52日目 アズラえる・・・まさかの他世界転勤・・・
メルトの指さす方を見ると・・・この湖の主とでもいうのだろうか・・・・大きな魚影が見え、釣り師なら燃えるのであろうシチュエーションの中、メルトは今回の依頼内容を考えるとすごく嫌な予感がすると言った険しい表情をしていた。
その、険しい表情のメルトに構っていられず・・・魔王たちと釣り糸を垂らして巨大な魚影が釣れるのを待っていると――――――――――
「お、おぉぉお・・・この食いつきはまさか!!!」
「ついにですか!?ついに湖のヌシが!!!」
「ん?それが・・・湖のヌシなのか??」
「って・・・騒がせといて、ソレ・・・タダの長靴じゃないのよ!?
ビックリさせないでよね・・・って、キルりん!!!竿!!竿ッ!!!引いてるわよ!!!すっごい、ビュンビュンしてる!!!」
キルりんの竿に何かがヒットしたらしく・・・キルりんが逃がすまいと竿を掴むと同時に水しぶきが上がり、巨大な魚が現れたのだが・・・魚の戻る勢いでキルりんは竿と一緒に体ごと持っていかれそうになったが、ハルトと魔王はキルりんの足を掴んで応戦し・・・少しづつ引っ張り上げていると、メルトは仕方ないと言って・・・電撃の魔法を放つと湖にいた魚が全て浮いてきていた。
「あ・・・みんな大丈夫?ケガはないようだけど・・・ちょっとやり過ぎちゃった♪」
「バカヤロウ!!!魚を全部感電させてどうすんだよ!!!お前は毎回度が過ぎるんだよ!!この惨劇を見て見ろよ!!!寄生虫を取り払った魚が浮いてきてんじゃねぇか!!!」
「まぁそう言うなハルト・・・魚は湖にまだ残っているだろうし・・・この魚は私たちの昼食と夕食にしようじゃないか。」
「それはそうと・・・この魚が主ですかね?とんでもなく大きいのですが・・・・
あと、私の目の錯覚でなければ・・・・エラから出ているのは・・・
キルりんが突いている巨大な魚は電撃のショックで湖から飛び出してきており・・・そのエラからは先ほどまで取り除いていた寄生虫らしきモノが見えていた。
「俺、虫系は苦手じゃないんだがコレはさすがに触りたくないんだが・・・絶対、襲われる奴だろ・・・・」
「だ、だらしないわね!!!す、少し大きくなっただけじゃない!
で、でも・・・私は触らないわよ!!!噛んだりするかもしれないし・・・・」
「そう言う問題でしょうか?でも・・・あの大きさの寄生虫を触るのは勇気がいりますね。
一体どうすればいいのやら――――――――」
「お~い、これを引き抜けばいいんだろ???
――――――――――そ~れッ!!!」
魔王は3人の事も考えもせず、エラから飛び出した寄生虫をずるり引き抜くと・・・
「おぉぉおおぉ、すごい生きが良いぞ!!!おっとっとっと・・・・
うわッ!?そっちに走って逃げたぞ!!!」
「何で俺たちが追われてるんだよ!?ぐッアレはどうすりゃいいんだ!?
メルト!!!こういう時こそお前のバカみたいな魔法だろうが!!!早く魔法で何とかしろよ!!!」
「魔法をバカ呼ばわりしないでよ!?それに、勝手にバカ言ってんじゃないわ!!!3人仲良く寄生虫に追いかけまわされてるのに魔法を唱えられるわけないじゃないの!!!!」
「も~仕方ないですね・・・ここは私が囮になるので、絶対に助けてくださいよ!絶対の絶対ですからね!?」
ある程度の大きさにまで大きくなった寄生虫の囮役としてキルりんが買って出たのはいいが・・・キルりんが寄生虫と対峙した時にはある意味遅く・・・キルりんは大きく口を開いた寄生虫に頭からがぶりとかじられた。
「マジかよッ!?キルりんが食べられちまった!?!?
マジでコレ・・・どうすんだよ!?」
「キルりんがやられたのなら次はハルトしかないでしょ!!!
