63日目 ワイルドすぎるプリースト

魔王の心のケアにと・・・余り金にはならない食料調達の依頼を受け、2人1組のチームに分かれて魚釣りの競争をすることとなったのだが・・・魔王はなんだか初めての頃に戻ったように物静かになってしまっていた。

その2人の様子を岩場からジッとメルトとキルりんは覗き込んで見ていた。


「・・・・・・・・・・」

「えっと・・・今日も暑いよなぁ・・・魔王??竿ひいてるぞ??」

「ん~何でしょうかこの気まずい感じ・・・私のアレだけれはなく、ハルトに言われたのが相当大きな傷になったのでしょうか??」

「ん~それより・・・・魔王の釣ったあの魚・・・デカいわね。」

キルりんはメルトをジッと見つめてから・・・ダメそうな顔をしながら時間が経てばどうにかなると適当に考えて釣りに集中した。


「魔王・・・やったな!!!俺たちが1匹リードだ!!!ほら、しかもなかなか大きいぞ!!」

「そうだな・・・その、ハルト・・・悪いがこのぐにゅぐにゅしている虫を付けてくれないか???噛まれそうでなんか触りたくない。」

魔王は餌箱を見てからハルトにエサを付けてもらい、糸を投げた。


「魔王のそう言うの・・・普通の女の子っぽいな・・・・もっとワイルドにエサを付けて何でもできそうに見えたんだが・・・・」

「わ、悪いか!?私だって・・・その・・・女なんだ。

それに、魚釣りも初めてで・・・さっき釣れた魚も初めてだったんだ。」

と、魔王と喋っていると・・・ハルトの竿に何かがヒットし、引き上げようとするが中々引きあがらず魔王と協力して引き上げようとしたがそれでも釣れる気配がなく諦めようとした時、急に竿が先ほどよりも強く引っ張り出し・・・ハルトと魔王を川に引きずり込んで流されていった――――――


「あれ??魔王とハルトがいませんよ???

どこにいったのでしょうか??魚を釣るポイントでも変えたのでしょうか?」

「きっとそうよ・・・それに魔王が付いているんだから何かあっても問題ないわよ。

それより私たちは私たちで負けないようにしっかりと釣るわよ!!!」

と、言いつつメルトの竿は先ほどからピクリとも動かずに川に揺られているだけであった。


その頃魔王とハルトたちは・・・・


「うぼばばばばぼぼばば・・・・・ばぼぉ(魔王)~~~」

「ぶばぼぼぼぼぼばばば・・・・・ばぶぼぉ(ハルト)~~~」

2人は深い川に流され・・・このままではマズイと魔王は必死にハルトの服を掴んで陸に上がると、メルトたちから随分と離れた場所まで流されていた。


「ありがとな・・・魔王、助かった・・・魔王、大丈夫か??魔王!?翼が・・・」

「いや、気にするな・・・・あまり使っていなかった翼だ、それにハルトを助ける際に使ってボロボロになったんだ・・・翼も私も本望だ。

それよりも、ずいぶんと流されてしまったな。

ここからどうやって戻るかだが・・・・痛ッ!?」

魔王の翼はボロボロになっており・・・さらに魔王は足を痛めて身動きが取れなくなっていると。


「魔王にここまでさせたんだ・・・今度は俺の番だな。

だが今回だけだからな??あと、メルトとキルりんには内緒だぞ??」

「すまない・・・ハルト、恩に着る。」

魔王をおんぶし、流されてきた方面を辿って歩いて行くと・・・


「夏の夕立か・・・雷も鳴り始めたしどっかで雨宿りするか。」

「あぁ・・・ちょうどいい所にある、そこの洞窟はどうだ??がいれば私が相手をしよう・・・痛ッ・・・」

魔王に気休め程度に大丈夫と言いながら洞窟に入り、雨宿りをしていると洞窟の奥から何かのうめき声が聞こえてきた。


「な、なんだ!?もしかしてクマか何かが・・・・デカいヤツなら俺は無理だぞ!!」

「その時は私が囮になろう・・・さぁ、どんな奴でも来るがいい!!!」

「あ~うぅ・・・森にキノコを採り来たら迷っちゃったよ~~~アレ?ハルトさん??それに魔王さんも??」

奥の方から現れた謎の声の正体は・・・森で迷っていたで、手にぶら下げたカゴの中には食べれるのかわからないフォルムのキノコで溢れており・・・どうしてここにいるのか不思議そうに見ていたジャージーにこちらの事情を話すと、ジャージーも道に迷って困っていることから互いに協力して元の道に戻ることとなった。


「でも、ここは一体どこでしょう・・・あと、魔王さん・・・足の具合はどうですか???」

「あぁ、ジャージーの手当てのおかげでさっきより楽になった。」

「まぁ、外に出て道を探そうにもこの夕立と雷の中を歩き回るのは危険だな。

あとさ、スゲェ気になってたんだが・・・そのカゴの中のキノコはちゃんと食べられるのか??」

ハルトはカゴの中の独特なフォルムをしたキノコをジャージーに尋ねると・・・ジャージーはキノコの事なら任せてと胸を叩いて説明し始めた。


「まず・・・キノコをある程度嗅いで・・・ダメそうな匂いがしたら捨てるの。

で、いけそうな匂いがしたらカゴの中に入れるの。

あと・・・微妙な時はちょっぴりだけ食べてみるとか・・・他にはえぇっと・・・」

「いや、もういい・・・によらずジャージーってワイルドな野生育ちか??

