53日目 メルトの災難??

昨晩、アズラえるの事を忘れるために・・・久々にメルトや魔王たちとシュゴビーを浴びるように飲んで夕食をすると、やはり目が覚めた場所は自分の部屋のベッドであった・・・・


「ん~~今日もいい天気だ。

それに、での出来事もある程度忘れたし・・・良きかな良きかな。」

再びベッドにごろんと寝転がると・・・今日の予定も決まっていない事からこのまま昼寝でも決めてやろうと目を閉じようとした時・・・・


「ハルトォ~それにメルトも早く起きてくださいよ~~~全く・・・ハルトとメルトはいっつも寝坊助さんなんですから・・・アサシンの私と魔王を見習ってくださいよ!!!」

「アサシンはともかく・・・魔王はいついかなる場合でも勇者や冒険者に挑戦されてもいいように規則正しい生活をだな・・・・」

「朝から、ほんとにうっさいわねぇ~今、何時だと思ってるのよ・・・・ふわぁあぁぁ~~~ん?10時ちょい??まだ寝れるじゃないの・・・・」

「・・・・・・そんな目で俺を見るな・・・俺はこうやってちゃんと着替えて来ただろ?あのバカみたいに寝間着で生活する気はないからな。」

だが、メルトが眠たいのは分からないと言えばウソになる・・・・何せ、昨日は深夜まで飲みに飲んだという記憶がふんわりと頭の中に残っているからである。

その疲れが顔に出ていたのか魔王は心配そうに水を差しだしてきた。


「ハルト、大丈夫か?なんだか顔色が良くないように見えるが。」

「そりゃ、メルトとハルトはそこまでお酒に強いわけじゃないのにあれだけガブガブ飲んだらそりゃ疲れも出ますよ~~全く・・・だからって仕事もせずに寝るのもどうかと思いますがね。」

「悪かったって・・・仕事を休む気はないから心配するなって。

それにしてもメルトのヤツ・・・遅いが何してんだ?」

「悪かったわね・・・女の支度したくは時間がかかるもんなのよ??

それくらい考えなさいよね?男なんだから少しくらい待てないでどうするのよ全くもぅ・・・・」

メルトは支度をしてきたと言いながら、髪はボサボサで服にシワがあっても気にしておらず・・・女子力のかけらもないダメな女子丸出しの格好であったが、本人が良いと言う事でこれ以上何も言う事なく酒場で朝食を取り、ギルドで依頼を探し始めた。


「ん~最近はにまつわる依頼が多いですね・・・・」

「そりゃ、春だからだろ??でもな・・・言わせてもらうが・・・・殆ど虫の害虫駆除の依頼じゃねぇか!!!」

「そうだな・・・あらかたの害獣駆除は上のハンターが持って行ってしまっているし・・・私たちは細々と虫でも駆除しよう。」

「え~私、昨日みたいな寄生虫とかヤよ?あんな気色悪いのを触るなんて・・・考えただけでもぞくぞくしちゃうわよ・・・・」

と、言いつつ・・・昨日の電撃殺法によって死んだ魚を美味しそうに食べていた女の発言とは到底思えなかったが・・・ツッコムとまた面倒なことになると思い、多少マシな依頼を受け・・・森の中に入って行くと――――――――


「あれが奴らの巣だな・・・よし、メルト・・・あの糸でぐちゃぐちゃになった木を燃やしていいぞ!!!思う存分に燃やせ!!!その代わり・・・他の綺麗な木は燃やすんじゃないぞ??」

「アレレェ~ハルトってば私の才能にやっと気づいちゃった感じなわけェ?

