117日目 ハルトの用意した大きな箱
メルトが家から飛び出してからハルトは魔王に扉越しに話しかけるが返答はなく。
扉に手をかけるとカギはしておらず・・・中に入ると―――――――――
「―――――――うぇぇぇぇん・・・・・母様・・・・・グスン・・・・」
「・・・・・・・・・・」
ハルトは魔王に優しく言葉をかけることができないまま部屋を出ると。
キルりんの置手紙を発見し・・・少し出かけると書いてあり。
この状況をどうしたらいいのかわからず・・・女子力の高そうなジャージーに頼るために教会へと向かうと・・・・
「あ、ハルト!?そ・・・・その・・・・ふんだッ!!!」
「メルトのヤツ・・・何をして・・・・その、ジャージー・・・悪いんだが・・・」
「ふふふ、はいはいハルトさんもそう急いで言わなくてもわかってるからちょっと待っててね・・・
―――――――――はい、コレ。
布とワッペンに裁縫セットを貸してあげます。
少しでも魔王さんのお役に立てればいいのですが・・・・
こんな事しかできなくてごめんなさい。」
ジャージーに何も話していないのにもかかわらず裁縫セットと修復用のワッペンが入った袋を差し出し。
メルトに話を聞いたのかジャージーに尋ねると・・・始めはキルりんからの情報から始まり・・・最後にハルトが来た事をジャージーが話すと。
2人の行動も大体同じと言う事がわかり。
ハルトはさらに街の中心街へ向かい・・・おもちゃ屋をぐるぐると回り。
1つのアイテムを買って家に戻ると―――――――
魔王の部屋の前に2つのラッピングされた箱が用意されており。
それらをもって魔王の部屋に入った。
「おい、魔王・・・いつまでしょげているんだ??
いつもの明るいテンションはどうした??」
「うぅぅ・・・そう言われても・・・本当にこのぬいぐるみが・・・メルトはワザとしてコトじゃないのは分かる。
だが・・・こればっかりは少しショックなのだ。
本当に・・・・あ!何をする!」
ハルトは魔王のベッドに置かれたボロボロになったぬいぐるみを引き取り。
代わりに魔王の部屋の前に置いてあった箱を2つ渡して中を見させると・・・・
「これは・・・・色違いのドラゴンのぬいぐるみ??
それに・・・カードも・・・コレはメルトからか。
こっちはキルりんから・・・・」
「あいつらも少しは人の心があるらしいな。
イタタ・・・くッ・・・ジャージーに聞いたとおりにしてるが裁縫は慣れねぇな。
でも・・・あと少しだ・・・よし、コレでどうだ???」
魔王に完全修復とはいかなかったが、魔王の大事にしていたぬいぐるみは綺麗に縫われており。
所々にハルトの血が付いていたが魔王は気にせず受け取り、涙ながらに「ありがとう」と感謝の言葉を述べると。
その話声を聞いたのか部屋に2人が入って来た。
「その・・・魔王・・・今日の事は本当にごめん!!!
私・・・そんなに大切な者とは知らなかったの・・・だから・・・今日の夕食のシュゴビーを奢るから許して!!!」
「え!?メルト・・・それは謝ると言うよりも逆鱗をナデナデしているようにしか思えない発言ですよ?
えっと・・・魔王・・・私からの贈り物を受け取っていただけたと言うのであれば・・・少しでも元気の足しにしてくれればと思います。
ハルトから聞いた話によると交換できない大切なものと聞いております。
そのかわりには程遠く・・・価値がないかもしれませんが。
私なりに考えてチョイスしてみました―――――――わぷぁッ!?魔王!?」
2人の謝罪の言葉を聞いた魔王は2人を抱きしめ・・・感謝の言葉と共に謝りながら大切にすると言うと。
メルトたちは何か魔王にプレゼントはないのかとハルトに問うと・・・ハルトは目を逸らして語ろうとしない行動をすると。
2人はハルトの部屋に突入し・・・大きな箱を2人で運んできていた。
「ちゃんと用意してんじゃないの!!!