餓死寸前のコマンドーでもそこまで危険な食事はしないと思うぞ??」

「確かに・・・他のプリーストにも信頼があるようにも思えるし・・・もっと博識でしっかりしていると思ったのだが・・・いや、失敬。」

魔王の発言にジャージーは首を振って笑い・・・空を見上げると、夕立が終わったのか曇り空から綺麗な日が顔を出し・・・道を探すのなら今しかないと魔王をおんぶしてジャージーと共に道探しに出発した。


「森の事ならジャージーの方が詳しかったりするのか??

俺たちは依頼でたまに来るくらいでさ・・・どっちがどっちなんやらだ。」

「ん~ある程度の場所まで戻れたらわかるかもしれないです・・・でも、この辺りは森の奥だと思うのでどっちに進めば戻れるのか・・・」

「あの川を上ればキルりんたちのいる場所に辿り着くと思うから・・・川沿いに上って行くか?」

現状では、魔王の提案が戻るための1つの手だと考えたハルトは・・・ジャージーを連れて川沿いを歩いて上ることになったのだが――――――


「あぁ~~あんなところに美味しそうなキノコ~~~ちょっと採ってきますね~~」

「ジャージ!!!そこは危ないぞ!?かなり急斜面だ!!早く戻ってこい!!」

「やはりジャージーはジャージーだったな。

牛の如く目に映ったに突撃する当たり・・・・まさしく突撃牛ジャージー。」

そんな事を言っているいる場合ではなく、ジャージーに何度も戻るように叫ぶが全然聞こえておらず・・・ジャージーは何とか斜面に生えたキノコを例の判断方法で試し。

大丈夫そうだったのか、キノコをカゴに入れて戻ってきた。


「ただいま戻りましたぁ~ホラ、2人とも見てください・・・こんな立派なキノコが沢山!!!」

「ジャージー・・・もう少し冷静にだな・・・まぁ無事でよかった。

それより、キノコを勝手に取りに行くのは禁止だ!!わかったな??」

「あの急斜面を危なげなく戻って来るとは・・・プリーストはみんな屈強な精神と肉体を持つ集団なのか??」

ジャージーは謝りながら了承し、魔王の質問にそう言うのはジャージーと新しく入ったリザさんくらいだと言い・・・ハルトと魔王は納得しながらさらに上流へと歩いて行った。


「何だか見覚えのある場所に戻って来たな・・・・魔王、この辺り覚えていないか??」

「私たちが釣りをする前に見た風景に似ているな、つまりもう少しで合流できるかもしれないな!!」

「早く教会に戻らないとみんなが心配しちゃいます・・・早く戻りましょう!!

あ、戻ったらハルトさんや魔王さんにもこの採れたてのキノコで作ったシチューを食べさせてあげますね!!これでも料理は得意なんですよ??」

何だかジャージーの料理と聞くと・・・今までの事からすごくワイルドな調理をしそうで何とも言えないまま、上流へ辿り着くと・・・そこには―――――――


「くぅ・・・こういう時に魔王とハルトは何やってんのよ!?!?

ぎゃぁぁぁ!!!私の釣った魚を食べないでよ!!!」

「そんなことを言っている場合ではありませんよ!!!

あのクマが魚に集中している今がチャンスです!!!」

「えっと・・・元いた場所に戻ってきたのはいいんだが・・・どうなってんだこれ??

どうしてメルトとキルりんがクマと戦ってるんだ??」

「あのクマは・・・魚が好物なんだろうな・・・・すごい必死に魚に食らいついているな。」

「フフフ、食いしん坊なクマさんですね~~~よしよし。」

いつの間にかジャージーは魚をガツガツと食べるクマを撫でていた。


「ちょッ!?どうしてジャージーがこんなところに!?

ッて、ハルトに魔王!!!今までどこで油を売ってたのよ!!!

私の大切な魚が食べられてるって言うのに!!!あと・・・何でハルトは魔王をおんぶしてんの??新たなプレイ??」

「どんなプレイですかけしからん!!いえいえ、そんな事よりジャージーを助けないとヤバイですよ!!!

クマの一撃をまともに喰らえば即死です!!!」

キルりんはジャージーの元に近づき・・・手を引っ張って逃げると。

ジャージーの手のカゴが落ちてキノコが散乱していた。


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