ホラ、私が魔法を唱えるまで時間稼ぎして散ってきなさいよ!!」
「キルり~ん大丈夫か~~ふむふむ・・・なるほど、キルりんは寄生虫にかじられたが幸い歯がないらしく、命に別状はないらしい。」
魔王のスキルなのかただ耳が良すぎるのかを問いただす前に、キルりんは無事らしく・・・キルりんを助けると共にメルトの時間稼ぎをするために寄生虫と対峙した。
「そこのデカイニョロニョロした奴!!キルりんを返しやがれ!!!」
「何だかよくわからないが寄生虫がハルトを見て動きを止めている今がチャンスだ!!!キルりんを消さない程度の中火力魔法で討伐だ!!!」
「わかってるわよ!!これだと消し炭になっちゃうし・・・・これだと毒でキルりんがダメになっちゃうわね・・・やっぱ、これね!!!
―――――――――――ホワイトブリザード!!!」
メルトの魔法は一定の範囲を対象に白い白銀の風が吹き抜け・・・風が消えると、ハルトや寄生虫はカチコチに凍り付いていた。
「お~い、2人とも大丈夫か??
ん?ハルトは大丈夫そうだ・・・・少し怒ってはいるが・・・・
で、キルりんは・・・・寄生虫の中が急に冷えてきたと言っている感じだと大丈夫そうだな。」
「それじゃ、魔法で炙ってキルりんとハルトを回収よ!私はキルりんを助けるから魔王はハルトを回収してやって・・・私だと怒鳴られそうだし。」
メルトはトテトテと寄生虫に近づき、魔法でキルりんの居場所をサーチすると・・・風の魔法で寄生虫をバラバラに解体し、キルりんを無事に救出したのだが・・・・
「ハルト、何というか・・・見事なまでに氷漬けだな・・・・」
「あぁああぁぁぁぁアイツ・・・絶対に泣かす・・・・そそそ、それよりももっと温めてくれ・・・春だって言うのに風邪になったらどうするんだよ・・・・」
氷漬けから解放されると・・・メルトにグリグリをかまして泣かしながらキルりんに、この砕けた寄生虫の残骸はどうするのかと尋ねると。
一応集めて送ると言って、俺たちは残骸をかき集め・・・狼煙を焚いて運ばせ、ギルドに戻って報酬を受け取ると―――――――
「それでは、今回の報酬をどうぞ・・・・」
「で、どうだったの??報酬はどれくらいになったのよぉ??
あの大きさからするとたっぷり出たんじゃない??」
「36万ゴールドだった・・・・話によると・・・あの寄生虫は生け捕りじゃないと価値はないらしんだ。
ただ、討伐するくらいならだれでもできるってさ。」
「そうでしたか・・・討伐だけでも可、と書かれていましたが・・・報酬はまた別と言う事だったのですね。
数匹程生け捕りにしておいて良かったですね。」
「そうだな・・・それじゃ、ハルトが風邪をひく前に家に戻ろうか。」
服が完全に乾いていない状態を見た魔王たちはひとまず家に戻り、風呂に入ってから夕食を取ることになった。
「あぁ~~いい湯だ・・・にしても今日は今日でアレだけやってたったの36万か・・・他にいい依頼とか仕事は無いのだろうか・・・・」
「そうですねぇ~天界でならいい仕事を紹介できるのでござるよ?」
1人で風呂に入っていたはずが・・・どこかしらから懐かしい声が聞こえ・・・探してみると、体をワッシャワッシャと洗うアズラえるの姿があった。
「おまッ!?もごごごご!?!?!?」
「静かにデース!!こういう場面をあの人たちに見られれば立場的に悪いのはハルトの方デースよ?
ハイハイ、静かになったところで・・・それじゃ・・・まずはどうして私がここにいるのかというと・・・・
ジャジャーン!!死の天使の職に無事に就くことができたので報告に・・・・
と、そんなコトを自慢をしに来たんじゃないでした・・・えほんッ私が来た理由・・・それは。
私、他の世界に転勤になっちゃいました~と、言っても・・・どの世界に行くのか全くなんだけども・・・ハルトには言っておこうかなと思ってね。
長い付き合いでもかと言ってそれほど短い付き合いでもなかったけど・・・ひとまずお別れ!!でも、私・・・泣かない!!だって、死の天使だもん!!!
と、言うわけで・・・何かあったら
それじゃ・・・・バハハ~~イ。」
言葉の弾幕をアズラえるはハルトに浴びせるだけ浴びせると・・・・メルトやキルりんたちに挨拶をすることなく天井をぶち抜いて消えて行き、ハルトは何も見ず聞かなかった事にして体を洗って風呂を上がると・・・メルトたちと夕食を食べに向かうのであった。
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