こういう時でもハルトは恥ずかいわけ??子供じゃないんだからパッと渡しちゃいなさいよね!!」
「そうですよ!!!魔王を元気付けたいのであればハルトのプレゼントが一番効果がありますからね!!!」
「ハルト・・・開けてもいいだろうか??」
「あぁ・・・バレちまったし好きにしろ。
言っとくが俺は誰かにプレゼントとか送ったことねぇから期待はすんなよ!?」
魔王の問いに答え、箱が開かれると・・・・
「これは・・・大きなドラゴンのぬいぐるみではないか!!!」
「ぷぷッ・・・ハルトってば言っておいた割には大きいぬいぐるみを買ってんじゃないの!!本当に子どもね~~」
「うるせぇ!!!コレしか売ってなかったんだ・・・・って・・・売ってなかった理由ってもしかしてお前らが先に買ってたからじゃねぇのか!?」
「そう言えば私が買いに行った店にはハルトの買った大きなドラゴンを見かけたような気がします。
ですが懐に買えるだけの金額が無かったので1つしかない小さい方を選んだのですが。
まさか同じ店に行っていたとは・・・・」
と、3人でぬいぐるみの入手先を話していると・・・魔王は大きなぬいぐるみをそれはもう嬉しくてしょうがないのかぎゅっと抱きしめていた。
「ハルト!!本当に感謝する。
メルトもキルりんも気を遣わせてすまなかったな。」
「ま、コレで一件落着ね!!!
それにずっとバタバタしたせいでもう夕方よ??」
「それもこれもメルトが魔王の大切なぬいぐるみをおじゃんにしてしまったからでしょ?
でも・・・魔王が元に戻っアのでよかったです。」
「そうだな・・・んじゃ、今日はこれで終わりにしてメシでも食いに行くか。」
ハルトの提案にメルトとキルりんは賛成し。
魔王はぬいぐるみを並べ・・・ハルトたちと合流すると、酒場へと向かっていった。
「アヒャヒャヒャヒャ!!!今日はじゃんじゃん飲むわよ!!!!ンゴンゴンゴンゴ!!!!」
「今日もいい飲みっぷりだな!!!!」
「もっと飲め飲め~~~~」
「メルトは本当に反省しているのでしょうか??
この調子だとまた何かやらかすのではないのでしょうか??」
「かもしれないな、だが・・・私も今日の一件で少しだけ大人になった気がする。
昔の思い出も大切だが今の私には過去にはなかったハルトたちが一緒だと言う事を再確認できたからな。
本当にいい仲間を持てて私は幸せ者だ。」
「そう言ってもらえたら何よりだ・・・まぁあのバカの制御はキルりんに任せるとして。
俺はそこのジャージーに礼を言ってくるかな。」
そう言ってハルトはバーカウンターでリザさんとお酒を飲むジャージの元に向かい。
今日の出来事は上手くまとまったと伝え、感謝と共に酒を奢ると言うと。
ジャージーはクスクスと笑いながらカクテルを注文し―――――――
「それじゃ、このカクテルを奢ってくれますか?」
「あぁ・・・って・・・2杯?」
ジャージーにどうして2杯なのか尋ねると、ジャージーはハルトにカクテルを手渡し。
一緒に飲むために2杯注文したと言うとさらにジャージーは続けてカクテルの名前を語った。
「このカクテルの名前は・・・・
フレンドとカクテルを作る際のブレンドという言葉をかけたダジャレのようなお酒で。
お酒が混ざり合う事によって美味しくなるように、友と友が混ざり合う事によってより仲良くなるって言う意味が込められているらしいです。」
「へぇ・・・より仲良くか・・・・そうだな。
そんじゃ、魔王たちとの仲直りに・・・カンパイ。」
ハルトとジャージーの乾杯を目にしたメルトは自分も混ぜろとシュゴビーの入ったジョッキをもってやって来ると。
ジャージーとハルトと乾杯し・・・勢いよくぐびぐびと飲み干しながら呼ばれる方へとスタスタフラフラしながら行ってしまっていた。
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