間なのかしら!?」

「お前に言われたくねぇわ!!!酒と金だけありゃ生きていけるメルトの前じゃ俺達なんてひよっこのようなもんだろうが!!!!

罪悪感を語る前にお前はもう少し他の奴の気を遣う事を覚えろよな!!!」

2人はシュゴビーを呑み合いながらぐだぐだと長く愚痴を話し続けていると。

酔いが回って来たのか話が少しずつ方向を変えて・・・・


「でもな・・・ヒック・・・・報酬をもらいに行った際にお前がいなくてマジで心配したんだからな・・・・」

「ハルト・・・・べ、別に探して何て言ってないじゃないの!?

ば、バカじゃないの・・・・・」

「やれやれ・・・一時は殺し合いが始まりそうだったが。

何だかんだ言って2人の仲が元に戻ってよかった。」

「ですね、それじゃ・・・今日は祝いの席として飲んでもいいですか?」

キルりんの問いに魔王がハッキリと駄目だと言うと。

酔って寝てしまった2人の分の夕食をキルりんはやけ食いしてストレスの発散をしていた。

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