さぁ~て・・・どうしよっかなぁ~~~燃やそうかなぁ~しないでおこっかなぁ~」

「このメルトは図に乗るあれですね・・・・先が見えましたので魔王・・・退散しましょう。」

「そうだな・・・ハルトもイライラしながら糸の貼ってある木を蹴りつけているしな・・・・逃げよう。」

メルトが調子に乗ったことを後悔させるように、虫を呼ぶために糸の貼ってある木を蹴りつけると・・・危なげな鳴き声を出して巣の中から巨大なクモが1匹現れた。


「よし、そんじゃ後は頼んだぞ!!!大魔導士サマ!!!!」

「え、ちょッ!?謝るから!!さっきのこと全部謝るからッ!!!見捨てないでよぉ~~~誰か!!!!!ぎゃぁぁあぁぁぁ!!!!いやぁぁぁあぁぁぁ!!!!」

「やはりこうなってしまいましたか・・・・・メルト~クモにぐるぐる巻きにされてどういう気持ちですか?」

「返事がないが・・・大丈夫なのか?この様子じゃ今日のメルトは使い物にならないぞ?撤退か?」

糸を体中に巻き付けたメルトを助けるが・・・その表情は泣き疲れたのか精神面がボロボロになっており、帰り道でさえ一言も会話をすることなく家に到着すると・・・真っ先に部屋に入っていた。


「どうしましょう・・・完全に壊れちゃってますよ?

薬漬けにした廃人よりもタチが悪いです。」

「そうだな・・・少しやり過ぎだったのかもしれないな・・・・」

「そう言うが・・・メルトを立ち直らせるって・・・どうすりゃ・・・」

割とメルトの精神面が元に戻るかもしれない候補が上がり・・・まずはシュゴビーで誘ってみる事となった。


「メルト・・・ハルトが久々に家で宴会をしようってシュゴビーを買って来たのですが・・・飲まないのですか??

それに、昨日のお魚の刺身もありますよ?

鮮度の事を気にしているのなら心配ありません、です。」

「・・・・・・・・・・・」

「ダメみたいだな・・・宴会はメルトが大喜びすると思ったのだが・・・ひとまずこれらは私たちが食べようか。」

「そうだな・・・せっかく21を買って来てやったのになぁ~~~残念だなぁ~~」

メルトに聞こえるように大きな声でメルトが好きなシュゴビーの名を言うと・・・やはりと言うべきか・・・食い意地が張っていると言うべきか・・・メルトは布団を被ったままやってきた。


「そのシュゴビーだったら・・・飲む・・・・」

「あぁ・・・そう・・・か・・・だったらまずは・・・その布団を取れよ・・・邪魔で飲みにくいだろ?」

「そ、そうですよ・・・・テーブルに座るにしてもそのままって言うわけには・・・・」

「さぁ、メルト・・・布団を取ろうか・・・・」

魔王はそっとメルトから布団を取ると・・・死んだような目をしながら虚ろな顔をしており・・・言葉のかけようのない表情をしていた。


「そ、それじゃ・・・今日もお疲れさん・・・今日はちょっとだが・・・豪勢に刺身で宴会だ・・・だから、そんな顔せずにシャキッとしろよ!!!いつものメルトらしくない・・・今日は、その・・・悪かった・・・これで満足か?」

「珍しい事もあるものですね・・・ハルトから謝罪するとは・・・明日は酸性雨で服が溶けないか心配ですね。」

「メルト?どうしたんだ?そんな顔をして・・・・それともどこか痛いのか?」

「アハハハ・・・・本当にバカみたい・・・みんな・・・みんなってば、ばっかねぇ!!!私があんなクモごときにめちゃくちゃにされて落ち込むわけないでしょ!さぁハルトが頭を深く下げた所で・・・詫びのついでに一発芸でもやって場を盛り上げてよね!!!」

今回はメルトの機嫌を取るために開いた宴会でもあるため・・・グッと我慢しつつ反撃とばかりにメルトのモノマネをすると、メルトの目がまた死んだような目になっていた。


「うぅぅぅぅもぅ・・・人の傷口を抉る一発芸は禁止よ・・・キンシ!!!」

「あ~わかったわかったから・・・ホラ、さばきたての刺身だ・・・たんと食って、明日はだ!!!」

「今度は私たちもカバーしますのですぐにカタが付きますよ!!!」

「そうだな・・・今回は本当にすまなかったと思う。

ハルトの行為から見て被害が出る予感はしていたのだが・・・・まさかメルトだけを狙ってぐるぐる巻きにされるとは想像もしなかった。

だが、明日が本番と言う事にすれば今日会ったことはだ・・・だから、そうならないように気をつけて対処しよう!!!」

メルトはクモとの再戦が明日に待っていると知ると・・・少し不安な顔をしながら刺身とシュゴビーを食べ・・・これが最後の晩餐にならないかと考えながら、その夜を過ごした。

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